再会
相手の蹴りを受け切れなかった腕はへし折れ、いくつかの臓器は破裂しているようだった。加えて、勢いよく背中から壁へ突っ込んだため脊椎も損傷していることが感覚的に分かった。常人なら即死を免れない攻撃であったし、医者に直ぐ見てもらったとしても手の施しようがない程の致命傷であった。このことは前線の騎士を経験していた父にも直観的に伝わっているはずであったが、迷うことなく私を病院へ運んだ。
病院へ着き、吐血によって血まみれの私を見た看護師は急いで緊急処置室へ案内してくれた。そして、医者が私の容態を把握しようと医療用ハサミで上着を切り裂いたときには、すでに全ての怪我が癒えていた。この状況に医師達は目を丸くした。私は何事もなかったかのように起き上がり、お礼を言った。
「心配してくださってありがとうございます。私は大丈夫ですので、これで失礼させてもらいます。」
処置室全体が呆気にとられ、出口へ向かう私の足音だけが響いた。
処置室から出て直ぐの待合室で、手を組み天に祈るような姿で父は待っていた。そこで声をかける。
「お待たせ。」
『・・・っ!!!!』
父は驚きすぎて声が出ていなかった。この時の父の表情は、喜びというよりもむしろドン引きであった。この表情を私は生涯忘れないだろう。
「少なくとも三つの致命傷があったはず。治りが早すぎないか。」
『ここには腕の良い聖女さんがいて、なおかつ品質の良いポーションがあるんだよ。』
私は無理のありすぎる言い訳を使った。これを聞いた後に、父は治療費を払いに行くと言い受付に行った。病院を出て馬車乗り場ではなく宿屋へ向かった。その理由は、私が処置室に運ばれるや否や、娘に大怪我を負わせたという内容の手紙を速達で母へ送ってしまったからである。そのため今日は、宿屋で一日だけ宿を借りた。借りた部屋に入り一息ついたころ、父は私に問いかけた。
「リリア、何か隠していることはあるか。」
いくら鈍感な父でも今日起きたことに対して疑問に思うのは当然のことだ。流石に、ここで前世の影響で死ににくく、丈夫な身体ですとは言えるわけがなかった。
『それって、絶対に言わなきゃダメかな。』
「お前が何を隠していたとしても、私たちのリリアへの愛は変わらないよ。」
私はこの言葉を聞いたとたん、頬を一滴の涙が伝っていくのがわかった。その一粒を皮切りに大泣きしてしまった。
泣き止むと、時刻は午後三時くらいであったため、再度本屋へ行きたいと駄々をこねた。父は古本屋の出入り口で待つと言ったので、私は一人で魔導書の棚へ行き基礎的な本を探した。すると私の隣に黒色の服を着た男がやってきて、魔導書の棚を見つめていた。私は軽い一嗅ぎで、隣の男が何者かわかった。私は魔導書を取りながら単語を一つ呟いた。
『先生』
「ふっ、流石だな。お嬢、この前見逃してくれた礼に情報を提供したい。」
『聞こう。』
「すぐに街を出た方が良い。人身売買の組織をあんたらが壊滅させたことで、お得意様の貴族がかんかんだ。」
『ありがとう、すぐに出るよ。そういや名前は?』
「シュテシムと呼んでくれ。じゃあな。」
警告するとシュテシムと名乗る男は、本も買わずに出て行ってしまった。私は奴らからくすねたお金で魔導書と小説を数冊買い、すぐに街を出た。