053 日元海海戦
すみません、かなり間が開いてしまいました。2月の最初に突然ギックリ腰になり、職場を休み、
整体に行くと、骨盤修正をしてくれて、1時間で回復しました。整体のすごさに驚いて、社会人向けの整体学校を見学に行きました。ノリと勢いで、そのまま入校してしまい、仕事帰りに授業を受るようになると、小説を書く時間がなくなってしまいました。
最近ようやく、少し時間配分ができるようになり、また投稿できるようになりました。少しずつ書いていこうと思っています。よろしくお願いします。
前世より、10ヶ月以上早い、1904年の3月22には、奉天での会戦が終わった
日露戦争であったが、ロシア側はのらりくらりと、アメリカのルーズベルト大統領が
仲裁に入っての講和会議の時期を引き延ばして、日元国との話し合いの
テーブルには、付こうとしなかった。
確かに満州では、遼陽、沙河、奉天の会戦ではことごとく敗戦し続け、
これまでに10万もの兵士を失ってはいたが、シベリア鉄道が破壊されない限はり、
3ヶ月もすれば補充できる兵員の数であったのだ。
また、海軍の方も、ロシア太平洋艦隊等が沈んでしまってはいたが、
大国のロシアには、実は、日元艦隊に匹敵する艦隊がもうワンセット存在しており、
バルチック艦隊と呼ばれる、その残りのワンセットの艦隊が、
ロジェストウェンスキー提督に率いられて、日元国へ向かっているのだった。
そして、そのバルチック艦隊が日元国艦隊に勝てば、制海権を握れるし、
そうなれば満州に上陸した、日元国の陸軍は補給でき無くなって、
弱体化は必修で、3ヶ月後に補充される、ロシア陸軍が再び攻めれば、
補給を断たれる日元陸軍は壊滅する事になると予想されたのだった。
そのため、ニコライ2世は今、早まって、講和に応じるのは得策ではないと
判断したのだった。
また、あまりにも強すぎる日元軍を目の当たりにしたイギリスは
今後のアジアのパワーバランスを考えたときに、
このまま、日元国が一方的に有利な状況での講和は望んでいないようで、
前世のように、ぐるっと地球を半周してやってくるバルチック艦隊への
嫌がらせは行なわずに、逆にベストな状態で海戦に望ませ、
互いにつぶし合うように仕向けている様子だった。
その結果、バルチック艦隊は、たいした疲弊も無く、前世より、2ヶ月ほど早い、
1905年の2月14日にはフランス領のカムラン湾に投錨した。
そこで、水兵達の英気を十分に養い、満を持して、
2ヶ月後の4月14日にカムラン湾を出航していったのだった。
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前世では、長崎県の五島列島沖で哨戒任務にあたっていた第三艦隊は、
今世では、沖縄本島北部にある秘密基地を拠点にして哨戒していた。
そして、哨戒任務にあったっている24隻の中の一番北側を哨戒していた
信濃丸{6388t}が北東に進んでいると、暗闇の中にポツンと、明かりが見えたのだ。
これは、バルチック艦隊に並走していたアリョール病院船が
誤って燈火したものだった。
信濃丸の成川艦長は慎重に近づき、確認した後、撃沈されるのを覚悟しながら、
「敵艦見ゆ、敵進路、対島沖」と四方に発信した。
さらに信濃丸の無線を受信した和泉{2987t}の石田艦長が夜明けの海を駆け回り
男女群島の南西50海里をすすむバルチック艦隊を発見し、
艦隊の数、陣形、進路などを細かく報告したのだった。
***
「来たぞ」
佐世保湾{前世では、連合艦隊は、朝鮮半島の鎮海湾にいたが、
今世では、朝鮮半島はロシアの支配下のため滞在できていない}に
錨をおろしていた日元海軍の連合艦隊の無線機が
一斉に鳴り、三笠の無線員の加瀬が連絡のため甲板を走りながら叫んだ。
その声は、他の兵員とは離れた所で、朝の体操をしていた、開と真之にも聞こえ、
真之は、「シメタ、シメタ、開君来たよ」と小躍りながらうれしそうに呟いたのだ。
{開は奉天の会戦後すぐに日元国に戻ると、東郷や真之のボディガード役として
三笠に乗艦していた}
実は、カムラン湾を出航してからのバルチック艦隊の行方がつかめず、
もし太平洋側を遠回りしてウラジオストックへ入られれば、戦争が長引くことになり、
ロシアを交渉のテーブルに付かせるのが、困難になるのだ。
「よし、これで戦争を早く終わらせられるぞ」
真之がうれしさのあまり、阿波踊りのように両手を振って踊り出したので、
開も一緒にひと踊りし、二人で大笑いした後、急いで通信室に向かった。
通信室では丁度、大本営に電報を打つ電文を打つ所で、
その電文には、
「敵艦見ゆ、との報告に接し、連合艦隊は直ちに出動、これを撃滅せんとす」とあった。
真之は、「待て」と言うと、その文章に、後に名文とされる、
{本日、天気晴朗なれども浪高し}と書き加えたのだった。
「艦隊に出航を命じます」
加藤参謀長と東郷平八郎提督に伝えると
「うむ」と東郷が頷き、信号長の命を受けて、信号兵がマストに
{予定順序通り、各隊出港}の旗をあげた。
各艦は、{了解}の旗を揚げて返信すると、
スルスルと佐世保港を出て、五島列島の宇久島を回り、
バルチック艦隊と対峙するコースをとるのだった。
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ロシア海軍では、昼食後は午睡し、茶を飲む習慣があり、
運命のこの日も普段とまったく変わりなく茶が振る舞われていた。
そんななか、「お、おいあれは、日元軍のミカサではないか」と士官の一人が叫んだ。
「そんなばかな」と否定する者もいたが、ものすごい速度で、こちらに向かってくる
数十隻の艦影が見えて来たのだ。
旗艦{スワロフ}の艦橋にいるロジェストウェンスキーに、
「閣下、トウゴウは、前回と同じ陣営でやってきてます」と
幕僚のセミョーノフ中佐が伝える。
セミョーノフ中佐は、この幕僚たちのなかでは、唯一前回の海戦の生き残りだったのだ。
セミョーノフ中佐の報告を受けたロジェストウェンスキーは
「ふん、所詮サルはサルだな、同じ手が何度も通用するか!
