表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白澤百合姫の転生日記  作者: トキムネ
家族との日々
34/38

不択手段

相手が間髪を入れずに飛びついてくる.その攻撃を軽く回避する.すると相手は攻撃方法を絡みつきから尻尾の突きへと変えてきた.先程とは異なり,最小限の初動作で放たれる尻尾の突きは素早くそして読みづらい.私は短剣を鞘から取り出し,尻尾の攻撃を受け流し続けた.攻撃の合間を縫って握った短剣で切りつけた.しかし,尻尾で刃をはじかれてしまった.流石に一筋縄ではいきそうもない.何とか隙を作って剣を胴体に当てることができたが,当然のごとく肉まで切り裂けない.何度も隙を見て切りつけるが,一向に刃が命まで届く気配すら見せない.この異形なものは,私の攻撃を軽くいなせる魔力量を持つと同時に魔力操作がある程度できる敵なのだ.そのため魔力の鎧とも言うべきものに守られており,今の私の刃では断ち切れない...わかってはいたが,魔力なしで戦うにはこのあたりが閾値かもしれない.


私は作戦を変更した.短剣を仕舞い,攻撃方法を素手にしたのだ.掌底を打ち込むと相手の身体が宙に浮き,軽く飛んだがダメージが入っている様子はない.この一撃で魔力の鎧は,外傷は避けられても威力までは殺し切れていないことがわかった.思考を巡らせていると.相手の攻撃に対して一瞬反応が遅れてしまった.そして異形なものから放たれた尻尾の突きを捌くも頬を掠めてしまった.血が滴る.


「キシャァァァァア」


私の血の匂いに興奮したのだろう.動きが俊敏になり始めた.攻撃を紙一重で避けることが難しくなり,後ろへ後ろへと退避した.ついに崩れた天井のところまで私は追い詰められてしまった.私は敵に背を向け崩れた岩を登り始めた.もちろんのこと相手もそれに応じて私の背を追いかけてくる.登り切った私は再び戦闘の体勢をとった.奴が私に追いつくと,尻尾の槍を何度も行使してくる.その攻撃を私は必死に避けていた.瞬く間に私の服は,いや全身がやはりヤスデのクソまみれになってしまった.


相手が私に攻撃が当たらないということをようやく理解したらしい.ぴたりと攻撃をやめてしまった.しかし,ヒルに似た顔をこちらへ向け続けている.このことから奴の意識は他の獲物へ意識を向けるのではなく,私にロックオンしたままだとわかる.執念深い.血の匂いを嗅がせてしまったからかもしれない.このとき私は一瞬の違和感をキャッチし,とっさに身体を捻った.私の後方で何かがはじけるような音がした.このことに少し驚きはしたものの冷静に相手を観察した.すると奴の顔が少し膨らんだ.今度はしっかりと相手を見ながら,私は再び回避の体勢を取った.奴は,弾丸のように高速で血液を飛ばしてきていたのだ.この攻撃は連発出来ないのか?と私は余計なフラグを立ててしまった.次の攻撃には先程よりも間があった.奴の口からは5発ほどの連続で血液の弾丸が発射され,私はそれを回避する羽目になってしまった.しかし,攻撃は,射線が読みやすく単調であるためよけやすい.


私は,相手が弾を込める隙を狙って踏み込みで加速し,奴に蹴りを入れようとした.しかし,奴も私が近づいてくることを狙っていたらしく,蹴りを受けるとすぐに私に絡みついてきた.攻撃後の余韻があったため絡みつきを許してしまった.だが私はいとも簡単に奴の拘束を解いた.なぜなら,よく滑るヤスデのクソが自分と相手にべったりと付着しているからだ.


私がここで戦った理由は2つある.その1つ目は,奴の必殺技である絡みつきを封殺できる環境であることだ.2つ目は,これからわかる.


「準備は整った.そろそろ終りと行こう.」


私は,崩落した穴を背景にし,手のひらを剣で少し切った.血の匂いで興奮した異形なものは私にものすごいスピードで飛びかかってきた.私は甘んじて奴の絡みつきを受けた.そしてひそかに取り出した火起こし器を奴の身体に押し付けレバーを引いた.奴の身体に火が付いたところで私は,緊急脱出し,奴を穴の下まで蹴り落した.それから,ヤスデの巣に火を放ち,火の手から逃げるように光の間まで必死に走った.ギリギリ間に合い,軽度の火傷で済んだ.すさまじい炎が通路口まで顔を出していた.


ヤスデのクソが燃え尽きたのか,火が消えたので少し時間をおいてから奴を確認しに行くことにした.まだヤスデの巣の壁面に手を当てるとまだ温かい.やはり相当な火力だったらしい.私は,奴と戦ったヤスデの巣の広間まで来た.見渡すも奴の姿はない.奴はこの広間まで登ってこられなかったらしい.私は崩落地点の穴を覗いた.奴は地面の下でピクリとも動かなかった.


『どうだ?血液から生まれてきたんだ.高濃度な二酸化炭素は効くだろう.』


私がここで戦った理由の2つ目は,大量の二酸化炭素を発生させることができる環境だったからだ.それに崩落地点の穴を有効活用すれば,空気よりも重い気体だから,より効果的に相手に効かせることができると考えていた.私は息を止め,干物状になった異形なモンスターを担ぎ,光の間へと戻った.


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