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君を迎に
僕は君を迎えに行くために車を走らせる。中古のアコードワゴンは、日曜日の夕方の混雑した道を苦しげに走る。
家の前に着くと、君を電話で呼び出し、そして助手席に座るなり、セブンスターに火をつける君。
僕らは、いつものショッピングセンターへと向かう。
君がじっと前を見ながら煙を吐き出す様が、僕の横目に入り込んでくる。ついでにいらいら顔も。
僕は黙って運転をする。
君はひょっとしたら、戸惑っているのかもしれない。僕が家まで迎えに行くのなんて、随分と久しぶりのことなのだから。君がいらいら顔をみせるようになって以来か。
とりとめのない会話すらなく、ショッピングセンターに着き、車を降りた僕らは無言で歩きだす。
手を繋いで歩いていた日を遠くに思い出すが、懐かしんでいても仕方ない。この五十センチ位の距離が今の僕らの現実なのだから。