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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
5/55

005 いきなり龍馬さんと出会う?

「開よ、わらわは疲れたぞ、もう歩けん、早うおぶってくれ」


「ええ、またですか、だから、ヒーリングの方法を伝授してもらって、

天照さまは向こうの世界で待っててほしいって、

あれほど言ったじゃないですか」


開は天真爛漫な天照大神の行動に振り回されていた。

開の世界の月本国を治める月読さまと、

主宰神養成学校のクラスメイトだという、

日元国の主宰神の天照さまは、開のズタズタになっていた

魔力回路を修復したり、時空を超えて、瞬間移動したりと、

ものすごい魔法力を持っているのだが、

その一方で、なぜか開の妹の女子高生ファッションに興味を示したり、

スイーツが大好きだったりと、どこか、人間くさい存在なのだ。


そんな、天照さまの能力を使って、150年ぐらい前の日元国に

転移してきた開たちは、夕方の京都の街を麻衣の魂の反応を求めて、

さまよっていた。


150年間の累計なら、軽く億を超える数の、魂の中から、

一つの魂を見つけ出すには、天照さまの強力な捜索魔力を使っても、

どの年代の、どの地域にいるらしいとしか、探索できないのだそうだ。


「なにを言う、あの時わらわが、神託を降ろすために、

麻衣の体に入っていたために、霊媒をしていた麻衣が

こんなことになってしまったのじゃぞ。

もちろん、日元国を占領して、伊勢神宮に水爆を落としおった、

中国が一番悪いんじゃが、そこまで敵を引き込んでしまった、

わらわにも責任があるであろう。

それにこの列島は、わらわが、ムー大陸が沈んでから後、1万年に渡って、

治めてきた日元国じゃぞ、あのまま滅ぶか、もう一度、復活できるか、

この目で見ていたいのじゃよ、ほら、早うしゃがめ」


(麻衣ちゃんの事で、責任を感じているのか、ただの、スイーツ好きの

女の子じゃなかったんだな。でも、今1万年前とかムー大陸とか、

なにげに凄いことを口走らなかったか?後で詳しく聞いて見よう)


開は、半分感心し、半分あきれながらも、

天照さまを、おぶるたにめしゃがんだ。


(しかし、なんで金髪に、舞から借りた、制服のままなんだよ)

絹江ばあちゃんに茶髪にしてもらった天照さまが、月読さまに自慢すると、

それに対抗してなのか、月読さまが、天照さまより明るい茶髪にすると、

さらに対抗したように、金髪にしてもらっていたのだ。


(うう、太股の感覚がダイレクトに、それにブラジャーも付けてないのか、

背中に柔らかい感覚が・・、っていうか、これは麻衣ちゃんの肉体だから

麻衣ちゃんってけっこう胸があるんだな、

ということは舞も、後3年すれば、こんな感じで、大きくなるのかな)


海と詳しく互いの生い立ちを話し合った結果、

生まれた環境はそっくりなのだが、生まれた年代がどうやら、

3年程、ズレているというのが分かったのだ。


つまり、海は23歳、麻衣は18歳で、麻衣の体は

舞の3年後の容姿と考えられるのだ。


{開、てめえ、俺(海)の妹の体に、なに欲情してるんだよ}


{開、父(勇一郎)さんも、それは人間としてどうかと思うぞ、

なあ母(美咲)さん}


{ええ、そうね、いくら別の世界の人とは言っても、舞にそっくりな

女の子に手を出すのはどうかしらね}


{あらそうなの、私(実咲)は、開くんのような子が、

麻衣のお婿さんになってくれるのなら、大歓迎なんだけど、

ねえ、お父(勇太郎)さん}


{ああそうだな、海も含めて、儂らはみんな死んじゃったからなあ、

これから一人で生きていかなきゃならん麻衣の事を考えれば、

どこの馬の骨とも分からんヤツの所に嫁ぐよりは、

開くんにもらってもらう方が、安心だな。

海も弟を欲しがっていたじゃないか、

それに、それにそうなれば、勇一郎さんたちとも、親戚に成るわけだし}


{弟かそれなら悪くないか・・}


{なるほど、親戚になるんですか、それはいいですな}


(ちょっと、待てくれ、少し変な気持ちになったのは確かだけど、

麻衣ちゃんの事は、舞と同様、妹だと思っているし、だいたいまだ、

手も出してないし、と言うか、なんでみんな付いて来たんだよ)


開が、天照さまの世界に行って、バラバラになった麻衣ちゃんの魂を

集めて来ると宣言した後、天照さまが同行すると言って聞かず、

すったもんだの話し合いの結果、天照さまは同行するが、

他の人達とは、麻衣と舞の勾玉を連絡ツールとして、

定期的に連絡を取りあうことで、決着したのだが、

開が付けることになった麻衣の勾玉になぜか、

両親と海と海の両親が入り込んで、付いて来たのだった。


なので、たえず繋がっている、スマホのような感じで、勾玉の中にいる

開の両親たちの声が頭の中にダイレクトに聞こえてくるのだ。


{何を言う、一人息子が、異次元宇宙の異次元の国に、

他人様の娘さんの体と、天照さまの、みたまをつれて行くのだぞ、

親として心配するのは当たり前だろう}


(だからって、両親で来ることはないだろう、舞の方はどうするんだよ)

