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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
33/55

034 日布神道とビッグ5の焦り

配信が1週間飛んでしまって、すみませんでした。家族サービスで、旅行に出かけて、

旅行先で書こうと思っていたのですが、うまくいきませんでした。


「これでどうですか」


開が、ハワイ島のキラウエア火山の溶岩から、魔法で少し青い

サファイアか、アクアマリンのような水晶を生成して、

そのブルー水晶に、魔力を注入してから、一緒にハワイに赴任していた

からくり儀右衛門こと、田中久重の研究室の若手研究者に渡す。


「じゃあ早速、測定してみますね。おお、いいみたいですよ、開さん。

レベル3の魔力が充電されていますよ」

研究者が興奮気味に魔力の測定結果を報告してくる。


***


カイウラニ王女(10歳)と、山階宮定麿親王(8歳)の

電撃的な婚約発表から、5年が経っており、

この5年間で、ハワイの経済は大きく変革されていた。


まず最初に、行われたのは、日元神道とハワイのパパハナウモク女神への

信仰が合わさった、日布神道神社の建設だった。


新・咸臨丸で運ばれて来た機材を使って、宮大工達が作り上げた日布神社は、

朱色ではなく、ターコイズブルーの鳥居が立っていて、

その鳥居をくぐった奥に、どことなくハワイ的な神殿が建立されていたのだ。


そして、神殿の奥にある祭壇には、大きな円鏡を胸に掲げる、

目を伏して微笑む女神の像が安置されていたのだ。


どうやら、円鏡が天照大神さまを表し、それを掲げる女神が

パパハナウモク女神なのだという。


さらに、驚くことに日布神道を信仰し、日布神社で祈願を受けて、

天照さまや開、そしてカイウラニ王女や山階宮定麿親王から

チャクラキレートを受けると、ハワイの現地人は基より

移民してきた日系人までもが、魔法が使えるようになるのだった。

{天照さまや、山階宮さまは、大祭などが在るときのみで、

普段は、開やカイウラニ王女が1日1回、まとめてキレートを行っていた}


魔法使いになると、ランプや薪を使わずに、日元国から持ち込んだ、

魔力コンロや、新無尽灯などの、様々な魔道具が使えるようになるので、

多くのネイティブハワイアンの人達が、キリスト教から、

日布神道に改宗して、魔法や魔道具を使い始めたため、

ハワイの生活水準が急激に上がっていったのだった。


特に、白人たちによって持ち込まれた伝染病で、推定12万人から

8万人にまで減っていたオアフ島のネイティブハワイアンの人口減が、

多くの人々がヒーリング魔法を使えるようになったことで、

持ち直しはじめて、一昨年からは、逆に人口増に転じたのだという。


また、魔法具には、切削機や杭打機などの建設機械も

持ち込まれつつあったので、それらを使って、

急速にハワイのインフラを整備していったのだった。


最初に整備したのは、上下水道だった。


まず、オアフ島から少し離れた、ハワイ諸島最大の島、

ハワイ島のキラウエア火山から、流れ出ている溶岩を、

魔力耐火煉瓦を使った溶岩路を流して回収して、

{パパハナウモク女神から、火山のペレ女神に連絡が行っていたようで

すんなりと、溶岩が流れ込んでくれた}精製する工場を作り、

溶岩から、下水管をはじめとする各種の管や柱などを

大量に作れる体制を整えたのだった。


もちろん、溶岩で精製されたパイプや柱には、

魔法が使えるようになったネイティブハワイアンの作業員が、

強化魔法をコーティングしているので、

日元国の魔法コーティング材木と同様に、

鉄の10倍以上の強度を持ちながらも、

3分の1の軽さで、しかも日々に流れ出てくる溶岩が原料なので、

超低コストで資材が調達できるようになったのだった。


また婚約時に、山階宮定麿親王からカイウラニ王女への結納金として

贈られた現在の価格で1兆円もの、お祝い金の存在も大きかった。


そのお祝い金を基に、ハワイ王家が筆頭株主となる、

ハワイ国営銀行が創設され、ハワイ円通貨の発行{1円=1ハワイ円}は基より、

様々な分野のインフラの建設に、長期資金を貸し出したため、

ハワイ中に白人資本の入らないお金が、回り始めたのだ。

{これまでは、プランテェーション農業を営む白人階級の資本が

必ずと言っていいほど入り込み、ハワイ経済を牛耳っていた}


ハワイ政府は、その資金を借りて、溶岩魔法パイプを造り、

ネイティブハワイ人を雇って、上下水道を作ったのだった。


