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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
4/55

004 再会そして初見、初耳?

水晶の鳥居をくぐり、2つの水晶の御門を抜けると、そこには

やはり水晶で造られた伊勢内宮にある正宮とそっくりの社殿が建っていて、

その前には、喜一郎じいちゃんと、父の勇一郎と母の美咲の姿があり、

少し離れた所に、やはり父の勇一郎と母の美咲、にそっくりな人達と

その横には、開にそっくりな青年が立っていた。


「お父さん、お母さん!」と叫びながら、母の胸に飛び込む舞。

「大きくなったな、開」「父さん、母さん」二人が抱き合う横で、

比較的冷静に向かい合う、父と息子の姿があった。


****


「実体化した体だって?それじゃあ、皆は・・」ボックス席に

1人で座る開が、向かいに座った海に質問する。


両親との再会にうれしくて興奮していた舞が落ち着いてきて、

互いに自己紹介した後、ゆっくり話をするために、

再び魔力列車に戻ってきたのだ。


「ああ、天照さまがそっちの世界に飛ばされた時の、

核攻撃で僕らは死んだんだよ。

本来なら、その時に魂も肉体と同様に粉々に砕け散って

消滅してしまうはずなんだけど、たぶん麻衣が、咄嗟に僕らの魂を

麻衣の勾玉に吸収してくれたんだろう」と向こうの世界の海が説明してくれる。


皆死んでいるという海の説明に開が絶句していると、

「いや父さんたちは、10年前の大震災の時にすでに死んでいて、

それから、ずっと勾玉に入っていたから」と、

通路を挟んで反対側のボックス席に座っていた、

向こうの世界の海の両親の勇太郎と実咲が、

どん引きするような補足をし、

その向かいでは、舞が母の美咲にまだ、ベッタリしている。


海の説明によると、10年前に海の世界の東日本の海岸沿いで、

大規模な地震があったのだという。

そして、たまたま東北地方の海岸にいた海達も、

急に押し寄せてきた津波に飲み込まれそうになったのだが、

そこで不思議なことが起こったのだという。


最初に、後ろの方にいた両親が津波に呑まれてしまい、

次に、海と妹の麻衣が津波にのみ込まれようとしたその時に、

先ほど津波に呑み込まれたはずの両親が突然現れて、海達を抱えたまま

10m以上も飛び跳ねながら、高台に運んでくれたのだという。


それから落ち着いて、話をすると、その二人は海達の両親ではなく

どうやら、時空を超えて、別の世界から飛ばされて来たということが

解ってきたのだが、どうやって元の世界に戻ればよいのかがわからず

そのまま、両親を亡くしてしまった海達と一緒に暮らしている所で、

今回の事件に巻き込まれてしまい、今度は、本当に

死んでしまったらしいのだ。


そして、気がつくと、開達の世界に飛ばされた、

麻衣の持っていた勾玉の中に魂が入っていて、魔力の充満している

この空間では、月読さまの力を借りて、実在化できているのだという。


「おおすごいぞ、ちゃんと物質に触れられるし、ケーキも食べれて、

ちゃんと味もするぞ、美咲も食べてみなさい」

実在化した、開と海の父親達が驚きの声を上げていた。


さらに斜め前のボックス席では、喜一郎じいちゃんと絹江ばあちゃんと

天照さまと月読さまが対面して、何か話していた。


そんな状況で、海が話してくれた、向こうの世界の歴史は、

開にとっては、非常に違和感を覚える歴史だった。


それは、登場人物が同じで、最初のストーリー展開も同じなのに

途中から徐々に開の知っているストーリーから変化していき、

ラストシーンに至っては、全く違う物語になるような感覚だった。


265年程続いた、徳川幕府が、坂本龍馬たち、幕末の志士たちの

活躍によって倒れて、新しい明治の時代が到来した所ぐらいまでは、

月本国とほとんど同じような歴史だった。


つぎに、日元国ではロシアの南下を防ぐため、李氏朝鮮を清国の

属国から独立させ、毅然とした国家にさせるために、清国と交渉し、

それが決裂したため日清戦争が起こり、

