045 赤坂離宮とピラミッド
「ここは何処?」
台湾から、緑色水晶を大量に積み込み、高速魔力貨物船で、沖縄により、
そこで今度は、魔力珊瑚ベッドを大量に積み込んでから、大阪に入り、
そこからは荷物と別行動で、寝台列車に乗り込んだ開は、
皇居に報告のため立ち寄るに当たり、
降り立った東京駅の壮大さに、思わず声を上げたのだ。
もちろん、昨日着いた大阪も、新淀川が開設されて、築港に大桟橋が出来ており、
さらには、大阪駅から乗った寝台列車もゆったりとした個室仕様で
かなり驚いたのだが、東京駅の変わり具合は、まさに浦島太郎状態だった。
前世では1914(大正3)に建設されるはずの東京駅だが、今世では、
すでに完成していただけでなく、{山手線が環状に繋がるのは更に遅い
1925(大正14)だった}山手線が複々線で2ホーム、上越線も複々線で2ホーム、
東北線も複々線で2ホーム、それに常磐線の複々線が2ホームが加わって
全部で8ホーム16番線の路線がズラリと並び、
しかも24時間運行が始まっていたのだった。
皇居{旧江戸城}で明治天皇に報告を済ますと、
二の丸に住む天照大神さまの元を尋ねた。
「開!久しぶりだな、外が見たいのじゃ、おんぶせい」
珊瑚ベッドに寝ていた天照大神さまが、上半身を起こしながら、
うれしそうに言った。
「はい、ただいま」開は素直に天照さまを背負うと庭に出た。
(また、細くなっている・・)
「台湾はどうじゃった?」
「ええ、天照さまの光のおかげで、人々もまとまりだして、
あらゆる分野で発展を、はじめてますよ」
開はまた軽くなってしまった、天照さまを気遣いながら、
台湾の発展の様子を説明していった。
(はやく、何とかしないと・・)
(やはり、麻衣の体に宿ったうえで、日元国だけでなく、
ハワイや台湾にまで、天上界の光を流す事に無理があるんだ・・)
本来ならば、天上界から、人々の営みを慈しみ、
信仰深き巫女などを通して、地上に光りを降ろす、日元国の女神が、
巫女だった海の妹の肉体を維持するために、その魂の一部を宿しているのだ。
その負担は相当なもので、日に日にやせ細っていくのだ、
今考えると、あれほど甘い物を大量に食べていたのも、
肉体維持の為だったような気がするのだ。{本人は何も言っていないが}
特に朝鮮半島で、麻衣の魂の一部が宿っていた金弘集の愛娘の苺様が殺され、
その意識の無い魂を匿って、光を流し続けるには、肉体に宿った天照さまには
相当にきつい様子で、少し動くと貧血のような症状を起こすのだった。
「すまぬなカイ、麻衣の肉体をこんなに細くしてしまって・・」
開になのか、それとも勾玉内の海に対してなのか、天照さまが力なく呟く。
「そんな・・、天照さまのせいじゃないですよ」
開は、勾玉内の海たちから、日元国では、大東亜戦争に負けて、
GHQに、それまでの日元神道に対する信仰心を無くすような憲法を押しつけられ、
その憲法を信仰した、政治家や国民が増えた結果、やがてクラゲのように
主体性のなくなった国になり、自分の利益のみを考える日元人たちが、
中華人民共和国に国を売り飛ばした話しを何度も聞かされていたのだ。
「いや、妾に、おごりがあったのじゃよ、黄色人種や黒人たちを魂の無い、
サルやゴリラの仲間と考え、植民地にして奴隷として扱う、白人どもに
怒りを感じてのう、アジアからなら、妾の力で簡単に追い出せると、
思うてしもうたのじゃが、よく考えたら、白人たちも、
地球神であられる天御祖神さまにとっては、かわいい子供になるんじゃからのう
今考えると、もう少し上手くやりようがあったはずじゃ・・」
「でも、天照さまが、立たなければ、500年続いた白人たちの植民地支配が
もう1000年は続いていたはずですよ。
天照さまの想いは間違っていなかったと思います。
それに大丈夫ですよ、天照さま。
今度は、ハワイや台湾{30年後に独立予定}も同盟国になってくれますから。
それに、キリスト教国であろうが、イスラム教の国であろうが、
親神は一緒だという信仰を持つ者には、魔力パスポートを創って配り、
龍馬さんの発案どおり、親神様一緒国同盟を結んでいきますから、
前回のようにはなりませんよ。
だから大船に乗ったつもりで、安心して、天照さまは、
体を直すことに専念してください」
「そうか、済まないな」
(泥舟だったりして)勾玉内の海が呟く
(うるさいわ!)
