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白澤百合姫の転生日記  作者: トキムネ
家族との日々
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魔女の弟子となる?

風呂を出て,居間のテーブルに着いたとき私の腹の虫が鳴り出した.朝から干し肉一枚しか口に入れていなかったのだ無理もない.


「朝は何か食べたのぉ?」


『干し肉一枚ですね.』


「そう.なら,朝食にしましょうか.私もあなたに起こされてから何も食べてないわねぇ.」


『すみませんでした.明かりが見えたものでつい.』


「明かりが見えた?まぁ,その話は食べながらにしましょうよぉ.」


そう言って魔女は別の部屋へ入っていった.そして数十分後に,その部屋から持ってきた軽く焼かれたロールパンと温かいスープを食卓へ並べた.今の腹ペコの私には料理が輝いて見えた.スープを啜りながらアドラーが話し始めた.


「まずは,本題のオオカミの買い取りからね.買い取るのは良いけど.一つ疑問があるの.聞いていいかしらぁ?」


『はい.大丈夫です.可能な限りお答えします.』


「なぜお金が欲しいのかしらぁ?」


『最短距離でサーディンへ向かいたいからです.』


「サーディンへねぇ.」


『はい.サーディンへ.』


「貴方が何をしたいかわかったわぁ.」


魔女の顔に不敵な笑みが浮かんでいる.


『...』


「そこで相談が2点ほどあるのだけどいいかしらぁ?」


『はい.』


「まず,1点目はオオカミを換金ではなく,私のお古の装備と交換すること.2点目は私の下で短期間で良いから少し魔法を学んでいかないかしらぁ?」


『1点目は,願ってもないことです.2点目ですが少し考えさせてください.』


「いいわ.後2日間くらいはここに滞在することになるからゆっくり考えなさいなぁ.」


『えっ?』


「だってあなたの服と靴を洗って乾かさないといけないもの.それに,お古の装備とはいえ人にあげるのよ.少しでも綺麗な状態にしたいじゃないぃ.」


『...』


「どうしてもサーディンへ急ぎたいのかしらぁ?」


『いえ,そういうわけではありませんが...』


確かに,なぜ急ぐ必要がある?誰に迷惑をかけているわけでもなく自分の焦燥感との折り合いの話だ.しかし,もしこのアドラーという魔女がかなりの手練れであるとしたら,魔法に関しての教えを乞う人物に足る.しかし,魔力で相手の力量を測れない私は,このアドラーと名乗る魔女の実力を言葉で測る必要がある.そこで私は脈絡もなく疑問をぶつけてみた.


『なぜ,私の目的がわかったんですか?』


「それはね簡単なことよ.人は持たざる才能(モノ)に憧れ渇望する.例外はないわ.あなたの場合は魔力そして魔法ね.そうなるとサーディンへ向かう目的は一つしかない.魔力を得る方法を探すことねぇ.」


アドラーは得意げな表情を浮かべている.私は,このすべてを見透かされているような回答に少し驚いたが,それよりも喜びが勝り少し表情を緩めた.


『度々の質問で申し訳ないのですが,なぜ私に魔力が無いと言い切れるのですか?』


「そうね.何点かあるけど.1点目は魔力線をぶった切って進んできたこと.通常,魔力を保持したモノなら魔力線を大きく歪ませることしかできない.2点目はこの森特有の魔力感知の妨害を受けていないこと.もし影響を受けているとしたらこの家の明かりが見えるわけがないからね.代表的な理由はこんなとこらかしらぁ.」


これらの回答から,私はアドラーという魔女はその資質を十分に持ち得る人物であると確信した.


『ご回答ありがとうございました.何者なんですかアドラーさんは?』


「まぁ,焦らずともすぐにわかるわぁ.」


笑みを崩さず,回答を焦らしてきた.彼女の実力は本物で,それ以上何者かを過度に追及する必要はなかったためその後はたわいもない会話で終わった.


台所へ食器を運び終わり,アドラーが食後のお茶を入れるから先に戻っていろと言うので先に戻った.その通路にドアが僅かに開いている部屋があった.私は好奇心に促されて暗い部屋へと入っていく.通路から差した明かりで部屋の全容がわかった.恐らく,この部屋はアドラーの書斎だ.一冊の本が目についた.分厚く,古びた本で背にはタイトルがない.椅子を台にして,その本を取り出す.表紙には以前にも目にしたタイトルがしっかりと明記されている.


「その本が気になるのかい?不思議な子だねぇ.」


この一言を発せられるまで気配を感じなかった.驚き本を落としてしまったが,反射的に右に跳び,態勢を整えた.


「そんな驚かなくても良いのに.その本は俗にいう禁書の一つよ.過去にこの国を恐怖に陥れた勇者と悪魔のお話が書かれた本なのよね.この本に興味があるとはお目が高いわぁ.」


そういうと彼女は,私が落としてしまった本を拾い上げて渡してくれた.


『なぜこんな本を持っているんですか?』


「なぜだと思うぅ?」


魔女は不気味な笑みを浮かべながら,質問を質問で返してきた.


『わかりませんが,魔女だからですか?』


「ふふっ.せっかく入れたお茶が冷めてしまうわ.温かいうちに頂いてしまいましょうよぉ.」


魔女は質問に答えず,私たちは居間に戻った.するとテーブルには洒落た茶器のセットが置いてあった.席に着くとアドラーが茶を注いでくれた.湯気とともに茶の良い香りが漂ってくる.


「さぁ.召し上がれぇ.」


『ありがとうございます.』


ティーカップを両手で持ち,茶を啜る.茶の香りが鼻を抜けていき,心地の良い気分になる.


『いいお茶ですね.』


「そうよ.わかるかしら.これはね.貴方が目指すサーディンのとある雑貨店で買ってきた異国のお茶よぉ.」


『出発の時にぜひお店の名前を教えてください.』


「ええ.いいわよぉ.」


茶のおかげで一度落ち着き,冷静になった私は先程の返信に対する答えを決めた.


『アドラーさん.唐突で申し訳ないのですが,先ほどの件,1ヶ月ほどここへ滞在させてもらって良いでしょうか.』


「いいわよ.そうと決めたなら,もうお風呂にも入ってしまったから洗濯とかは明日にして,今日はゆっくりしなさいな.明日からぼちぼちやりましょ.」


『はい.そうさせていただきます.』


返事をする前から答えは決まっていた.なぜなら,雨が降っているため外に出たくない気分だったからだ.この雨の日から,魔女との短い共同生活の一日目が始まった.


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