それに勝利して朝鮮を独立させてあげたという歴史も、

まあ、だいたい同じような感じだった。


そして、ロシア脅威論が現実となり、南下を進めるロシアを

食い止めるために、陸や海で激突した日露戦争。

これも、奉天の会戦でロシア陸軍を押し返し、さらに日元海海戦で

バルチック艦隊を壊滅させて、勝利したらしく、

ほぼ、月本国での月露戦争と同じ展開だった。


また、日清戦争で敗れた清の支配者階級の満州族が、

辛亥革命で成立した中華民国に追い出されたため、満州地方での

満州国の建国に力を貸すのだが、このあたりから開の世界の歴史と、

少しズレが出てくるのだ。


開の世界の満州国では、月本国が魔力を多用して、当時最先端の

インフラを整備してあげて、さらには、魔力水晶を使って、

人間の心根を読み取り、私欲の少ない人が

役人や政治家になれるシステムを構築してあげた結果、

清潔で、どんな人種にも公平な満州国が出来上がっていったのだ。


その結果、満州人だけでなく、モンゴル人や朝鮮人、

そして、なんとユダヤ人までが移民して来くるようになり

そのため、緯度的にもアメリカと変わらず、広大な満州国は、

多民族国家なのに差別のない国として、世界から認識されはじめ、

世界中から夢を求めて、多くの人が移民し、

さながら開拓時代のアメリカのような活況を呈していったのだ。


もちろん、それをおもしろくない目で見る、白人国家はかなり多かった。

なぜなら、彼らの持つ植民地では、黒人や黄色人種をゴリラやサルの仲間と

認識していて、家畜と同様の奴隷として扱っていたからだ。


もし、月本国に続いて、満州国という自由な黄色人種の国が出来てしまったら、

彼らの植民地と奴隷政策が根底から崩れていくからだ。


その危惧から、白人中心の国際同盟は、月本国が提出した、

人種差別撤回条例案に集団で反対して、採択すら行わず、

その法案を握りつぶしてしまったのだ。


それに憤慨した、月本国が国際同盟を脱退して、新たな国際連盟を立ち上げ、

さらに、アジアやアフリカの植民地の独立を促す宣言をすると、

それは、世界秩序を乱す行為だとして、ほとんどの白人国家が

月本国に対して宣戦布告を行い、国際同盟対国際連盟

(実際は白人国家連合対月本国)の戦いが行われたのだった。


それは、太平洋、インド洋、大西洋で、白人連合艦隊と月本国が

戦うという、まさに世界大戦で、どう見ても月本国に不利な海戦であり、

これで月本国も滅びるだろうと思われたのだが、

大方の予想に反して、なんと月本国が圧勝したのだった。


その理由は、月本国が、ガソリン機関より優秀な魔力水晶モーターを搭載した

戦艦、空母、戦闘機を有し、魔力銃器を使用していただけではなく、

東南アジアの人々や、インドやアラブの人々、そしてアフリカの人々が、

食料をはじめ陰ながら様々な援助を月本国にしてくれたからだった。


その結果、多くの有色人種の国々が独立していき、今では多くの白人国家も、

過去の植民地政策を反省して、国際連盟に加入していて、世界中の

人種差別も、かなり減ってきているのだった。


「すごいな月本国は、白人国家連合相手に一歩も引かずに戦って勝ったのか」

途中から、聞き役に回った海が、素直に驚く。


「ああそうだけど、ごめん、途中から、こっちの世界の話ばっかりしてしまって、

そっちは満州国の建国を助けた後、どんな感じになったんだい?」

いつの間にか、自分がしゃべっていたことに気づいた開は、

あわてて、海に話を振った。

開に促されて、海が話してくれた、日元国のその後は、壮絶なものだった。


月本国と同様に日元国も、当時白人至上主義の国際連盟で非難され、

国際社会から孤立していった事。


さらに、共産主義勢力の陰謀により、盧溝橋事件から、泥沼の

日中戦争へと突入していった事。


そして、日元国が掲げる

「共産主義、社会主義から自由主義を護る」ことと

「人種差別に基づく侵略からアジアを護る」ことと

アジアの同胞と力を合わせて共に栄えていくために

「大東亜共栄圏の建設」を宣言したことに、白人達の嫉妬と、

ソビエト社会主義共和国連邦の工作員たちの活動に踊らされた

