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白澤百合姫の転生日記  作者: トキムネ
家族との日々
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カムピス平原へ発つ

目覚めるとカーテンの隙間から元気の良い太陽の光がこぼれていた.今日は天気が良いのだろう.幸先がよい.カーテンを開け,空気を入れ替えるために窓を開けた.晴れ特有のカラッとした土の匂いと草花の匂いが風と共に部屋へと入ってきた.太陽の光で明るくなった部屋を見渡す.たった1ヶ月弱であったが,今日からはもうこの部屋で寝ることはないのだと考えると嬉しいような寂しいような気持になった.


扉を叩く音が響いた.


「そろそろ起きなさいなぁ.」


めったに起こしに来ないアドラーが起こしに来た.最後の日だから特別に起こしに来たのだろうかと思ったが,時計を見ると,部屋を眺めてから思ったよりも時間が経っていたことに気が付いた.


『すみません.今行きます.』


いつもと変わらないたわいもない会話をしながら,朝食を済ませ部屋へと戻った.荷物の最終点検を終え,ダイニングへと向かった.すると,アドラーは小さいリュックを私に両手で手渡してくれた.


「これを持っていきなさいな.少し,荷物になるかもしれないけれど必ず役に立つわぁ.」


『ありがとうございます.それでは遠慮なくいただきますね.』


非常にありがたい.飛び出してきた私の持ち物というと,せいぜいリリィからもらった剣,火起こし器と金属製のコップくらいだからだ.それにアドラーが大事そうに私に渡してきたのだ無下にできるはずがない.


玄関に立ち自分で扉を開けた.


『お世話になりました.』


私はアドラーへ最大の敬意をこめて,頭を下げた.


「元気でねぇ.いつでも来て良いのよ.私のことは,親戚の叔母とでも思っておいてくれたら良いのよぉ」


『ありがとうございます.ご迷惑でなければサーディンからの帰りにお土産をお渡しさせてください.』


「ふふ.やっぱり良い子ね.最後に,この旅の無事を祈願しておまじないをかけてあげるわぁ.」


一瞬,私の髪の毛がふわっと浮き上がったような気がした.このおまじないにどのような効果があるかはわからないが,私は再度アドラーへ礼を言った.私は,必ず帰りに立ち寄って,この旅の顛末を伝えたいと思い,アドラーの家を後にした.



初級ダンジョンへと再び潜り,私たちしか知らない秘密の抜け穴を通ってカムピス平原へと向かった.カムピス平原を再び目の前にした.数日前に,私はここへ立った.その時はまだこの先へは踏み入れなかったが,今回は違う.このまま,このカムピス平原を進んでいくのだ.大きく深呼吸をした.ダンジョン内や森とはまた異なった匂いがする.私は気合を入れ直し,足先へ力を入れて,しっかりと地面をつかみながら平原の中を進んでいった.


このだだっ広い平原には,種類も高さも異なった植物が互いに寄りかかりながら生えている.視線を遠くに移すと地平線が見え,人の影一つないことがわかる.これはまずい,水が簡単に手に入らない可能性がある.ひとまず,私はカムピス平原にて村へ立ちよることを最優先とし,先を急いだ.


アドラーの家を朝早くに出てきたはずなのに,歩けど歩けど景色の変わらぬ平原では,知らぬ間に日が暮れてきていた.平原にポツンと背の高い木がでてきた.日も暮れてきたので,今日はそこで一夜を明かすことにした.木へと近づくと,冒険者らしきものの死体があった.そこまで新しくはなさそうだった.服は破れ,魔物に食い荒らされた痕跡がある.臭いはきついが,僅かな獣の匂いが染み付いていることが感じ取れた.それに盗賊などには荒らされた形跡は見受けられない.私は,獣に食い破られたであろう袋の中を見た.中から,予備の短剣,火起こし器と財布を拝借した.夜に化けて出られても困ると思い,装備を少し分けてもらった礼もかねて,硬貨2枚を目蓋の上に置き,簡単に土葬しておいた.


日も暮れてきたところで,火を起こすために火起こし器を取り出した.これは彼から拝借したものだが,私が持ってきていた火起こし器は,低級悪魔との戦いにおいてお釈迦になっていたため,大変助かった.魔道具を乾燥した枝木の上に置き,レバーを倒す.すると,筒の中の魔石が刻印と接触し熱が生じ火が起こるはずなのだが,中々火は生じない.1分ほど待つと少し煙が立ってきた.ここで魔道具をどかし息を吹き込む.火種が赤くひかり,どんどんと大きくなってきた.私はその火で暖をとった.平原は森とは違い風を遮るものがないため,体感温度が下がり,夜から明け方にかけて体が冷えてしまうのだ.平原で火を焚くと目立ちすぎるが,歩いてきた感じだと,ランクの高いモンスターがいる気配はしなかった.


寝ようと思い,リュックから取り出した布に包まったところで気配を感じた.タイミングが悪い.私は非常に虫の居所が悪くなってしまった.何かが丈の長い草に隠れて,こちらへ向かってきていることがわかった.私は腰に掲げた短剣に手をかけつつ相手の出方を見た.

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