***
庭をおぶりながら、少し回ると、また疲れた様子なので、ベッドに戻して、
眠られた天照さまから離れると、開は皇居の隣の赤坂離宮に向かった。
元々、紀州徳川家の江戸中屋敷だったその場所は、前世では赤坂離宮とされて、
仮御所や迎賓館が建てられたが、今世では、その広大な用地に、
底辺が200m、高さは100mの巨大なピラミッドが建設中であった。
魔法エネルギー供給用巨大ピラミッドの建設。
これが、衰弱していく天照さまを救うために、勾玉内の海たちと
考え出した、最後の切り札だった。
ハワイから、1本30mの魔力溶岩杭を持ち込み、20m間隔で、121本打ち込み、
その上に20mのセットバックで、高さ20mの柱を81本立てて、2階部分を建設、
さらに20mのセットバックで20mの柱を49本立てて、3階部分を建設するという
やり方で、5階、100mの高さになるピラミッド型神殿を造っているのだ。
同じ広さで掘られた、地下には、魔力蓄電池設備や食料の下ごしらえ設備、
ゴミ分解設備や下水処理施設が完備され、
1階には、食料等の倉庫や、ここで働く一般職員の設備が完備され、
2階には、政府や要人たちと会議ができたり、パーティーができる設備、
3階には、春組25人、夏組25人、秋組25人、冬組25人の4組に分かれた
巫女さんたちの生活設備が完備され、
4階には、天照大神さまのプライベート空間が広がり、
最上階の5階が、祈りの空間になる予定である。
もし、魔法を使わずに、足場を組んで、鉄筋コンクリートで、
これ程の神殿を建設するとするなら、10年以上はかかるはずなのだが、
金剛組を中心に魔法を駆使して建設しているため、
半年で4階まで出来上がっているのだった。
「おお、開殿、戻られたのですか」
そのピラミッドの建設事務所を訪れると、建設主任の辰野金吾が声を掛けてきた。
「ええ、東京には、今朝戻って来ました、ただ明日にはまた、東北へ
行かなければならないんです。こちらの現場を全て辰野先生に
押しつけてしまって申し訳ありません。それでどんな感じでしょうか」
「ええ、順調ですよ、特に開殿が連れてきてくださった、金剛組の
魔法大工集団の方々がよくやってくれていまして、
こちらも大いに刺激を受けております」
イギリスに留学し、東京駅や日本銀行などの設計を行った、今注目の
建築士も、飛鳥時代の四天王寺の建設から続く、世界最古の宮大工集団の
金剛組の仕事ぶりには学ぶべき所が多いみたいで、上機嫌だった。
「そうですか、それは助かります。
それと、この台湾の魔法水晶も組み込みたいのですが」
開はそういいながら、ようやく量産の目途が立った、緑色魔法水晶を取り出した。
「おお、これが、感染症などの病気に効くという、魔力水晶ですか、
大丈夫です。日元、ハワイ、台湾の魔力水晶をバランス良く組み合わせて、
最高の磁場の神殿に仕上げて見せますよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
開はその後もピラミッド型神殿に付いての打ち合わせを辰野金吾先生と
夜遅くまで詰め、翌朝、天照さまと朝食を共にした後、
東北地方の冷害を未然に防ぐために、台湾の緑色魔力水晶を携えて、
上野駅ではなく、東京駅から出発する、魔力機関車に乗って旅立っていった。
2ヶ月に渡って、東北の農家への冷害対策のための緑色魔力水晶の
導入指導を終えて{実際は、月に1回は、夜間に飛行魔術で戻っていた}
赤坂に戻ってくると、もうすでに、5階と4階部分を先に完成したピラミッド神殿に
天照さまが引っ越しを終えていたのだ。
***
「これは・・」
魔力水晶をコーティングされたピラミッド型神殿は、太陽の光を浴びて
薄い金色に輝いていて、
倉庫や一般職員の設備がある1階部分に足を踏み入れただけで、
かなりの磁場と光を感じたのだ。
魔力エレベーターに案内されながら、職員に話しを聞くと、
倉庫に入れた食料が、時間が止まっているかのように腐らないのだという。
それだけでなく、ごく普通の味噌や醤油が、とんでもなくまろやかで、
おいしくなるのだという。
ガラス張りのエレベーターから見える、2階の会議室空間はまだ、
ほとんど出来ていなかったが、
3階の巫女さんの生活空間は9割方完成しており、
精密で透明な波動が感じられる空間になっているようだ。
原則、4階の天照さまのプライベート空間には、ローテーションで
お世話をする、少数の巫女さんたちしか入れないのだが、
開は特別ということで、別のエレベーターに乗り換え、
4階の謁見室のような所に案内された。
少し緊張しながら待っていると、巫女の服とも違う、十二単とも違う、
まさに天の羽衣のようなものを着た、天女のような天照大神さまが入ってきた。
(!!!なんていう圧倒的な光なんだ・・)
開は思わず跪き頭を垂れた。
「開、よくきてくれた、そなたには、本当にお世話になった」
霊力を戻された、天照大神さまの顔は、少しふっくらとしていて、
肉体的には、開{海}の妹の舞{麻衣}の顔なのだが、
その全てを包み込むような微笑みは、まさに女神の微笑みだった。
「もったいなき、お言葉です」
「開、妾は、この空間でしか自由に動けなくなってしまった。
そなたに負ぶさり、いろんな場所を旅して、いろんなスイーツを
食べた事がなつかしい・・・」
「また、行けますよ、麻衣ちゃんの残りの魂を見つけ出して、
天照さまの負担が無くなれば、また自由に動けるようになりますよ」
「そうだろうか」
「ええ、きっと行けます、いや絶対行きましょう」
「そ、そうか、そうだな、その時はまたエスコートを頼むぞ」
「はい、喜んで」
開の返事に、天照さまは、少し寂しそうな作り笑いから、
少女のような、とびきりの笑顔になった。




