056 閑話6 いきなり5G?
すみません。整体の専門学校の学科の勉強に時間が取られ執筆時間が少なくなっています。
今も、震電の電が大殿筋の殿になっているのに気づいて修正しました。
以前のように週一で書ければいいのですが、仕事の方も忙しくなっていて・・・。
7月に試験があるので、それをクリアできれば少し余裕が出てくると思います。
「おい、ジェームズ、さっきから手帳をのぞき込んで何をニヤニヤしてるんだ」
「いや、これは手帳じゃなくて、{マパス}っていう通信ツールなんだが・・・」
昨年{1911年}に明治天皇が崩御され、
今年は、大正元年と元号が改まった日元国の状況を
詳しくレクチャーしてほしいと、ロンドンにまで呼ばれたジェームスは、
休憩時間を利用して、魔力パスポートの通信機能を使い、
妊娠中のため、大事を取って同行しなかった妻の
麗子とメールのやり取りをしていたのだ。
最初は紙で出来ていたマパス{魔力パスポート}だったが、
天照大神さまの様々な要望に答えるため、技術者が頑張り
やがて携帯電話機能や、メール機能が付き、
今では、人工衛星を使って日元国とリアルタイムで通話やメール、
チャットが出来るようにまでになっていた。
{また、この魔力パスポートは、起動時に所有者が魔力を注入することで、
ロックが外れて、電源が入るので、万が一盗まれても
他人が使用することは出来ないようになっていた}
「な、なんだこれは!写真か?しかし色が付いてるぞ!絵なのか?
これも、モンキー・マジックなのか・・」
元同僚が驚くのも無理はなく、前世ではアメリカのイーストマン・コダック社が
世界ではじめてカラーフィルムを発売するのは、まだ20年以上も先の
1935年の事であるからだ。
メールに添付されてきた妻の笑顔の写真を見て、元同僚が
驚きの声を上げていたが、やはり何処か、有色人種を見下した
ニアンスの発言をした。
(まだ、そこかよ・・・)
「ああ、日元国の魔法写真だよ」
どうやら、スマパの一機能のカラー画像だけで驚いていて、
これで通信も出来ることには気がついていないようなので、
そのことには触れずに、ただのカラー写真が表示できる手帳として、
ジェームスは話しを合わせたのだった。
「すごいな・・。
それは、日元国のパスポートにもなっているのか?
噂には聞いていたが、本当に日元国に帰化してしまったんだな・・・
気を付けろよジェームス」
キリスト教国の者にとっては、日元国への帰化は、
アメリカなどの他のキリスト教国に国籍を移すのとは訳が違い、
信仰そのものを変えることになるのだ。
そのため、浮世絵や日本庭園などの文化に対しては好意的な人物でも、
キリスト教信仰を捨てて他宗教へ改宗した者には
大学の同窓会など様々なコミュニティーから排除されるだけで無く、
不慮の事故{おそらく暗殺?}で亡くなる人物も多かったのだ。
「心配してくれてありがとう、サム。
それで、このレポートに対する、上層部の反応はどうなんだ?」
ジェームスは、開たちや海援隊{情報部}と相談して、
魔力計算機{コンピューター}や、人工衛星のことは極秘にする一方で、
ライト兄弟が1903年に世界で初めての有人動力飛行に成功した
飛行機が日元国でも開発されていることや、魔力エンジン
{魔力モーターや魔力ロケットについても極秘にされていた}についての
レポートを提出していたのだった。
「正直に言うと上層部の、あのレポート内容に対しての認知は、半信半疑って所だな。
飛行機に関しても、ブレリオⅪ{1909年に世界で初めて英仏海峡を横断した単葉機}や
カーチスゴールデンフライヤー{1910年に巡洋艦バーミンガムの特設甲板から離発艦を行い、
翌年には巡洋艦ペンシルベニアに仮設された飛行甲板に着艦を行った}などより
優秀な飛行機を日元国が独自に開発しているなど、全く信じていないよ」
「そうなのか・・」ジェームスは、去年開たちが行った航空母艦からの発着テストを
見学した時の事を複雑な心境で思い出していた。
***1910年、北海道択捉島単冠湾の沖合***
「それにしても、広いですね」
「全長は200m、幅は20mで、現時点では、世界で一番広い船の上の滑走路です。
我々はこの船の事を、航空母艦{鳳翔}と呼んでいます」
前世の航空母艦鳳翔は1920年に建造が開始され、いく度かの改装を重ね、
最終的には、全長179.5m、幅約18.9mになっていたので、
建造開始年で10年早く、しかも全長、全幅とも一回り大きくなっていた。
「航空母艦鳳翔ですか、なるほど、なぜこんな人里離れた島の
沖合に呼ばれたのかようやくわかりましたよ」
「でも、飛行機が飛び立つには、この航空母艦でも、まだ滑走路が短いのでは?」
「ええそうなんです。
なので今日は、そのための射出機{カタパルト}の試験も兼ねているんですよ」
ジェームスたちが、そんな説明を受けていると、エレベーターがせり上がり、
魔法鎧に身を包んだ開が現れた。
「これよりカタパルトのテストを行います、開さん、準備はよろしいですか?」
魔法通信機を使って、試験官らしき人が、問うと開は、
「了解」
と返答しながら親指を立てた。
「発射10秒前、・・・・3,2,1発射!」
