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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
36/55

037 ホノルル港の攻防

パールハーバーを艦砲射撃した19隻のアメリカ艦隊の内、

ジョンソン司令官の乗る旗艦を含む10隻は、パールハーバーへの上陸は部下に任せ、

本命のイオラニア宮殿の制圧及び、王家の束縛に向けて、真夜中の海を

ホノルル港に向かっていた。


「閣下、パールハーバーのサル共が、焼き尽くされる所を

見なくてもよかったのですか?」


「構わんよ、サル共の死骸など、これから向かうホノルル港で、いくらでも作れるさ。

それより、早くハワイのサル王の公開処刑と、あの気の強い王妃ザルが、

奴隷として引きづられ、絶望して泣き叫ぶ姿を見てみたくはないかな?

ああ、そうそう、日元国のサル王子と婚約したとか言う、メスザルは、

兵士達への褒美の一つとしよう」


「おお、それは名案ですな、我々白人に刃向かったサルがどうなるか、

よい見せしめになるでしょう」


「閣下、上陸準備、整いました」


「よし、作戦開始だ。サル共を皆殺しにしろ」


ホノルル港の沖合から、港へ真っ直ぐ進む艦船の内、前衛の5隻は

イオラニ宮殿のほぼ正面にある王族専用の桟橋に停泊中の2隻の

王族専用船に砲撃を加えながら、左に旋回して、

商船の停泊する、ダウンタウンの桟橋に殺到した。


パールハーバーと違い、今回は小舟を使わずに桟橋に直接接岸し、上陸するのだ。

{密かに、アメリカの商船が普段使う桟橋を空けさせていた}


「5隻とも接岸確認、海兵隊の上陸成功の合図確認しました」


しばらくすると、倉庫街から火の手が上がりはじめた。

{もちろん、事前に密約済みで、アメリカ資本の倉庫には指一本ふれず、

燃えだしたのは、ハワイや日元国資本の倉庫のみだった}


「作戦は順調みたいだな」双眼鏡を使い、ハワイ資本の倉庫群が

燃え上がる様子を満足そうに見ていたジョンソン司令官が呟く。


「閣下、そろそろ最後の詰めを」


「そうだな、よし、全艦前進せよ。サル王狩りに行くぞ」


「 「 「 おお! 」 」 」


400人の海兵隊を満載させた、最後の5隻の艦隊が、

先ほどの砲撃で破壊された船の横を抜けて、

王族専用の桟橋に接岸する体制に入っていった。


***


「く、間に合わなかったか」

密林を抜けて、ホノルルの町並みが、遠くに見えて来たとたん、

港付近から、火の手が上がっているのが見え、角刈りの大佐が呟く。


「いえ、宮殿からの救援信号弾は、まだ出ていませんから、ギリギリ間に合ってますよ。

2号作戦でいきましょう」


(大丈夫、イオラニ宮殿には、西郷さんや龍馬さんが、精鋭20人と詰めているんだ、

そんなに簡単には落ちないさ)

