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幸せにおなりください。

あれから半年後の秋晴れが美しい土曜日。私はホテルの花嫁控え室でウエディングドレスに身を包んでいる。今日、隼人と結婚する。

隼人はあれからケガをすることもなく、元気にしている。私もあれ以来、怖い夢を見ることがなくなった。

結婚の話も両家とも賛成してくれたおかげで、スムーズに進んだ。

「よくお似合いですよ。」

メイクをもう一度チェックすると、美容師さんがそう言いながら最後にクラウンを載せ、支度が完了した。チャペルに移動する前のしばしのゆったりとした時間。


結婚式は両親や隼人が和装も着てみようって言ったけど、洋装のウエディングドレスとカクテルドレスだけを着ることにした。なんといっても、和装はなんとなく、ね。


あれから隼人にケガをしたときのことを聞いてみたことがある。ケガをした晩は必ず夢でうなされていたらしい。どんな夢かと聞くと、かなりためらってから教えてくれた。夢の中では私が大蛇に殺され、お前も殺してやる、と言う夢だったとか。それが妙にリアルで怖かったことも言っていた。きっとそれまでのひとも同じ目に遭ったんだろうな。

唯一、逃げなかった隼人は、その呪いを解くきっかけを作った存在でもある。隼人、楽しい家庭を作ろうね。ずっと一緒に居ようね。


―コン、コン

思いを巡らせているとドアがノックされた。

「お届けものです。」

ホテルのスタッフさんが淡いグリーンの大きな花束を持っている。でも、誰が?友達からのお祝いはもう貰っているのに。

「誰からですか?」

「お近くのフローリストさんからのお届けでしたよ。」

恐る恐る花束を調べると、銀色の蛇のマークのついた一枚のカードが入っていた。そこにはカードに不似合いな流れるような美しい毛筆でメッセージが書かれていた。


『祝着至極に存ずる。お恭悦至極になり申して願いたもうぞ。』


ーおめでとうございます。お幸せに。ー

萌葱の声が聞こえた気がした。

「萌葱様、ありがとう。」

私は思わず呟いた。名前こそ書かれていないけど、萌葱様からのプレゼントに間違いないわ。

「萌葱様も幸せになってください。」

思わず口に出すと、花束の露がキラキラと揺れた。


銀の蛇の萌葱が時を越えたのは、この時が最後だったと言われている。


      【完】


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