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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
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002 天照さまと月読さま

「開や、あの子が気がついたみたいだから、見てきておやり」

1階のみやげ物屋で店番をしていた開に、2階から降りてきた

絹江ばあちゃんが声を掛けてくれた。




五十鈴川のほとりで、開がたそがれている所に、心配した妹の舞が

迎えに来てくれた時、突然、空間が裂け、

そこから吹っ飛ばされてきた、妹にそっくりな瀕死の少女。




あれからすぐに、医療系魔力がある舞が、ある程度、

治療魔法をかけてから、開がおんぶして、10年前から、お世話になっている、

祖父の喜一郎じいちゃんの家に連れて来たのだ。


喜一郎じいちゃんは、すぐに警察の、偉い人?に連絡して、

開が伝えた現場の様子を見に出かけてしまった。




喜一郎じいちゃんの家は、伊勢内宮への参道にある、おかげ横丁にあって、

絹江ばあちゃんと二人でみやげ物屋をやっているのだ。




両親がいた頃は、近くのアパートに両親と住んでいたから、

じいちゃんの家には、時々遊びに行く程度だったのだが、

10年前に開達の両親が行方不明になってからは、ずっと、

じいちゃんの家にお世話になっている。




じいちゃんとばあちゃんの、みやげ物屋は、有名な金福餅のような

食べ物系ではなく、じいちゃんが作った勾玉の首飾りや、

手鏡など装飾品の販売がメインだ。




嘘か本当か、わからないが、新道家は、倭姫命やまとひめのみこと

伊勢神宮を造営した時に付き添っていた、宮大工の一人で、当時から、巫女が使う

様々な神具を作っていた匠が、開たちのご先祖さまだと言われているのだ。




昔は宇治橋を渡った、境内の神苑に家があったそうなのだが、

明治42年(1909年)に人工水晶の製造工場や魔力補充施設がその場所に

建設されてから、神具作りの匠たちも引っ越しをはじめ、

新道家も、開達が生まれた頃にはすでに、参道に引っ越していて、

2階が住居で、1階で小さなみやげ物屋と工房を開いていた。


といっても、じいちゃんの本当の神具工房は、五十鈴川のもっと

上流にあるらしいのだが、開はまだ連れて行ってもらったことはなかった。




なぜなら、じいちゃん曰く、結界が張ってあり、光系魔力だと3000MP、

他の魔力だと、5000MPを超えてないと、はじき飛ばされて

中に入れないのだという。




2階に上がった開はノックして、入室の許可をもらってから

普段、妹の舞が使っている部屋に入った。




妹にそっくりな瀕死の少女には、服を脱がせてから全身に治療魔法を

かけるため、開は、舞と絹江ばあちゃんに追い出されていたのだ。




******




ベットの上で、上半身を起こしていた少女は、なぜか舞の制服を

着ているため、舞が、2人いるようにしか見えなかった。


(なぜに制服?)開が不思議がっているのをよそに、

「そなたが、こちらの世界のカイか、今回は、舞殿と

共にわらわを助けてくれたそうじゃな、改めて礼を申す。


わらわは、向こうの世界で、民族神の長をやっておる、

天照アマテラスじゃ、この体は、そちの妹の体での、といっても

向こうの世界の、そちの妹じゃがのう。


そうそう、彼女もマイ(麻衣)と申しておったかのう、

彼女は100年に1人の神降ろしのできる巫女じゃったので、

時々、神降ろしをして、国民に神託をしていたんじゃよ。


今回も、ちょうどわらわがマイに入って、神託をしておるところで、

あの爆発に巻き込まれたのじゃ」と非情に気になる発言をしてきた。




「向こうの世界?アマテラス神?向こうの妹のマイの体?爆発?」

開が戸惑っていると、


「そうじゃな、言葉だけで説明するより、映像を

観たほうがわかりやすいじゃろ」と


空間にスクリーンのようなものを創り出し、そこに映像を映し出した。


(青色系や紫系が使う魔法に似ているな)開がそう思っていると

スクリーンには、開の星と似たような青い海と白い雲に

覆われた美しい星が写し出された。


開は目を見開いた。「これは・・」


そこには、開たちが住む月本列島が写し出されているのだが、

開たちの世界とは左右が反対になっていて、中国大陸が西側に、

東側には、太平洋が広がっているのだ。




「わらわがいた星じゃ、お前達の住む宇宙から見れば、

表側にあたる宇宙で、今、映っている星の名は、お前達の星と同じように、

地球と呼ばれておるが、真ん中に見えておる、島々は、お前達の言う

月本つもと列島ではなく日元ひもと列島と呼ばれていており、

国名も、月本国(つもとのくに、または、つもとこく、つきもとこく)ではなく、

日元国(ひもとのくに、または、ひもとのこく、ひのもとこく)と

呼ばれておるのじゃ」




「表側の宇宙ですか、確かに、ショウウィンドゥのガラスに描かれた絵を

反対側から見ているみたいですね」開は初めて見る左右対称の地球を

食い入るように見ていた。


天照さまの説明では、東西南北の位置関係は変わらないが、

月本列島や中国大陸など、陸地だけが、左右が反対になっているのだという。


(じゃあ昔、聖徳太子が日の沈む国の天帝より、日の登る国の天帝へと

隋の帝に親書を送ったけど、あっちの世界じゃ逆になるから、

相手を怒らせることになったんじゃないかな)と変な心配をしていると、




「あら、そう言う言い方をされたら、そっちが表で、こっちの宇宙が裏側って

言っているように聞こえるんだけど」




「なっ!いつの間に」

開の後ろで、女性の声が聞こえたので、開が驚いて振り返ると

いつの間に部屋に入って来たのか、長い黒髪が肩までかかり、

美人だが、少し近寄りがたい、巫女と言うよりは、古代の女王のような

髪飾りと服装をした女性がいた。




「おお、久しいな、ヨミヨミ。まだそんな古くさい格好をしておるのか

相変わらず、固いのう、ヨミヨミは、わらわなんてほれ、マイ(舞)の

最新女子高生ファッションのうえに、髪も爆発で傷んでおったからのう、

ほらどうじゃ、絹江殿にカットして整えてもらった時に、染めてもらったぞ」


(はあ、その体って向こうの世界の妹の体じゃないのか、勝手に染めていいのか?)