開を落ち着かせるように、勾玉内の海が励ましてくれる。


2000人の海兵隊に対し、訓練兵を集めても、400人程にしかならない開たちは、

少ない戦力を集中運用して、各個撃破していく作戦を立てていた。


まずは、真珠湾に上陸してくる700人の海兵隊を、

新兵器の魔法迫撃砲の集中運用と、400人全ての兵による白兵戦によって

迎え撃つ作戦を立てた。

{実際には、砲撃のみで、壊滅に追い込んだため、白兵戦をせずに済んでいた}


次に、モノレールという、この時代の陸上輸送機では、鉄道に継ぐ

高速移動機を開発して、真珠湾で使用した迫撃砲や400人の兵士を

そのまま、ホノルル港に移動して戦うのだ。


このモノレールによる移動のおかげで、計算上は、400人の兵士が

倍の800人に増えた事になる。


さらに、陸奥さんたちが入手してくれた情報によると、ホノルルで戦う

海兵隊は、市街地の倉庫を焼き討ちする部隊と、直接宮殿に向かう部隊に

分かれて上陸する計画だという。


ならば、モノレールで上手く移動すれば、分断している敵の部隊と

同数で戦うことができ、そこに勝機も見えてくるはずだというのが

開たちの考えだった。


これは織田信長が、10倍以上の今川軍と戦う時に、桶狭間という

狭い地域に奇襲を掛け、桶狭間に限っては、織田軍の方が多いという

体制に持っていった戦い方。


あるいは、ローマのカエサルが、10倍以上のガリア軍と戦った時に

戦車{馬に2輪の荷台を引かせて移動する乗り物}を使って

戦車で掛け巡り、一時的にローマ軍の方が多い状態に持っていった

アレシアの戦いに似ていた。


開たちは、もし敵が上陸してくる前に、ホノルルに到着できたなら、

1号作戦として、桟橋付近まで、モノレールで近づき、上陸を阻止する

作戦を立てていた。


もし、すでに上陸されていて、倉庫に火を付けられている状況なら

2号作戦として、海岸から一本内陸に入った、前世では、

キングストリートと呼ばれる道路脇に密かに造っておいたモノレールの軌道を通って、

街に入り込んだ敵を牽制しながら、イオラニ宮殿に向かう計画を立てていたのだ。


「いや、市街地に入った敵の部隊の足が意外に早そうだ。

このままでは宮殿前で、合流されてしまうだろう。

なので、3号、いや2号と3号を混成した2号改作戦がいいのではないか」

並行して走るモノレールから教導隊の隊長としてハワイに来ている

元新撰組三番隊隊長、斎藤一さんが提案してくる。


「2号改作戦ですか、でも戦力の分散は・・」


「はは、開くん。最初に一斉射撃で、3射ほど砲撃してもらえば、

後は我が小隊を含んだ5小隊ほどで対処するよ。

モノレールは残さないで構わないさ」


「わ、わかりました。ご武運を」


前世では、後に公園{アアラパーク}になる森を抜けて川を渡り、

街に入ると、モノレールは速度を落としていった。


そして、イオラニ宮殿から500mの所まで来ると、3射ほど砲撃し、

側面の防御板を倒して、滑り台のようにして、斎藤さんをはじめ

11人×5小隊の55人が、宮殿に向かう道を塞ぐように降り立った。


「斎藤さん、危なくなったら撤退してくださいね」

開がそう助言するが、斎藤はそれを聞き流すように、

昔、田原坂の戦いで、見せたゾクッとするような微笑みを浮かべ

「野郎共、日頃の特訓の成果を見せて見ろ、殿は我が隊が務める、

いいか、一歩も引くなよ」


「 「 「 おお !」 」 」


(ちょっと、人の話を聞けよ・・)


開の心配をよそに、前世で言う、ビショップストリートとの

交差点に陣取った斎藤の小隊を殿に、前衛と後衛がそれぞれ2小隊ずつ

ビーチストリートとフォートストリートの交差点付近に陣取り、

バラバラとやってくる海兵隊を片っ端から撃退していった。


「な、なんなんだこいつら、銃が効かねえ」


「いや、あの盾みたいなもので跳ね返えされてるだけだ。

接近して剣で刺し殺せば・・。がは」


ハワイ軍は、11人で小隊を組み、魔法盾で防御しながら、

魔法銃で攻撃し、それを抜けて接近して来た敵には、

魔法小銃に取り付けた刀で突くか、日元刀で叩き斬ると言う、

人間将棋、こちらではサムライチェスと呼ばれる動きをずっと

訓練して来たのだ。


「ふん、ぬるいわ、これじゃ、サイトウ隊長との模擬戦の方がよっぽどキツかったわ」


斎藤の教導隊に日夜、鍛えられていた、4つの小隊は、時には数十人単位で

襲って来る海兵隊に、一歩も引かずに戦っていた。


そして、その4つの小隊を、なんとかくぐり抜けて、イオラニ宮殿に

向かおうとする海兵隊員も、最後に待ち構える、

斎藤一が率いる教導小隊によって全て、斬り伏せられていくのだった。


ダウンタウンに上陸した400人の海兵隊が一斉に襲いかかれば、

どうにかなったかもわからないが、

最大でも数十人単位で襲いかかったのでは、

斎藤に鍛え抜かれたハワイ軍の敵ではなかった。


アメリカ海兵隊400人対ハワイ軍55人の戦いは、

1時間余りで、ハワイ軍の完勝となったのだった。



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