アメリカ主導による経済封鎖、俗に言うABCD包囲網が形成されて、

日元国の経済がボロボロになってしまい、日元国の首脳部は、

やむにやまれぬ気持ちでアメリカに開戦し、大東亜戦争に突入した事。


それから4年に及ぶ戦いを繰り広げたのだが、日元国には、

月本国のような魔力水晶を利用した、銃器やモーターなどは無く、

白人と同じようにガソリンや重油を燃料とした、内燃機関の

船や飛行機を使ったため、それらの燃料をはじめ、

様々な資源が不足していく一方で、

陸軍と海軍がバラバラに戦ったり、軍の組織が硬直化して、

適材適所の人事ができなかったり、上層部が自己保全に走って、

様々な作戦で様々な失敗を重ねていき、

ほとんどの船や飛行機と、多くの人材を失っていった事。


そして、B29という大型爆撃機による無差別爆撃で、

日元国の都市は焼け野原になり、多くの市民が殺された事。


さらに沖縄が占領され、広島や長崎に原子爆弾が投下されて

残念ながら、日元国は降伏した事。


その後はGHQ(占領軍の司令部)によって、とても主権国家とは思えない、

憲法を押しつけられ、さらに東京裁判という名の集団リンチが行われて、

{この戦争は、日元国が、アジアに侵略戦争をしかけて、

アジアの人々を殺しまくった侵略戦争であり、

白人連合がそれを救ったんだ}というような歴史の改ざんが

行われた事。


さらに、GHQに押しつけられた憲法と、それに基づいた学校教育よって、

これまで日元人が連綿と信仰していた日元神道を中心とした宗教を

日陰のものとして蔑み、日元国民の天照大神への信仰心を奪い去って

日元国は、信仰心も主体性も無い、クラゲのような国家へと、

転落していった事。


そう言った洗脳教育が行き渡り、戦後70年を超える今では、

天照大神あまてらすおおみかみが読めずに、

天照大神を(てるてるだいじん)と、真面目な顔で読む若者も多くなり、

無神論の唯物論国家へと、転落しつつあるのだという。


そんななかで、2009年に毎朝新聞等の世論操作によって、

民々党の鳩屋魔はとやま総理が誕生するとすぐに、

小馬鹿おばしか幹事長が400人の朝貢団を連れて中華人民共和国へ渡り、

高速鉄道や、IT技術の無償供与等を含む、

5兆円もの円借款を締結したのだそうだ。


さらに、2011年3月11日に東日本大震災が起こると、当時の民々党の

悪缶あかん総理は、放射能漏れの恐怖に総理と一緒に東京を逃げ出した、

アメリカ軍に変えて、中華人民共和国の人民解放軍に援助を要請し、

そのまま沖縄や横須賀のアメリカ軍基地に駐屯させたのだった。


その後も、毎朝新聞等の世論操作のサポートのもと、

民々党は政権を担い続け、2015年に中国系の女性党首、

蓮暴れんぼうさんが総理大臣に就任すると、すぐに

日米同盟を解消して、代わりに中日同盟を結んだのだという。


その同盟内容は、とても同盟とは呼べず、ほとんど日元国を

中国の属国化するための条約だったのだが、機密保持の名目で、

同盟が締結するまで、一切、国民には条約内容が開示されず、

2016年に中日同盟が正式に締結された時には、

もう属国化への道から後戻りできない状況になっていたそうなのだ。


「そんな、バカな、だいたい国民がそんな政党に投票するはずないじゃないか」


「いや、2009年以降、中国からの不法移民が増加し続けて、

2015年には、毎朝新聞等の援護報道で、その不法移民達の日元国への定住が

合法化されてしまい、2016年には、3000万人もの中国共産党員が、

日元国に定住して日元国の選挙権を持つようになっていたんだよ」


「それって、日元国が乗っ取られたってことか」


「まあ、そういうことになるかな、国会議員だけでなく、

地方自治体の議員にも大勢の中国系議員が入り込んで、

次々に元からいた日元国民には不利で、新しく移民して来た

中国系住民には有利な法案が可決されていったんだから。


だから、僕らは最後の砦として、日元国を憂う保守系の人々に

伊勢神宮のある、伊勢市に引っ越してくる事を、ネットで呼びかけたんだよ。


そして、それに答えて、全国から、日元国の将来を憂う人々が、