祖父の喜一郎と、祖母の絹江と妹の舞には、月本国に残って、

さまざまなバックアップを頼んであるのだ。


{ふふふそれは大丈夫よ、月読さまの力で、この勾玉と舞の勾玉を

完全に同通してもらったのよ。

だから、舞が寝る前には毎日戻って、舞とお話することにしてあるの、

開の事も話しておいてあげるから、舞に報告出来ないような事をしちゃだめよ、

まあ、麻衣ちゃんの事は実咲さんたちの許可が出たけどね}


「母さん、俺の事は俺から話すから、母さんたちは、余計な事は話さないで

くれるかな、それに、麻衣ちゃんの事は、そんなふうに考えてないから」


開達の念話は、聞こえているのだろうが、マイペースな天照さまは、

開におぶさったまま、耳元で、

「開よ、わらわはお腹が空いたぞ、今度は、ぜんざいがいいかのう」と

つぶやく。


「いやいや、さっき、お供え物のまんじゅうを

5つも食べてたじゃないですか」


天照さまの、時空移動魔法は、

天照自身が認識している場所にしか、移転できない。


したがって、移動場所は長年建っている、神社やお寺などが中心になるので、

天照さまが認識していた、八坂神社の本堂内に転移してきた開たちだったが、

そこにお供えしてあった、まんじゅうを、八百万の神の頂点は妾じゃ、

すなわち、あらゆる神社のお供え物は全て、妾にお供えしたものじゃ、

という理屈のもとに、ぜんぶ食べてしまったのだった。


「ほお、異国のおなごをおぶって、京の都で逢い引きかい、お主

なかなかやるのう」


金髪の麻衣の身体を見て、異国の女性と判断したのだろう。


突然声を掛けられた開が振り返ると、そこには少しくたびれた着物の

懐に片腕をつっこみ、革靴を履いた、浪人が目を細めながら立っていた。


「もしかして、さっ、坂本龍馬さん?こんな所で会えるなんて」


「うぐ、坊主なんで儂の名を、いや、ちゃうちゃう、儂は才谷梅太郎じゃ」

龍馬は、開の顔を見て幼く思えたのだろう、お主から坊主に呼び名が変わった。

「それって、龍馬さんの偽名ですよね」開がそういうと、

浪人の目が据わった。


「ほう、儂の偽名をしちょるとは、坊主は何者じゃ、

幕府の犬か、それとも、もしかして薩摩か長州かの、

(徳川)慶喜公が英断を下したとはいえ、

まだ日元国の洗濯は済んでおらんぜよ、なので儂は

もうちょっとすることがあるんじゃ、ここでおまんに

命をくれてやるわけにはいかんぜよ、すまんが通してもらうぜ」と

懐からピストルを取り出し構えた。


「いえいえ、僕らは、妹を探しにこの街に来ただけで、

決して怪しい者じゃないんです」と龍馬と同じようなブーツに、

じいちゃんに用意してもらった下級武士用の着物を着た開が否定した。


すると、開におぶられた、天照さまが、肩越しに龍馬に話しかけた。

「その縮れ毛、もしかして、お主、桂浜で会った、泣き虫小僧ではないか」


龍馬がいぶかっていると


「この体に入っていてはわからんか、ほれ」と言って天照さまは、

肉体から抜けだし、黒髪の女神として物質化して姿を現した。


それを見た龍馬が

「ああ、いつぞやの、女神さまじゃ!こりゃまっこと懐かしいのう、

ほんに、あの時は世話になったぜよ」と喜びの声を上げた。


****


「ええ、龍馬さんも、子供の頃に天照さまと会っていたんですか!」

開の驚きの声に、龍馬が、うどんをすすりながら、頷く。


結局立ち話もなんなので、天照さまが希望するぜんざいも食べられる、

龍馬さんが密談にも使う個室もある料理屋に入ったのだ。


ちなみに、天照さまは微妙な魔力コントロールが苦手らしく、

月読さまのように長時間物質化すると疲れるらしくて、

すぐに、麻衣の肉体に戻っていた。


「ああ、あれは母上が亡くなって、まだ、そんなに日がたっておらず

悲しみにくれておった頃じゃったかのう、

当時の儂はまだ、体も小いさくて道場でもいじめられっぱなしでのう、

あの日は、道場をさぼって、桂浜で時間をつぶしておったぜよ、

それで、腹が減ってきたので、栄姉さんが、持たせてくれた、

ぼた餅を食べようとしたら、きれいな女神さまが現れたんじゃよ」


「ぼた餅ねえ、なんか話の先が読めた感じがしてきました・・いて」

開がつぶやくと、なぜか天照さまに後頭部をはたかれた。


天照さまは、3杯目の空になった、ぜんざいのお椀を置くと、ドヤ顔で、

「わらわが、この国を治める時に創った、神仕組みの一つじゃよ、

日元国に危機が迫ると、強力な魔力を持った者が生まれるように

してあるんじゃよ。


