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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
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042 やんばるの森と秘密基地と戦争の足音

すみませんおそくなりました。

それから、2年が経っていた。開はそのほとんどを沖縄北部のやんばるの森に

魔法でトンネルを掘り、秘密基地建設に費やしていた。


国頭村の新川川の河口に200m級の船が停泊できる桟橋や補給できる施設を造る一方で、

そこから、前世でいう、米軍の北部演習場になる地域に、トンネルを掘り、

やんばるの森の地下に、10階建てのビルに匹敵し5000人を収容出来る宿泊施設と、

200m級の軍船が5隻同時に停泊できるドッグを持つ巨大な秘密基地を、

土建魔法が得意な工兵隊と共に作り上げていたのだった。


前世では、航空機騒音で問題になる普天間基地も、まだ飛行機自体が

開発されていない{ライト兄弟が有人飛行に成功するのは1903}この時期は、

魔法で水路が整備された豊かな水田地帯になっていた。


そこを今から買い取るという事も考えられたのだが、

どうせなら最初から民間人に被害が及ばない地域に基地を作る事を

明治政府に提案したのだった。


それにトンネルを掘る、土木魔法は、鉱山開発のときに何度も使って

慣れていた事もあったが、それよりも開自身が、宇宙を舞台にロボットを操縦して

戦うアニメに出てきた地球連邦軍の地下基地に憧れていた事が大きかった。


「なんだか本当にマスクの少佐が赤い海坊主のようなロボット兵器で攻めてきそうだな」

開は、ほぼ完成した、駆逐艦なら2隻同時に停泊できる巨大な地下桟橋を見ながら呟く。


{後にこの地下基地は、10万人が収容でき、50隻が同時にドッグ入りでき、

さらには上部にも1000機の飛行機が、格納整備できて、トンネル内から、

発着できる設備を整えた、地下基地としては世界一の規模に発展していくのだった}


また、美海女の安室奈美子さんたちの活躍で、魔力珊瑚が、安定的に

供給できるようになったおかげで、治療用の魔法ピラミッドが

月産100台のペースで生産されるようになり、

価格も、この2年間で、10億円{現代の価格}から1千万まで、

コストダウンすることができ、日元国中の主要病院や、

軍艦の医療室に導入されつつあった。


ちなみに、あれから、喜屋武研究員が安室奈美子さんに猛アタックを続けて、

見事に彼女のハートを射止め、1年前に結婚{喜屋武研究員が婿養子に入った}し、

仲間美由子さんは、海軍士官に見初められて、半年前に東京で盛大な挙式を上げた。


さらには、19歳になった新垣結子ちゃんも、大阪の実業家から求婚されているようで、

すでに結納を済ませたのだそうだ。


そんな様子が伝えられ、沖縄珊瑚歌劇学校は、玉の輿を狙う?少女たちに大人気になり、

希望者が殺到しており、来年からは、こちらから勧誘するのではなく、

逆に入学試験を行うことになっていた。


(いい子たちだったよな・・)