心のなかでツッコミながら舞を見ると、舞も苦笑いしていた。


おそらく舞の制服を着させろと、頼んだのだろう、それに絹江ばあちゃんは、

魔法美容師の資格を持っていて、髪なんかも簡単に染められるから、

これも頼んだのだろう。




「まったく、一瞬、空間が裂けた後、他世界の民族神の気配がしたと思ったら、

 あなたでしたか、天照。


それに、ヨミヨミという呼び方はやめてくださるかしら、今の私は、この

月本国を司る最高神の女神ですから、せめて月読さまと呼んでもらえます。


ところで、人間の小娘の体に宿って、こちらの世界に来るなんて、

どうなされたのかしら、まさか国民くにたみの信仰心が無くなって、

追い出されたとかではないでしょうね、ほほほ」




「うぐっ、ちょっと休憩しにきただけじゃ」

突然現れた、美しいが、何処か棘のある感じの、王女のような女性は、

開と舞をそっちのけで会話を始めた。




「あのー、お二人はいったいどう言う関係でしょうか」

 おそるおそる、開が口を挟むと、


「主宰神養成学校時代のクラスメイトじゃ、まあ、神力はわらわの方がいつも上

じゃったがの。ああそうか、その時のわらわの神力に憧れでも感じて、

ヨミヨミの所は、こんなに魔法をメインにした世界にしておるのか」と

天照さまが、ドヤ顔で反撃に出たようだ。


「なっ、座学では、私の方が上でしたわよ。それに星の管理には、

統計的な経営学が必要ですからねえ。

ああ、そういったものが足りないから追い出されてきたのかしら、

それにテラス、そのヨミヨミって言い方、やめてって

いってるでしょう」




「あのう、主宰神養成学校というのは?」開は雰囲気を変えようと話題を振った。


「そなたらの3次元宇宙ではなく、もっと高次な、そうじゃのう

次元でいうと、8次元世界にある寄宿型の学校じゃのう。


そこの生徒は卒業すると、様々な星の様々な国で、主宰神として

降臨して、その星や国を発展させる事が使命での

そのために必要な、様々な分野の学問を学ぶ所じゃよ。


わらわ達は、そこを3万年前に卒業してから、1万年程、

別の宇宙の別の地球の日本国というところで、天之御中主神から研修を受けたあと、

最初は、似たような環境の地を発展繁栄させてみよと、

隣りどおしの宇宙で同じような地域の主催女神となったのじゃよ」


(学校を卒業したのが、3万年前って・・。じゃあ今はいったい、

何歳なんだろう・・・)開がそう、心のなかでつぶやくと

それが、すぐに伝わったのか、二人の女神がものすごく、

恐ろしい目で、開を睨んできた。


「開とやら、助けてくれたことは感謝するが、女神の年齢を

推測するのは、よくないのお」


「そうよねえ、そこはテラスに同意するは、魂を消滅させてしまいましょうかねえ」


「す、すみませんでした」

開が冷や汗を流しながら、困り果てていると、


「天照さま、月読さま、お茶をお持ちいたしました」と

いつの間にか席を外していた、舞が、お茶と金福餅を持って来た。




「あら、気が利くわねえ」「うむ、くるしゅうないぞ」

(さすが、舞だ)開は心の中で拍手を送った。


場は一気に和み、ほっこりとしたなかで、天照さまが空間スクリーンに

映像を流しながら、天照さまの世界と月読さまの世界の違いを説明をしてくれた。




*****




開は天照さまが写しだしてくれた膨大な映像からの情報を整理するには、

もっと脳に糖分が必要だと思い、舞が持って来てくれた