さらに、ハワイ語で、{水の湧くところ}という意味のワイキキは、

湿地帯であったため、蚊が大量発生していたのだが、

ここもハワイ国営銀行から開発資金を借りて、現地の人々の力のみで、

大量の魔法溶岩杭を打ち込んで、前世{1920代に埋め立て}より

数十年も早く、埋め立てられていったのだった。


そのため、前世では、アメリカの大手ホテル郡や、

アメリカ資本のショッピングセンター郡と

アメリカ陸軍の保養センターがワイキキのほとんどを占めて、

ネイティブハワイアンの人たちの町とは、隔離されるように

数本の橋だけで、繫がっていたワイキキビーチだったが、

今世では、ネイティブハワイアンたちの資本と、

日元国の技術提携によって建設された、

ハワイ国と日元国が融合した、不思議な感じの、

しかしどことなく懐かしい、リゾートタウン・ビーチが

いくつもの橋で繫がり、発展していくことになるのだった。


話しを戻すと、魔法{魔法道具}を駆逐して建設したため、

たった5年で、ダウンタウンの下水道普及率は100%に達し、

ハワイ国での伝染病の発生が激減したのだった。


さらに、この5年で農地の土壌もかなり、改良されていた。


元々ハワイの土地は、水捌けが良すぎるため、

あまり水田には向かなかったのだが

{水田は、先ほどのワイキキの湿地帯に少し作られていた程度}

魔法コーティングされた溶岩板を敷き詰めることで、

水捌けをコントロールできて、

水を溜められるようになり、ワイキキの湿地帯以外でも

稲作が出来るようになったのだ。


さらに、そこに取り付けた魔力水晶に、

定期的に成長促進魔法を注入することで、

肥料を入れなくても、たわわに作物が稔るようになり、

その結果、ほとんど農地を休ませることなく、

稲と麦の2毛作などが出来るようになったのだった。


そのため、ほぼ輸入に頼っていた米と小麦がハワイでも自給出来るようになり、

{ネイティブハワイアンの主食はタロイモなのであまり関係なかったが、

日元国からの移民した人々には好評だった}

今年からは、日元国から取り寄せた麹菌を基に

ハワイ米酒の製造も始まったそうだ。


その他にも、大豆や大麦などの栽培も順調らしく、

やがてはハワイ産の味噌や醤油、それに

ビールやウイスキーなども作られるようになりそうだった。


ただ、肥料の代わりに魔力を注入する魔力水晶は、

1アール当たり、20個は必要で、その魔力水晶は

これまで日元国でしか作る事が出来ず、

全て日元国から輸入していたため、

かなりのコストが掛かっていたのだが、

先ほどの研究開発の結果、ようやくハワイ島の溶岩から、

人工魔力水晶を創り出すことに成功したのだった。


このハワイ産の、少し青みがかったブルー人工魔力水晶は、

魔力充電量が、それほど多くなく、レベル3のため、

中級レベルの魔法具にしか使用できないのだが、

原料自体がハワイ島からあふれ出る溶岩なので製造コストが非常に安く、

後にハワイの輸出品の代表品に成長していくのだった。


また、ハワイ政府は、次の時代の人材を育てるために

教育事業にも力を入れていた。


結納金として贈られたお祝い金1兆円{現在の貨幣価値に換算して}のうち

2000億円もの資金が投入され、日元国の教育システムを基に

ハワイ国オリジナルの教育システムが動きだしていたのだ。


すでにこの5年間で、100校もの小学校が開校しており、

中学校も、一昨年に20校が開校していた。


さらに来年には、高校が2校同時に開校予定であるという。


そこで教える教員自体はまだ、ほとんどが日元人だが、

現在日元国へ留学しているネイティブハワイアンの学生達が戻ってくれば、

これからは徐々にネイティブハワイアンの教員が増えてくることになるだろう。

{新・咸臨丸より、2回り大きい全長70m、全幅15m、

最大速が30ノット(50km/h)の新・咸臨丸Ⅱシリーズが14隻も建造され、

日元国(横浜・神戸を交互に)とホノルル間を、毎日運行していた。

新・咸臨丸は、オアフ島やハワイ島を結ぶハワイ国内の航路へ就航していた}


そして、4年後にはハワイ大学の開校を目指しており、

そのハワイ大学が卒業生を出す、8年後には、

ハワイの土地でハワイの教育を受けた

ネイティブハワイアンが教壇に立つ予定であった。



開たちは、ハワイ島の東側ヒロの町から40kmほど離れた、

キラウエア火山の溶岩が海に流れ込む、近くの土地に来ていた。

{この一帯は、日元国でいう、八幡製鉄所のある北九州工業地帯のような、

ハワイ国、随一の工業地帯になりつつあった}


ここには、まず溶岩を精製分離して、鉄やガラス・水晶、

