子供の頃からのこと。
雪村花音。28歳。ごくごく平凡な社会人。結婚は、そろそろ決まるかもしれない感じ。
私は霊の存在は信じているし、怖いと思うけど、霊感はないと思う。霊らしきものは見えないし、心霊スポットに行っても何も感じないから。でも子供の頃から不思議なことが時々あった。そしてそれを周りの大人に話しても「またおかしなことを言ってる。」「夢でも見たんじゃないの?」としか言われず、まともに取り合ってもらうことなく大人になった。
例えばあれは小学一年生の時のこと。
庭で遊んでいたら耳元で声が聞こえてきた。
「交通事故。」
その日、その時刻にクラスの友達が自転車に乗って出かけていたら、車に跳ねられた。ケガは幸い、打撲で済んだものの、しばらく松葉杖で学校に来ていた。怖くて誰にも言えなかった。
中学生のころは学校に行こうと玄関を出た瞬間に「今日、〇〇ちゃんが怒られるよ。」と言う声が聞こえたこともある。同じクラスの彼女は日ごろからまじめで怒られるタイプの子ではなかったけど、本当にその子はその日は怒られた。
小学校の高学年になると金縛りにあうことが増えた。ベッドに入ってウトウトとしだすとラップ音が響き、とたんに体が動かなくなる。白い人魂みたいなものが枕元までやって来て、それがすごい音を立てて破裂すると解けるけど、その間に頭を後ろから小突かれたり、首を締め付けられることもほとんど毎回で、手首を強くつかまれたこともあった。
二十歳くらいから金縛りにあうことはほとんどなくなったけど、金縛りの中でも一番怖かったのが、ウトウトとしだした瞬間に「もう許さぬ!」という声とともにベッドがガタガタと揺れたこと。地震かと思ったけど、地震なんてその晩は起こっていなかった。
不思議なこといえば、他にはこんなことも。中学生の時、私はクラスでいじめにあった。
物を隠されたり、聞こえよがしに悪口を言われて、心が折れた。相手の子はそれを担任に知られ、注意を受け、私を睨み付けた。私も睨み返したのが、彼女を見た最後の日となった。その日の午後の部活で大怪我をして、通常の学校生活が送れなくなってしまい、卒業まで彼女を見かけることはなく、今どうしているのかすら知らない。
高校の時にも似たようなことがあった。自分が孤立をしたくないために、私の友人と仲良くするために私をつまはじきにした子がいた。その1カ月後、彼女は妊娠が発覚して、そのまま退学していった。
その後、大学生になって車の免許を取り、運転をするようになると、後部座席に気配がしたり、車庫入れをしているときに近くで男の人が立っていることがたびたびあった。いつも同じ人で、車庫入れが終わると姿が消えていた。道に迷うと耳元で声がして従うと走りやすい道に戻れたりしたこともあった。それにナビに従って運転しているときに「行くな。」という声が何回も聞こえて、ナビの示す方向に行くのをやめた瞬間に、進もうとしていた交差点で追突事故が起こったのを目撃したこともある。
この不思議な声には何度か助けてもらったので、悪いことばかりでもなかったが、金縛りのときは本当に怖い思いをした。
そしてさらに不思議なのは、私と付き合う相手が怪我をすると、数日内の返事のうちに理由も話さずに別れを告げられる。学生の頃からそれは毎回のこと。今の彼も実は何回か怪我をしている。ただ、今までと違うのは今の彼とは怪我をしてもそのまま続いていること。
そして同じくらい怖いのが蛇。子供の頃は蛇の夢を見る度に飛び起きると、母のベッドに避難した。母は「この子ったら蛇の夢を見たって言っては、夜中に私のところにやって来るのよ。」なんて人に笑いながら話していたが、私にとっては笑い事ではなく、怖くてたまらなかった。身近に蛇がいる場所に住んでいたわけではないので、実際に蛇を見たことはほとんどなかったが、とにかく蛇が異常に怖かった。そしてそれは今も変わらない。
そして私の二の腕には、アザがある。うっすらと赤いそれは蛇の鱗を思わせるアザ。身体の中に蛇を思わせるものがあるなんて本当にイヤ。疲れたりすると濃くなるし、ここ数年の間にアザの範囲が広がってきているの。




