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白澤百合姫の転生日記  作者: トキムネ
家族との日々
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ほのぼの4

オークとの戦闘でのアドレナリンも引いて来たため今日の疲れが酷く限界に近づいていた.

疲れた体をすぐにでも癒したかった私は夕飯を食べずに寝ようとしていた.しかし,フィオーネも夕飯はまだ食べておらず,食べたそうにしていたので,私は食材を好きに使って良いよと言い,寝袋にくるまろうとした.


「私の方で作るので,一緒に食べませんか?こう見えて料理は得意なんです!」


少し,鼻息を荒くしながら提案してきた.この親切を無下にはできないなと思い,私は了承と感謝の言葉を述べた.


フィオーネは,火の明かりで手先を注意しながら,赤紫色の玉ねぎを調理していた.フライパンの上でバターの泡が弾ける音がし始めた.玉ねぎとバターの香りが漂ってくる.よい香りに包まれながら私の意識がなくなった...


「リリアさん,リリアさん.」


呼ばれる声がして目覚めた.十数分ほど眠っていたらしい.フィオーネからカップ一杯のスープを手渡された.玉ねぎと白胡椒の香りが湯気と共に登ってくる.空っぽの胃は,そのスープを欲していた.


『いただいて良いですか?』


「どうぞ,召し上がってください」


やさしい玉ねぎの甘みが口の中で広がる.カップの底に沈んでいる大きくちぎられたベーコンによって,しっかりとパンチの効いたスープになっている.おいしい.小麦粉を入れたのだろうか,少しとろみがついていて飲みやすい.また,スープにはバゲットが一切れ浸されており,遅い夜の胃に優しい料理となっていた.


少し先で獣の唸り声が聞こえてきた.暗闇の方へ目を向けるとプスードウルフの群れがこちらを警戒しつつ,オークの死肉を取り合っていた.この唸り声にフィオーネが少し不安げな表情を浮かべていた.


『プスードウルフの群れが,オークの死肉を漁りに来ているだけなので,大丈夫ですよ.もし,こちらへ危害を加えるようなら私が対処するので.心配なのであれば私の近くで寝てください.』


私のそばへ寄ってくると,フィオーネはすぐに寝てしまった.パーティーから逸れてからは,気を張り詰めてしまって深い睡眠がとれていなかったのだろう.無意識なのか,初めは人一人分の距離が開いていたはずなのに,気付けばくっつきそうなくらい距離を詰められていた.


私が目覚めるとフィオーネは朝食の準備をしていた.


「おはようございます!朝食は今準備しているので少し待ってくださいね.」


『おはようございます.気を使わせて申し訳ありません.私も手伝います.』


私は素早く寝袋から出るとフィオーネのもとへ近寄った.


「ありがとうございます.まずお顔を洗ってからで大丈夫ですよ.お済みになったらバゲットを切っていただけますか.」


『お安い御用です!』


朝からお互いが元気いっぱいでよい一日が始まった.


少量の水を手に取った.冷たい.その水で顔を洗うと一気に目が覚めた.青い空に張り付いた太陽の日差しがまぶしい.目を下ろし,だだっ広い草原を眺めた.朝陽に照らされたカムピス平原は夕暮れ時とは異なる爽やかな印象になっている.


フィオーネの隣に行き,バゲットを切りはじめた.4切ほど切ったところで,火にかけた.


「コーヒーをいただこうと思うのですが,リリアさんも一杯いかがですか?」


コーヒー好きの私にはたまらない提案だったので喜んでいただくことにした.


フィオーネは,まず,水を火にかけ手際よく焙煎豆を麻の袋から取り出した.そして,豆をミルへ流し込み,ガリガリと音を立てながら挽き始めた.見ているだけでは申し訳ないので,ひとまず私はカップを用意し,コーヒーの粉末が出来上がるのとお湯が沸くまで待機した.


お湯が沸騰し始めたころに,フィオーネの手が止まり,荒く挽かれた豆の粉をカップへ均等に入れていった.


私は少し首をかしげながら,フィオーネの動きを注視していた.


やはり,沸騰したお湯を直接カップへ注いでいったのである.私は大きく目を見開いてしまった.


「少々お待ちください.」


『...はい.』


私は,少したじろぎながら返事を返してしまった.


5分くらい待っただろうか,フィオーネが慎重にカップを手渡してきた.私もゆっくりとカップを受け取った.湯気とともにコーヒーの良い香りが,鼻腔を通っていく.静かに一口すすった.あっさりとした苦みで,くどくない.私の好みだ.太陽の熱を帯びきる前の風がコーヒーで温まった体を冷ましていく.サーディンまでどのくらいかかるのだろうか.草原の地平線の彼方へ目をやった.


「濾す道具を持ち合わせていないときは,豆を粗目に挽いて沈殿しやすくして,上澄みを飲むようにしているんですよ.この飲み方だとお湯をいつもよりも多めに入れる必要があるんですが,私は好きです.」


不意を突かれた私は,反射的にフィオーネの方を見てしまった.


フィオーネは,私の視線に気づかず,両手で包んだカップをのぞき込みながら話した.


私は,もう一口飲み,コーヒーにこのような入れ方があるのだと少し感心した.


バゲットの焦げる匂いが漂ってきた.私は慌てて,バゲットを回収した.その時,フィオーネは大きく笑っていた.


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