古くは、各地の豪族たちをまとめ、大和朝廷を打ち立てた

日元武の頃から、聖徳太子や、源頼朝、元寇の時の北条時宗、など、

日元国が危機になると英雄が生まれるようにしたんじゃ。


龍馬の時代も日元国の危機じゃっからのう、戦国時代と同じく、

数十名の魔力保持者が生まれておるはずじゃよ。


ただ妾の国では、ヨミヨミ(月読)のように、魔力を前面に出すのでは無く、

あくまでも知性で、国の運営をしてほしいのでな、魔力といっても、

火球や、氷槍などの攻撃魔法ではなくて、相手に感化を与えたり、

説得力を増すような、地味な魔法しか使えんようにしておるがな。


だから、龍馬の魔力の様子を見に来た時も、愛と寛容と

説得力のチャクラを中心に魔力回路を調整しただけじゃ。

ぼた餅は、その駄賃じゃのう」


「へえ、龍馬さんも魔力持ちなんですか、

それに愛と寛容と説得力の魔力華チャクラか・・なるほど、

だから龍馬さんは、犬猿の仲だった薩摩と長州に同盟を結ばせ、

幕府を倒す勢力を作り上げながらも、幕府自ら政権を朝廷に返上させる

大政奉還という方法を提案して、徳川家も助けながら、

それが成されて、新政府を創りながらも、その新政府に自らは入らず、

しかも徳川慶喜を副関白にして、できるだけ内戦を避けようと

していたんですね」


「お、おう、慶喜公の副関白の件まで知っているのか、

あの件はまだ慎の字にも伝えておらんのじゃが」


「慎の字って、同郷の志士の中岡慎太郎さんですか」


「坊主、いや開か、お主はようしっちょるのう。

一応、慶喜公の副関白を書いていない新政府役人表は西郷どんたちに見せて、

承諾は得ておるからのう、あとはどう慶喜公の副関白案を通すかじゃのう」


「ええ、もう見せちゃったんですか、

西郷さんが驚くところ、僕も見てみたかったな、

あれですよね、参議のところに龍馬さんの名前が入ってなくて、

そのことを不思議に思った西郷さんが、龍馬さんに尋ねたら、

{窮屈な役人は嫌いだから、儂は出ませんぜ、それより

世界の海援隊でもやりましょうかな}って答えたんですよねえ、

カッコよすぎる、ああ、見てたかったなあ」


「お、おお、ほんに、ようしっちょるのう、まあそんな感じじゃったわ、

それで、これからまず、慎の字を説得して、それから二人で、

西郷どんや大久保どん、桂さんや(後藤)象二郎を説得し、

岩倉卿や三条卿に根回しじゃな、そうせんと、内乱が起きる、

それで得をするのは、英国と仏国じゃからの」


龍馬の話では、こちらの世界でも、

白人以外の人は人間ではなく、黒人はゴリラの親戚で、

黄色人種はサルの親戚だとみなされていて、

それゆえに、有色人種は、奴隷というか家畜の一種として、

人間である白人が所有してもかまわないという

白人優位論がまかり通っていて、欧米列強が

世界中の有色人種の土地を奪いまくり、植民地を作って、

そこから莫大な利益を吸い上げているのだという。


日元国も、武器商人のグラバーを中心とした英国が

薩摩や長州等の倒幕勢力に肩入れをする一方で、

仏国が幕府側に大量の資金や武器を売りつけて、

内乱を煽っており、返せなくなった借金の抵当として、

仏英両国で仲良く、北海道や、横浜、神戸、長崎などの港を奪い取り、

植民地にしようと暗躍しているのだそうだ。


「それで、いったいお主は何者じゃ」龍馬の問いに


開は自分は、月本国という、日元国とよく似ているが、

左右反対の別の世界から、天照さまの力を借りて来たこと。


そして、日元国にやって来た理由は、

開の時代から150年ぐらい前に妹の魂が飛ばされてしまい、

その魂を回収に来たこと(もちろん飛ばされたのは日元国の方の

妹の魂で、天照さまが入っているのがその妹の体であることも)を、

大まかに話したのだった。


「あれ、こんな突拍子もない話をしても、疑わないんですか」


「うーん、以前に天照大神さまに、魔力回路を調整してもらったからのう、

女神が存在することは信じておるよ。

その天照大神さまの連れが、言うんじゃ、本当なんだろうよ。

それで日元国は、どうなっていくんじゃ150年の未来から来たんなら、

今後の日元国の様子も解っておるじゃろう」


「ええと、それはですね・・」

龍馬の素直な問い掛けに、どう答えて良いのか分からず、

天照さまの顔を見た。


天照さまは一言

「滅んだよ」と言い放った。


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