さあ、配置につきたまえ」と言うと、艦橋を下り、
厚い装甲で覆われた、司令塔の中に入っていったのだった。
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「へんな形だね」東郷は、双眼鏡を外すと、呟いた。
「確かに私も、単縦陣か、二列縦陣で来ると思っていましたが・・
ところで、予定通り、Z旗を揚げて、かまいませんか」
真之も、ダンゴ状態でやってくる、バルチック艦隊を不思議そうに見ながらも、
かねてから予定していた信号旗の許可を申請した。
東郷が頷くと、すぐに信号長に合図し、これもまた、後に有名になる、
{皇国の興廃、この一戦に在り、各員一層奮励努力せよ}という意味の
4色の旗、いわゆるZ旗が掲げられたのだった。
各艦ともこの信号文の意味が伝声管を通して全員に伝わると、
大声援が沸き起こり、すぐに返信として、
{了解}を表す応旗が掲げられるのだった。
「提督、司令塔の中に入ってください」真之が東郷に頼むが、東郷は
「いや、ここにいる」とかぶりをふるので、見かねた開が、
「私がシールドを張って提督を護りますが、万が一のため、分散しましょう」と
提案して、結局、艦橋には、東郷、真之、開、そして砲術長の安保と部下の
長谷川少尉だけが残ることになったのだった。
25ノットもの、高速で南下する日元艦隊と、7ノットほどで北上する
バルチック艦隊はグングンと距離が縮まっていく。
「距離8千になりました!長官、どちら側で戦をなさりますか」砲術長の問いに、
東郷は、右手を上げ、左に半円を描くように回転させた。
それを見た真之が大声で、
「トオーーリカーーージー、一杯」と、左への急旋回を指示した。
前世では、有名な敵前回頭、いわゆるα旋回、
日元海軍用語でいうところのT字戦法をとるのだが、
今世では、25ノットという快速を活かし、
反時計回りにバルチック艦隊を囲い込むように進むのだった。
さらに上村彦之丞中将率いる第二艦隊が面舵を取り、
同じように高速で、時計回りに囲い込んでいくのだった。
{東郷たちの第一艦隊との接触を避けるため、東郷たちの7000mより、
1000m遠い、8000mで回っていく}
「 「 「撃ち方はじめ!」 」 」 ドガン、ドガン、ドガン
日露両陣営がほぼ同時に砲撃を開始した。
互角に見えたのは、最初の数分だけで、後は日元艦隊が圧倒していった。
それは、ロシア艦隊が、前方、左舷、後方と撃ち分けなければならないのに対し、
東郷の第1艦隊は、各艦が左舷に向けた127門もの砲が、
ダンゴ状に進むバルチック艦隊の外側の艦に集中して襲いかかったからだった。
さらに、魔法によって、レーダー誘導のように正確に敵艦に砲弾が
吸い寄せられていく、瞬く間にロジェストウェンスキーの旗艦スワロフ、
それに続く戦艦オスラービアに命中弾が炸裂し、炎に包まれていく。
ダンゴ状のバルチック艦隊の後方から右舷に回り込んできた三笠は、
甲板上を走り回る、敵の兵員まで見える、5000mにまで近づいていった。
「たった数分のあいだに・・」
セミョーノフ中佐の後方にいた12人の信号兵は、肉片をまき散らして
全滅していた。
「こっちの弾だって当たっているはずだ」
ロジェストウェンスキーがいらだちながら叫ぶ。
確かにこちらの砲弾も当たっているような気がするのだが、
日元艦隊からは、いっこうに火災が起きないのだ。
ガガン、ドワン、ガガン、大音響の方を振り向くと、
戦艦アレクサンドル三世とボロジノが、大火災を起こし一隻は、
つんのめるように、もう一隻は横転しながら沈みはじめていた。
「なんということだ・・」セミョーノフがその様子を呆然と見ていると、
ドガン、ドガンと再び大音響がし、戦艦オスラービアも大火災を起こし、
後方から沈みはじめていた。
***
それから1時間後、波間には、多数のロシア船の木製品の残骸と、
それにつかまる少数の負傷兵たちが漂っているだけだった。
まさに、パーフェクトゲーム。
旗艦スワロフをはじめ、ボロジノ、アレクサンドル三世、ウラ-ル、カムチャッカ等、
前世と同様に主だった船はことごとく、沈没していたが、
前世では、翌日まで逃げて降伏した、ネボガトフ中将率いる、戦艦ニコライ1世や、
装甲海防艦アブラクシンなども沈んでいたのだ。
自分が立案した作戦で、敵兵とは言え、数万人もの人間の死を見た
真之には、勝利の喜び以上に、命のはかなさを感じ取ったのだろう。
「坊主になろう・・・」
東郷平八郎が去り、あちこちで、バンザイなど、勝どきの声が聞こえてくるなか、
開と二人だけになった艦橋で、真之が、ぼそりと呟いた。
「出家までは、付き合えませんが、お遍路さんなら、付き合えます。
落ち着いたら、回りましょう」
開の言葉に真之は静かに頷いた。