金福餅を食べようとしたのだが、自分の分はさっさと食べ終わった

天照さまが、あまりにも物欲しそうな目でこちらを見るので、

「ど、どうぞ」と思わず金福餅のお皿を差し出した。


「すまぬのー」笑顔で、それを受け取った天照さまは、

おいしそうに食べ始めた。




それを見ていた月読さまが一瞬不機嫌になったので、

開は内心しまったと思ったが、舞がすかさず、

「月読さまもどうぞ」と自分の分を差し出したのを見て、

再び心の中で舞に拍手しながら話し出した。




「えーと整理すると、僕たちから見ると無限に広がる大宇宙も、

神様の目からすると、一つのビー玉のようなものに見えていて、

そのビー玉のような宇宙が、無数にあって、

そして、それぞれのビー玉というか、大宇宙を管理している神様がいて、

そのビー玉の中に、それぞれの銀河系を管理している神様がいて、

その銀河系の中に、それぞれの恒星を管理している神様がいて、

その恒星系の中に、それぞれの惑星を管理している神様がいて、

その惑星の中で、それぞれの大陸というか、民族を管理している

神様がいると理解していいんでしょうか」と情報をまとめてみた。




天照さまは、開が譲った、金福餅を食べ終わり、満足顔で、

「まあ、人間の頭脳で、理解できる範囲内ということなら、

おおむねその理解の仕方でよいじゃろう」と言いい、

月読さまも、それに同意したようで、頷いてくれた。




そして、なぜ隣り合った宇宙の隣り合った星で、月本国と日元国という

左右対称の国の主催神を天照さまと月読さまがやっているかというと、

昔々、天之御中主神が、研修生として受け入れていた、2人の女神に

日本国の改善策を聞いた所、

月読さまは、魔法の積極的導入による感性的な面からの人々の魂の向上を、

天照さまは、科学技術力を発展させて理性的な面からの人々の魂の向上を

それぞれ主張し、どちらも譲らなかったため、見かねた、

天之御中主さまが、ちょうど神さまが不在だった隣接する宇宙で、

上手い具合にガラスに描かれた裏表のような列島の月本国と日元国を

月読さまと天照さまが指導してみることになったのだという。




「これで、結果が出たわねテラス。わたくしが言ったとおり、魔力という

神秘な力を人々に与えることで、その力が神から与えられたものと、

畏怖させて神々への信仰心を向上させて、人々を導くことがいいのよ、

つまり私が主張した魔力を中心にした世界にすることが正解だったって事よ」


「うぐ」天照さまが、何も言い返せないでいる姿を見て、開は疑問が湧き、

思わず呟いてしまった。




「本当にそうなんでしょうか、僕のように人生の途中で、魔力をほとんど

失った人間にとっては、この世界は、とても住みにくい世界なんですよ。


就職先もほとんど無くて、みんなからは哀れみの目で見られて、これから一生

生活保護者として、国から補助魔力をもらいながら生活していく人生って、

正直言って自分の生きている存在価値が全くないような気がして、ある意味で、

拷問に近い世界なんです」




「ごめんなさい、おにいちゃん、わたしのせいで」


悲しそうな顔の妹を見て、思わす本音を漏らしてしまった開は、

益々自己嫌悪に陥った。

(しまった、舞の前で、絶対言っちゃいけないことを言ってしまった

俺って最低だな)




気まずい雰囲気が流れている所に、もう今日は、お店を閉めたのか、

絹江ばあちゃんが入ってきた。


ばあちゃんは実体化している月読さまに驚くこともなく、というか、

「お久しