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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
54/55

055 魔力水晶電算機と人工衛星

「それでは、朝鮮半島のロシア支配は今まで通りで構わないと!

それに賠償金も要求せず、旅順・大連の租借権も返すと?」

ロシア側の全権委託者のヴィッテは驚きを隠せなかった。


「ええ、その分、樺太{サハリン}全島を割譲と沿海州やカムチャッカの

漁業権を承認していただきたい」

と日元側の全権委託者の小村寿太郎が提案すると、ヴィッテは、喜んで承諾し、

1905年の9月に日露講和条約{ポーツマス条約}の調印が行われた。


前世では、17億円もの戦費と20万人もの死傷者を出したのに、

賠償金も取れなかった、この条約調印に多くの日元国民が激しい不満を抱き、

日比谷をはじめ各地で暴動や焼き打ち事件が起こったが、

今世は、死傷者も7000人ほどに抑えられており、

さらに戦死者の遺族には手厚く保証がなされていたため、暴動は起こらなかった。


そして、東アジアの片隅にある有色人種の日元国が、白人不敗の神話を

打ち破ってロシアとの戦いで勝利を収めた事は、

前世と同様に、世界に衝撃を与え、

その後の清国、インド、オスマン帝国{トルコ}、フィンランドなどの民族運動に

大きな影響を及ぼす事になるのだった。


さらには、賠償金も取らずに、旅順や大連の租借権を返納した行為は、

当時、イギリスに留学していた16歳のインド人のネルー少年にも感銘を与え、

後のインド独立運動へと繋がっていくのだった。



***それから5年後{1910年}明治43年の沖縄本島***



沖縄北部にある秘密基地から少し離れた、やんばるの森を切り開いた広場に、

開の世界にあった国産の固体燃料ロケット、イプシロン{全長24.7m全重量91t}より

少し小型{全長20m、全重量40t}の固体魔力燃料ロケットが置かれていた。


「魔力ロケットエンジン点火10秒前、9, 8 , 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1,点火」


ゴーーーーーー、


それは、この世界で最初の人工衛星を積んだロケットが発射された瞬間だった。


固体魔力燃料ロケットとは、前世の固体燃料ロケットと同様に

機体の中で固体燃料が燃える事により、その作用反作用の原理で、

上昇していく部分は、同じなのだが、燃料が化学燃料ではなく、

魔力水晶から、放出されるロケットであった。


「高度2万m、ブースター切り離し」


開たちが見守るモニター上で、4本のブースターが外れて行くのが見えた。


さらに数分後、

「高度20,200km、人工衛星が準同期軌道に乗りました!」


「 「 「 おおー 」 」 」

あちこちで歓声が上がる。


そんななかで、開は

「ツィオルコフスキー博士、やりましたね!」

と博士に駆け寄った。


「ありがとう!これも開君達のおかげだよ」

前世で、宇宙旅行の父と呼ばれた、コンスタンチン・エドゥアルドヴィチ・

ツィオルコフスキーは、ロシア内の内乱に嫌気がさし、

海援隊の諜報部員たちからの誘いと助けを受けて、4年前から、

日元国に亡命して、研究を続けていたのだ。


そして、1903年に発表していた{反作用利用装置による宇宙探検}の論文を基に

ついに多段式魔力燃料ロケットに人工衛星を乗せて打ち上げたのだった。


(すげえ、前世でソ連がスプートニック1号を打ち上げたのが、1957年だったから、

50年近く先行してる事になるぞ)勾玉内の海が騒ぐ。


(そうだね、でもロケットの構造事態は前世の固体燃料ロケットに極めて近い構造で

単純だから、材料さえそろえられれば、現在の欧米でもロケットは作れると思うぞ。

それよりも驚異なのが、軌道計算を、したこの魔力計算機の方だよ)


電子演算装置、いわゆるコンピュータは、

前世では1943年の第二次世界大戦中のさなかに、

ドイツ軍のローレンツ暗号を解読するために、2500本もの真空管を使った

コロッサス{COLOSSUS}という電子計算機がイギリスで造られたり、

1945年には、アメリカで、真空管を18000本近く使った、

エニアック{ENIAC}が造られたが、どちらも大がかりな装置で、

エニアックなどは、倉庫1個分{167㎡}ものスペースに

総重量27トンという大きさで、消費電力は150Kwに達していたという。


それに対して、開たちの開発した魔力計算機は、机ぐらいの大きさで、

現代のデスクトップパソコンに近い形で造られている上に、

消費魔力量も、魔力水晶電池1本で、1週間は使えるというものだった。


この魔力計算機は、前世の電子式の二進法とは違い、魔力水晶の演算装置に

魔力の多重掛けを使って、十進法で造られていたため、

いきなり、前世のintel core i5並の演算速度をもっており、

複雑な軌道計算は、すべて、この魔力計算機で行っているのだ。


「衛星からの信号、届いてますか?」


開たちが、ディスプレイをのぞき込む。


そして当然、出力装置もエニアックのようなパンチカード式ではなく、

魔力水晶で出来た現在の液晶ディスプレイに近い仕様だった。


「ちょっと待ってくださいね」


研究員が、キーボード{前世と同様、英文字でローマ字入力が使えるようになっていた}を

操作する。


「き、来ました!衛星からの信号、受信できています!」


「 「 「 「 「 おおおー!」 」 」 」 」

再び管制室内に、歓声が上がった。


開とツィオルコフスキー博士が、ガッシリと握手をする。


「ロケットに続き、人工衛星も成功ですね。

あと23機、先は長いですが、よろしくお願いします博士」


そう、開たちは、高度20200km、軌道傾斜角55度、周期12時間の

準同期軌道上に24機の衛星を上げ、複数の衛星からの信号をもとに

受信地点の正確な位置を得られる、いわゆるGPSを造ろうとしていたのだ。


「ここまでくれば、もう峠を越えとるよ、まかせなさい開君」


その言葉どおり、ツィオルコフスキー博士たちは、その後の2年間で、

残り23機の衛星の打ち上げに成功するのだった。


そして、魔力計算機もその2年間で、飛躍的に進歩する。


そのきっかけは、海が勾玉内で、天照さまに見せた、スマホだった。


なかなか、ピラミッド内から出られず、退屈していた天照さまは、

すぐに開の世界から、スマホを持ってこさせて、

LINEなどのコミュケーションツールやAmazonなどのオンラインショップを

利用し始めたのだった。

そしてすぐにネットにハマり、コスメグッズや、洋服を注文し始めたらしいのだが、

どうやらそれは、月読み様を経由して、向こうの世界で注文したものが

届くようになっているみたいで、時々、なぜか荷物が開封済みだったり、

中身のコスメグッズの本数が減っているらしく、ケンカになっていたのだ。


そのため、この世界でも早く、いろんなコスメ商品を開発させ、

さらにネットを普及させて、人々が{本当は自分が}オンラインショップで、

自由に買い物が出来る世界を実現させるように言われていたのだ。


そのため研究員たちは必死で技術を開発し、なんと2年後には、

開の世界の魔力パスポートともミックスさせた、

メールや通話はもちろん、動画まで見られる、魔力携帯通話機能の付いた

魔力パスポート、つまりスマートホンならぬ、スマート魔力パスポート、

略して{スマパ}が出来上がるのだった。


そうやって、日元国が平和的な技術開発をしている間に、

{もちろん、GPSや通信技術は軍事技術としても有用だが}

世界情勢も動いていった。


支那では、孫文たちの革命勢力によって、ついに清王朝が幕お下ろし、

中華民国臨時政府が設立され初代大統領に孫文が就任した。


しかし前世と同様すぐに孫文は退任し、袁世凱が二代目大統領になったものの、

混乱が続いていた。


日元国では、朝鮮半島から完全に手を引いていたので、

前世のように前年の伊藤博文の暗殺は起こらず、

朝鮮半島を併合することは無かったが、ヨーロッパでは、前世通り、

ポルトガルで革命が起こり、南米ではメキシコで革命が起こるなど、

徐々に、きな臭くなっていくのであった。



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