開は、沖縄珊瑚歌劇学校の立ち上げ時に活躍してくれた3人全てが嫁いで行くことに、

娘を嫁に出す父親のような気持ちになってしまい、その寂しさをと悔しさ?を

ぶつけるように、地下の岩盤に強力魔法を放ち続け、驚異的なスピードで

秘密基地を造り続けていたのだった。


「精が出ますね」

巨大ドーム内に造られた桟橋に停泊している船から下りてきた

若い海軍士官が話しかけてきた。


「真之さん、いつ戻られたんですか」


「ここに着いたのは昨夜遅くですよ、しかし、凄い基地ですね」

秋山真之、前世では、後に東郷平八郎の参謀となり、

日元海海戦を勝利に導く天才参謀であったが、今世でも順調に出世していて、

24歳ですでに少尉に任命され、前世と同様にイギリスで建造された

二等巡洋艦吉野を引き取り、回航して来たのだ。


開とは、江田島{海軍士官養成学校}に開が、ハワイでのモノレールを使った

戦力の早期移動展開についての講義しに行った時に初めて知り合い、

その後、フランスで建造された、巡洋艦厳島の魔力防御等の改装時に再会して、

交流を深めていたのだった。


「イギリスから直接の帰国でしたっけ」


「いえ、呉には、一月前に戻ってたんですが、吉野の魔力改装にずっと

付き合っていまして、そのテスト航海で、ここに来たんですよ」


巡洋艦吉野は、前世では、4160tで、15.5センチ速射砲が4門、

12センチ速射砲が8門しかない軽装巡洋艦だったが、

速力が22.5ノットと快足を誇っていた。


それを今世では、秘密裏に魔力ボイラーに変更し、魔力装甲を張って、

さらに砲弾を魔法弾に変えた上に、同一口径にするために15.5センチと

12センチ速射砲を全て15センチ魔力速射砲に変更することで、

戦力強化を目指していたのだった。


具体的に言うと、魔力装甲を張ったため、排水量が4300tに増えたが、

動力を石炭によるボイラーから、魔力水晶による魔力ボイラーに変更したおかげで、

速力と航続距離が上がり{25ノットの高速で、1万キロの航行}さらに、

砲身を魔法砲身に、砲弾を魔法弾に変更したおかげで、

砲弾の飛距離が2倍で威力も2倍{砲速が上がったため}に上っただけでなく、

摩耗による砲身の交換などのメンテナンスが不要になっただけで無く、

石炭の収容室もいらなくなったため、その分食料や砲弾の搭載量が

これまでの2倍になっていたのだ。


「そうなんですか、それでテスト結果はどうですか」


「まだデータが出てないので、あくまでも私の私心ですが、かなり良好ですよ。

それに、航続距離や砲弾の砲弾の飛距離など、すぐに分かる部分だけでなく、

兵員たちの居住空間も増えて、ハンモックから、3段式ベッドに改善されたことで

疲労が軽減されているみたいで、疲労から来る様々なミスが減っています。

なのでいますぐ目には見えませんが、長期にわたって、かなり高度な作戦を

ミスなくスムーズに行えるようになってきますよ、きっと。

もし今後、清国と海戦になって、来年に竣工が噂される

巨大戦艦の定遠や鎮遠が出てきても、かなりの確率で彼らを追い回し、

打撃を与えられる、いい猟犬的な船になると思いますよ。

しかし、本当に戦になるんでしょうか」


前世と違い、この時期、日元国は朝鮮半島から完全に手を引いていた。


そのため、漢城に居座る、清国の袁世凱と対立しているのは、

日元軍ではなくロシア軍であり、大院君{清国袁世凱派}と閔妃{ロシア派}が激しく

政権を争っていて、戦争になるなら清とロシアではないかと考えられていたのだ。


(うーん、北京には、小村寿太郎さんが入っていて、開戦派の大鳥圭介さんを

押さえてるし、陸軍の方も、山県有朋さんが川上操六さんを押さえているから

大丈夫だと思うんだけどな。しかし、イギリスの動きが読めないなあ、

何か仕掛けてきそうなんだけど・・)


「うーん、戦争にならないように打てる手は打ってありますが、正直わからないですね」


「そうですか、あの巡洋艦秋津島の設計にも関わった、

天才魔法使いの開さんでも分かりませんか」


異世界から来たという素性は明かしていないが、

明治天皇抱えの大魔法使いということになっているので、

こうやって会う度に、今後の展望を聞いてくるのだが、前世と違い、

現時点では朝鮮半島に出兵していないので本当に先が見えなくなっていたのだ。


しかし、兵器の近代化などについては、今後出てくるであろう、

単一口径巨砲を中心線上にならべ、砲撃時に船体にかかる応力を減らして、

側面への一斉射撃ができる船艦{前世同様その先駆けになるイギリスの

ドレッドノートは1906年に出てくることになる}の話しなどは、時々していて、

来年、横須賀で竣工する国内初の巡洋艦、秋津島には、

開が説明した、その概念がかなり取り入れられており、

真之は、そんなアイデアの話しをする開を尊敬の眼差しで見てくるのだった。


そのたびに

(真之さん、それは違うから!こいつはカンニングしてるだけだから!)と

勾玉内の海が訴えていたが、その声が届くことはなかった。


「ええ、イギリスの動きが読めなくて・・。真之さん後で、ヨーロッパの

話しを聞かせてもらえますか」


「もちろん、喜んで」

その後、二人は夕食を共にし、様々な情報交換を行っていくのだった。



そして開が心配していた通り、イギリスが暗躍していた。


日元国より少し多い4000万人程の人口{当時}で、面積は日元国より少し小さい島国が、

世界中に植民地を持っているのである。


なので、その支配方法の基本体制は、東インド会社型の間接支配だった。


つまり植民地で反乱などの問題が起こった場合、極力、自分達の兵は使わずに

現地の傭兵を使う、すなわち現地人同士で殺し合いをさせるのだ。

現地人の命など気にもとめず、イギリスの利益のために、ただひたすら奪い取るのだ。


この当時の黄色人種や黒人への概念は、サルやゴリラの親戚という考え方が普通で、

清国と日元国を戦わせるのも、サル同士を戦わせる程度にしか考えておらず、

罪悪感などは、一切なかった。


イギリスの戦略としては、まず、清国と日元国のサル同士を戦わせて、

勝った方とロシアを戦わせて、アジアに進出してくるロシアの戦力を削ぐ事だった。


そのため、日元国には、真之が回航してきた吉野をはじめ、3717tの装甲艦扶桑、

2250tの比叡、4239tの巡洋艦千代田、高千穂3709t、浪速3709t、などを

どしどし、売りつける一方で、清国の北洋艦隊提督、丁汝昌の基には

ラング大佐を艦隊顧問として派遣して、数年に渡って、清国艦隊の

戦闘隊形や艦隊運動を訓練させていたのだった。


そして、1年後、開の心配していたとおり、海戦が起こるのだった。



***



開たちは、前世で起こった豊島沖での海戦を回避するため、

その方面には、日元国の艦船を近づけないようにさせていた。


ただ、それよりずっと南の済州島に逃れてくる半島からの難民の援護を

新高麗国政府より依頼されていたのだった。


そこに、イギリスの商船が清国の戦艦、済遠、広乙の二隻に追われるように

現れたのだった。



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