{ガラスと水晶はケイ素が結晶化されているかどうかの違い}、

そして杭や下水管などのコンクリートに近い成分に

分類する工場が建設されていた。


次に、魔力水晶やガラス、鉄製品や、コンクリート管を作る工場があり、

さらに、まだ、開発されて3年しか経っておらず、日元国でも、

東京や大阪など10工場ほどでしか製造されていない、

魔力エンジンを造る工場が建設されていた。


魔力エンジンとは、後に開発される魔力モーターが出来るまでの

つなぎの技術で、シリンダー内で魔力爆発させることで、

ピストンを動かして、回転力を得る機械である。


ようは、前世でいうガソリン・エンジンのガソリンの替わりに

魔力を使っている内燃機関であった。

{魔力を回転力に変える伝導率が50%程なので、

後にほぼ100%、魔力を回転力に変える事が出来る、

魔力モーターが開発されると使われなくなっていった}



開はその魔力エンジンが付いていつ乗り物に、

先ほど魔力注入に成功した少し青いハワイ産魔力水晶を取り付けて、

研究者と一緒に乗り込んだ。


その乗り物は、車ではなく、前世の日元国の開が住んでいた

紀伊半島などを始め、山間部で使用されていた、

農作業や建設資材用のモノレールだった。


なぜ、鉄道ではなくモノレールなのか?

それは、ハワイの人口の状態と、建設費、

白人資本への依存を減らすための戦略だった。


モノレールは、鉄道と違い、40°の急勾配でも走行できる、

しかも、ラックの付いた角材レールを

{溶岩抽出鉄で造られ魔法コーティング済み}

1本引いておくだけで運行できるため、建設費が安いのだ。


また、将来ハワイの人口が増えたとしても、

前世の日元国の東京モノレールや大坂モノレールのように

車両を大型化すれば、鉄道ほどではないが、

大勢の乗客を運ぶことも可能であった。

{そのため、レールは20cm角と少し大きめになっていた}


「行きますね」とキーを回すと、ドッ、ドッ、ドッ、ドッと、

2気筒の魔力エンジンからエンジン音が聞こえ出す。


前進3速、後退1速のシフトを前進1速に入れると、

人が歩くような速さでゆっくりと進み始めた。

それから、2速(早足程度)、3速(ジョギング程度)の速度を試した後、

溶岩の流れ込む海岸の方に向かって伸びる、傾斜角が40°以上ある

観測用レールを昇ってみた。


「おお、性能的にも、日元国製と変わらないレベルですね」


「これで、レール、エンジン、魔力水晶電池の全てをハワイ国産で

まかなえる乗り物が完成ですね」


この純ハワイ産モノレールシステムの完成により、オアフ島では

後に、前世のフリーウエイ区間だけでなく、

ハレイワやワイアナエなど全ての町が、

複々々線の大型モノレール線で結ばれるだけでなく、

小さな村や路地にもレールが引かれ、

個人用モノレールが数多く運用されることになっていくのだった。


これが、後に「ハワレール」と人々から親しみを込めて呼ばれる

庶民の乗り物へと発展していくのだった。

{別のレールに移る切り替えポイントは、最初は手動だったが、

後に魔道具で自動切り替えができるようになったそうだ}


***


「くそ、なんなんだ、あの日元国のイエローモンキー共が持ち込んだ

日布神道とかいう宗教は!信仰すれば魔法が使えるだと、ふざけやがって

それは、魔女を生み出すって事だろ!宗教裁判に掛けて、全員、火あぶりに

してやる」


「落ち付けドール。今や、ここの土人{ネイティブハワイアン}どもの

ほとんどが日布神道に改心している。やつらを火あぶりにするということは、

街全体を焼き払う事になってしまうぞ」


「それに、奴らが使う魔道具とやらは、驚異だぞ、

油も使わずに光るランプや、薪も使わなで煮炊き出来る道具もあるそうだぞ」


「いまいましいサル共が、これでは、ハワイが乗っ取れんではないか」


「心配するな、手は打ってある」


クカニロコ近くにある、前世では、ハワイ共和国の大統領になる

ドールの邸宅に集まった、白人たちが、{前世では、プランテェーション農業で

巨万の富を築いたいわゆるビッグ5(ブリューア、アムファック、セオデイヴィース、

スタンフォードドール、アレクサンダー)が、開たちの行うハワイの改革に

焦りを見せ、その対策会議を開いていたのだった。


旅行先の四国の山の中で、農業用モノレールに乗せてもらいました。

急勾配をグイグイ昇る姿に感動して、思わずモノレールネタが入ってしまいました。

せっかくなのでこのまま行きます。

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