ドンという音と共に、カタパルトが開を、ものすごい勢いで前方に押し出していく。
「アムロ行きまーす」
と言いながら、アッという間に開は空中に舞い上がる。
「 「 「 「おおー、成功だ」 」 」 」
周りの開発関係者達から歓声が上がる。
そんな中で冷静な試験官からは
「・・・あのー、開さん?今のアムロというのはどう言う意味ですか・・」と
魔法無線機で問いかける。
開は
「うーん、なんとなく言ってみただけ」と返答してきた。
(いや俺的には「カミーユ出ます」の方が・・)
勾玉内で海が呟いていた
「はあ、そうですか・・じゃあ次に、荒木中尉に震電零式で出てもらいますので
開さんは万が一の事故があった時の救出のため、そのまま空中で
待機してもらっていてもいいですか」
「ふん。連邦軍の新型モビルスーツの威力とやらをみせてもらおうか」と
言いながら開が魔法で上空に浮いていた。
「・・・あの開さん?意味が全く、わからないんですが・・・モビルスーツというのは?」
そんなやり取りをしている中で、つぎにエレベーターから出てきたのは、
前世では、太平洋戦争末期に九州飛行機で1機だけ試作された
震電という前翼型{エンテ型}飛行機で、水平尾翼が機体前方にあり、
プロペラが後方に付いていて、空母と同様に、前世の震電より、一回り大きく
{全長が9.760から11m、全幅11.114から12m}したような飛行機だった。
この震電零式という飛行機は、前世と同様30mm機関砲が4門付いているのだが、
後のアメリカの攻撃ヘリの前部に取り付けられた機関砲のように、
上方下方に60°、左右に120°まで旋回可能だった。
「荒木中尉、不具合はありますか」
「いや今のところ特にない、順調だ」
「では、モーターを始動してください」
「了解」
キュルルルー
6枚ブレードの2重反転プロペラがスムーズに回りはじめる。
前世では、三菱の2段過給機付ハ43-42エンジン
{2130馬力で最高速度750km}だったが、
今世では、魔力水晶モーターを搭載しており、3000馬力で、
最高速度850kmをたたき出す。
陸地では何度も試験飛行を行っており、今回はカタパルトを使っての
空母発着試験だった。
「10,9,8,・・・3,2,1,発射」
ドンという音と共に問題なく空に舞い上がった。
数分後、
「高度12000m、特に問題なし。これより1000mまで降下し着陸試験に移る」と
荒木中尉から連絡が入る。
震電零式の高度試験等は、すでに済ましており、
{NASAのHelios HP01が2001年に記録した29523mには及ばないが、
1995年にドイツの高高度実験機が記録した18552mに近い、18000mまで上昇できる}
今回は航空母艦からの発進と着陸のテストがメインだ。
プロペラが後ろに付いているため、機首を上げながらの着陸は出来ないのだが、
実は主翼の日の丸の部分と前翼、ラダーを兼ねた側翼に小型の魔力プロペラが
格納されており、それらを最大限に使えば、ほぼ垂直に着陸できるのだ。
{残念ながら、垂直離陸できるほどのパワーは無い}
荒木中尉は、震電零式で2000時間以上飛行している中堅所で、
鳥が舞い降りるようにフワッと見事に着陸した。
次に、翼を折りたたんで、エレベーターから出てきたのは、
水上中尉と、黒木少尉の2人が乗る、双発の一00式司令部偵察機だった。
この一00偵は、震電零式のように前翼型{エンテ型}ではないが、
やはりプロペラは後ろ向きに付いており、
陸地での試験飛行では、震電零式を上回る最高高度20000m、
最高速度900kmという性能を持っていた。
「準備はどうですか、水上中尉」
「大丈夫だ、いつでも行ける」
「了解しました。では、カタパルト発射10秒前、
・・・・3,2,1,発射」
ドオーン、先ほどの震電零式よりも大きな音がして、零式よりも
二回り大きい{全長13m、全幅15m}一00偵が無事に大空に
舞い上がったのだった。
****
「ジェームス?大丈夫か、さっきからボーっとして」
「サム、空母って知ってるか」
「空の母?いや分からん」
「だよな・・・。
なあ、サム、今後何が起ころうとも、
英日同盟だけは、堅持したほうがいいと思う。
それが、大英帝国の生き残る道だと俺は思うんだ」
「わかった。伝えておくよ」
ジェームスは、元同僚と別れると、
また別のカフェに入り、妻から送られてきた子供の動画を眺めた。
それが、前世の5G{10Gbpsクラスの超高速無線}と呼ばれるものに
匹敵する通信速度とは知らずに・・。
それから2年後の1914年、前世と同様に、
サラエボを訪問中のオーストリア=ハンガリー帝国の
皇位継承者フランツ・フェルディナント大公とその妻
ゾフィー・ホテクが、ボスニア出身の青年ガヴリロ・プリンツィプによって暗殺され、
それがトリガーとなり、
中央同盟国{ドイツ、オーストリア、オスマン帝国、ブルガリア王国}と
連合国{フランス、イギリス、ロシア}
{後にセルビア、モンテネグロ王国、ベルギー、日元国、イタリア王国、
ルーマニア王国、ポルトガル共和国、アメリカ、ギリシャ他多数が連合国に参加}
との戦争が勃発するのだった。




