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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
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049 魔力竹式機甲軍団

「いや、驚きました、開殿の言うとおり、原価でなら購入してもよいとお伝えしたら、

本当にヴィカース社の最新鋭戦艦を譲ってもらえることになりましたよ」

海軍大臣の山本権兵衛が開を訪ねてきた。


「え、本当ですか、そういえば断れると思っていたんですが、

イギリスもしつこいですね、困ったな、どうしよう」


前世と違い、魔力水晶を造りだし、独自のエネルギー源にしている

今世の日元国は、それほど貧乏ではなかった。


外貨を得る手段も、絹はもとより、開が密かに再生した鉱山から、

金を採掘しているため、それほど困っておらず、

逆に軍事機密の塊である戦艦の建造に関しては、

魔力水晶を使った日元国独自の動力源などを秘密にしておきたいため、

国内での建造が中心になっていたのだ。


「いっその事、タダでくれるならもらってもいいとか、もっと無理難題を

押しつけるべきでしたね・・見返りに何を要求してきてますかねえ」


「日英同盟ですな」


「やっぱり、イギリスさんは、どうしても我が国とロシアを戦わせたいみたいですね」


ぐだぐだな李氏朝鮮には、手を出さず、清国とも距離を置く、今世の日元国にとって、

ロシアの南下政策は、不愉快といえば不愉快だが、

今のところは、朝鮮半島を護るために、満州まで出兵するという考えは無く、

静観する方針で、その間に艦隊を充実させて、日元海で迎え撃つ計画だった。


前世の日露戦争では、20億近い戦費が掛かっており、

その内の実に8割近い15億円もの公債を発行し、

その半分以上の8億円が外債で、その外債発行の後ろ盾のために、

絶対に必要だった日英同盟だが、今世では、金山などを魔法で再開発し、

コツコツと自力で国力を蓄えているため{すでに10億円が貯まっている}、

日英同盟のメリットはそれほど無かったのである。


いや逆に、イギリスも含め、欧米諸国の植民地政策をいずれは、

潰してしまうという、大戦略を考えている日元国にとって、

欧米諸国との同盟は、欧米の都合で戦争に巻き込まれる危険性と、

アジア諸国をはじめとする植民地の人々への裏切りのような気がしてならなかったのだ。


(まあ、ジェームスさんと麗子さんの件もあるし、結ぶしかないか・・)


この時代の白人たちの思想は、

ジェームスのように黄色人種と結婚しようとする方が少数派で、

黄色人種はサルの親戚であり、妾にするぐらいまでなら、なんとか許せるが、

正妻にするのは絶対に許されないとする、

ジェームスの両親のような考え方が主流派だったのだ。


そんな考えを打破するには、テロなどではなく、

堂々と白人国家の軍を一度は、打ち破らなくてはならないだろう。


(艦隊戦だけじゃ完全勝利とは認めてくれないだろうな・・)

しかたなく、開たちは、陸軍向けの様々な装備や兵器を考案、開発をしているのだった。



****



「ヒャッホー」

まるで、世紀末の廃墟を舞台にしたマンガに出てくる敵役のような声を上げながら

龍馬さんが、2つのバケツを逆さまにしたような少し大きめの

ローラースケートを履いて、演習用地を爆走していた。


流線型の兜を被り、肩や膝にプロテクターを付けて、片手に盾を持ち、

バズーカ砲のような魔力砲を肩にかけながら、魔法弾をぶっ放す。


ドガン。魔法弾は緩く孤を描きながら、標的に命中する。


その威力は凄まじく、一撃で的だけで無く、その周囲も破壊していた。


(い、一撃で、一撃で撃破か、あのモビルスーツは戦艦なみのビーム砲をもっているのか!)


(ビーム砲じゃあないし、モビルスーツでもないから)


(言って見たかっただけだよ。それにしても、まさにリックドムのようだな)


(いや、ボトムズっぽくないか)


