発見と発覚
赤ん坊の一日は長く、それでいてものすごく退屈だ。そのうち三か月くらいたち、ハイハイができるようになった。自身で移動できるようになり、まず行うことは家の探索だ。家は2階建てで、1階はキッチンやテーブルにトイレや風呂がある。2階には親と私の寝室に物置部屋があるくらいだ。
このことから、この家は中流であることがわかった。
また、私が生まれたときに父と母が驚いていたのは彼らの部屋に立てかけられていた鏡を見てはっきりとした。自身の容姿が両親のどちらとも全く異なっていたからだ。肌は透き通るような白さで、眼は血のように赤く、それでいて自身に生えている髪は漂白されたように白い。私は前世の遺伝子のまま生まれてしまったらしい。前世では元々、私の髪と目は黒かったが、とある理由で遺伝子改良実験を受けこのような姿になってしまった。これほど外形が両親と異なっているのだ、父が母の不貞を疑うのも無理はない。今の父と母を見ると、そのいざこざはすでに解決しているらしかった。
両親の会話を聴き、この世界の言語を少しずつ理解していくうちに半年が過ぎた。私はついに歩けるようになった。やっと鍵のかかった物置に入れると思い、私はひどく興奮していた。物置のカギを親の部屋から拝借してきた。ドアノブを握るために椅子も用意した。私は弱い力で物置の扉を開いた。そこには想像しているより整った景色があった。本がきっちりと本棚に整理され、黒柿色のしっかりとした机があった。私は、父がよく荷物を運んでいくのでてっきり物置だと認識していたが、ここは書斎であるらしい。部屋の隅に梯子が横たわっていることから、屋根裏が物置になっているらしく、そこに行くには書斎から屋根裏に上がれるらしいことが推察できた。大量に敷き詰められた本に目を輝かせながら手の届く範囲の本を片っ端から開いていった。しかし、よかったのは勢いだけで全く文字が読めず、しまいには寝てしまっていた。
翌日、私は片言で母に文字を教えてもらうようにねだった。母は驚いた様子であったが、本を開き読み聞かせるといった方法で文字の読み方を教えてくれた。それから数か月たち、ある程度の文字は理解したため辞書を引きつつも本は読めるようになった。ちょうど私が五歳になったところで二つある本棚のうちの片方のすべての本を読破した。本の情報から様々なことがわかった。まず、この世界には魔力, 魔物や人間以外の人類など、もといた世界の理から逸脱したものが存在するらしいことがわかった。
その晩に家族で食卓を囲んでいるときの話だ。私がふと魔法が使いたいとつぶやくと両親の手が止まり二人ともうつむいてしまっている。私はまずいことをいってしまったと思い、静観した。すると父が重苦しい雰囲気の中で口を開き、私には魔力がないことを教えてくれた。この事実に私は呆気にとられ、口に含んだ食物は味がしなかった。人生で五回目の誕生日はお通夜のような雰囲気で幕を閉じた。