大勢、伊勢市に引っ越してきてくれて、先月の市長選挙と市議会選挙では、

保守党が圧勝したんだよ。そしたら・・」


「核ミサイル攻撃か・・」

あまりにも、衝撃的な話を聞き、開はそれ以後、言葉が出なかった。


「天照さま大丈夫ですか」喜一郎じいちゃんの大きな声に開たちが振り向くと

向こうのボックス席で、天照さまが座席から崩れ落ち、

月読さまと絹江ばあちゃんが、介抱している様子が見られた。


天照さまは、巫女さんが持って来てくれた水を飲むと、

少し落ち着いたようで、

「ああ、ちと、力を使いすぎてしまったみたいじゃの、すまぬの、

でもおかげでなんとか、麻衣の魂を見つけたぞ」とつぶやいた。


瀧原宮に集まる膨大な水晶魔力と、天照さまの能力をフルに使って、

日元国を調べた結果、向こうの世界の海の妹の麻衣の魂は、

核爆発の衝撃でも消滅はしておらず、7つの魔力華チャクラに千切れて、

150年ぐらい前の時代に飛ばされていることが判明したのだ。


「それって、放っておくとどうなるんですか」海が心配そうに尋ねる。


「それぞれ親和性のある魂に、魂のかけらが憑依している状態じゃからのう、

おそらく、時間が経てば、吸収されて、その魂の一部分になっていくんじゃ

ないかのう」


「魂としての麻衣は、無くなってしまうっていうことですか」


「まあ、そういうことじゃろうのう。もちろん記憶の一部として

取り込まれるはずじゃから、少しは残ると思うんじゃが」


「それって、かわいそう・・」舞がつぶやく。


「なんとか助ける方法はないんですか」


「あるには、あるが・・」


「どんな方法なんですか、教えてください」


「まあ、単純な事だよ、誰かが、その時代に跳んで、

実際に麻衣の魂が憑依している人物に会って、医療魔術を使って、

麻衣の魂を回収してくるしかないのう」


「俺に行かせてください」海が名乗りを上げるが、

天照さまが静かに首をふる。


「海さん。残念だけどあなたには無理よ、あなたの肉体は消滅しているのよ。

魂のまま、人の前に現れても、ほとんどの人には、見えないわ。

かといって、私のように物質化するには、主天使クラスの光魔力が必要なの」と

月読さまが諭すように、話す。


「でも、でも・・」がっくりと肩を落とす、海の向かいで、開が立ち上がる。


「俺が行きますよ。別の世界の人間だと言われても、俺には、麻衣ちゃんが

舞にしか見えない、いや、双子の妹だとしか思えない。

それに、海の話を聞いて、日元国がかわいそうで、

どうにかできないのかって思ってたんですよ。

だから麻衣ちゃんの魂が150年前にいて、それを助けに行くんなら、

ついでに、歴史の流れを少しでもいいから、

よい方向に変えられないかなって思うんです」


「歴史の流れを変えるったって、そんな簡単には・・」

海が心配そうにつぶやく。


「わかってる。でも、歴史って多くの人々の思いと行動によって

造られて行くんだろう。

なら、キーパーソンになる人々の思いを、少しずつ変えていけば、

なんとかなるんじゃないかなって」


「お兄ちゃん、人の思いを変えるのって、そう簡単にはいかないんじゃ・・」

舞がつぶやく。


「うん、だから天照さま、天照さまが、さっき僕にやってくれた、

みたまと魔法華の接続コードのヒーリングのやり方を、

どうか僕に教えてもらえないでしょうか、憎しみを捨てて、

愛を取れる人が増えれば、歴史を少しは、変えられるかもしれない」


「うーん教えてもよいが、お前の今の魔力量じゃ無理じゃぞ、

月本国じゃどうか分からんが、日元国でコードヒーリングが使えたのは、

日元武命、聖徳太子、空海など、ほんの一握りじゃったからのう」


「その人達って、セブンズ・セブンの人ってことですか」

7色系統全ての魔法力で、日々の魔力創造が1000万MPを超える

伝説のゴールドマスター、現在の月本国には、存在していない

伝説の魔力量保持者しか、使えないと知り、開がガッカリしていると、

天照さまが、

「心配するな、わらわが付いていってやるぞ」と爆弾発言をした。


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