勾玉内の海も、そして開も、龍馬さんの動きに、内心興奮していた。


「龍馬さん、次は機動力を見たいです、あの坂を登ってもらえますか?」

開が小型のピラミッドが付いたマイクのようなものに語りかけると、


「了解」と、龍馬さんの声が聞こえてくる。


魔法将棋{西洋では、サムライチェス}と呼ばれているスポーツの

訓練用に作られた急坂を登ったり、岩の障害物を左右に巧に躱しながら進んだりと、

一通りの動作確認を終えると、開たちのもとに戻って来た。


「いやー、この魔力竹馬靴も魔力竹筒砲も最高だね」

テストを終えた龍馬さん{魔法の影響か、66歳にはとても見えない}が、

兜を脱ぎながら楽しそうに話す。


前世の日露戦争では、徴兵制だったため、日元政府は、156個大隊、

約16万名の歩兵を招集できたのだが、今世では、志願制のため、

民間の2倍の給料で募集しているのだが、

今のところ、その4分の1の40個大隊、

約4万名の歩兵しか集まっていなかった。

{この後、懸命に勧誘し、3年後の開戦時には、ようやく80個大隊の8万人になる}


その兵力で、前世と同じ、1740個大隊、210万ものロシア兵と戦わなければならないのだ。


50倍近い敵と互角に戦うには、一人一人の兵士を一騎当千の兵士にするしかない。


そこで考え出されたのが、魔法将棋用{海外ではサムライチェス}の

鎧や魔法砲や重機関魔法銃などの改良と、100ccほどの魔力エンジンを付けた、

高速個人移動靴の開発だった。


そして、おもしろいことに、これらは全て竹で出来ていた。


鎧兜や魔法砲などは、魔法将棋用のモノをさらに強化したものだが、

100ccほどの魔力エンジン{後に開発される魔力モーターが出来るまでの

つなぎの技術で、シリンダー内で魔力爆発させることで、

ピストンを動かして、回転力を得る機械}も、なんと竹で出来ていたのだ。


なぜ、竹なのか、それは、魔法将棋の生みの親でもある、

熊さん{樋口熊吉}や八さん{石山八男}が、その後もずっと、

竹に魔法水晶をコーティングした防具を作り続けていた事と、

竹は日本中の何処にでも生えていて、材料費が非常に安かったからだ。


龍馬さんが試運転を行った、魔法竹馬靴は、新型で、

栄養ドリンク1本ほどの大きさの魔力水晶1個{片足}で、

なんと、最高速度50kmで約6時間の連続稼働が可能になっていた。


「それにこの魔法竹筒砲も、転写魔法が使えるから、百発百中ぜよ」


魔法竹筒砲も、魔法将棋の飛車役の武器である魔法砲を改良したものだが、

こちらは、砲弾にも工夫が凝らしてあり、砲弾の先頭部の魔力水晶と

魔法竹筒砲の照準器の魔力水晶が連動しているのだ。


つまり、砲撃手が照準器から覗いて、目標物を砲弾に転写させてから

発射すると、砲弾は飛翔しながら、多少の誤差は修正して、目標物に到達するのだ。

{さすがに180反転して撃っても無理だが、30度ぐらいのズレなら自動的に修正してしまう}


「まあ、昼間しか使えませんけどね」

{この発言の半年後には、わずかな光を集めて見えるようにする

暗視用の魔法照準器が開発され、夜間でも使用できるようになる}


そして、なんといってもすごいにが、耳当ての上に取り付けられた

小さな魔力水晶ピラミッドの通信装置である。


通信距離はまだ5km程しかないが、1個小隊単位で隊員同士が通話できるのだ。


「お、あの竹船車は、好古殿かな」

ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、バシャ、バシャ、バシャ、

独特の排気音をかなでながら、近くの川から、開の世界でいう所の、

観光用の水陸両用バスのような乗り物が陸に乗り上げて来た。


そしてまだ、水がしたたり落ちる中、上部側面の扉が開き、

騎兵第1旅団の秋山好古大佐が顔を出した。


「好古殿、水漏れは、せんかったか?」


「おお、龍馬殿、開殿、こっちは水漏れもなく、水上でも想定通りの速度が出せましたよ。

そっちの魔法竹馬靴の性能はどんな感じですか」


「おお、良好じゃよ。もう一回やってみせるきに見ちょいてくれるか」

龍馬さんはそういうと、再び兜を被り、疾走しはじめる。


「おお、なんと、これが全部隊に供給されれば、全ての部隊が

騎兵としての作戦行動も取れそうですな」


前世では、騎兵隊の生みの親として、日露戦争でも、騎兵第1旅団、

秋山支隊として活躍した秋山好古大佐{前世では少将}が大喜びをしていた。


好古とは、弟の秋山真之を通して、知り合い、様々な意見を交わしながら、

世界最強と言われる、ロシア陸軍への対抗策を考えてきたのだ。


その集大成が、龍馬さんが実験してくれている魔法竹馬靴をはじめとする

個々の兵士の一騎当千化とそれを補強維持する竹船車だった。


竹船車は、前世のアメリカ海兵隊がもつ水陸両用車両AAV7よりも大きく、

観光用の水陸両用バスのような形をしていた。


一個小隊11名プラス整備看護兼任兵1名の計12名が寝られる

簡易ベッド{ヒーリング珊瑚付き}をはじめ、シャワーやトイレ、

ミニキッチンや弾薬製造装置{土を固めて、魔法弾を作る}まで

装備していて、食料を満載していけば、2週間は、単独で作戦行動ができるのだ。


しかも、側面にもう一枚の防護塀を張り出すこともでき、竹船車を横に並べれば、

2階から魔力機関砲や魔力砲が撃てる、強力な防衛陣地が完成してしまうのだった。


また、姉妹竹船車として、治療用ピラミッドが10台は展開できる医療竹船車や、

シャワーでなく湯船につかれる大風呂竹船車、故郷の人々と通話できる通信竹船車、

食道竹船車、タバコや菓子などが買える雑貨竹船車なども開発されていき、

前世のように兵隊を消耗品のように使い捨てるのではなく、

常に、万全の体力を維持して戦える体制を構築していくのだった。



****



一方のロシアは、義和団事件の後も部隊を増強して駐留し続けるだけでなく、

ウラジオストクに繫がるシベリア鉄道の短縮ルートとして、チチハル、ハルピン、

吉林、奉天、牛荘などを次々と占領し、着々と満州支配に動いていた。


明治35年(1902)、ついに日英同盟が締結され、日元国とイギリスが合同で、

ロシアに抗議することで、ロシアは渋々、満州からの撤退を約束した。


しかし、撤退は実行されないどころか、逆に明治36年には、

鴨緑江河口の龍厳浦に砲台を設置し軍事基地を作り始めただけで無く、

李氏朝鮮から、仁川近くの月尾島、巨済島近くの馬山を租借してしまったのだ。


欧米列強は強く反発し、特に同盟国のイギリスからは、一緒にロシアを

討とうという{実際は日元国にやらせる}密書が、

何度も首相宛に届き、新聞の論調も「ロシア討つべし」という風になってきていた。


そんな論調を抑えながら、開たちは、ひたすら、海軍の増強と陸軍の魔力竹式

機甲師団化を邁進していったのだった。


その結果、明治37年2月6日、日元政府がロシア政府に国交を断絶し、

日露戦争が始まった時には、前世よりかなりパワーアップした連合艦隊と

数的には、前世の半数だが、魔力竹によって機甲軍団化された陸軍が

出来上がっていたのだった。


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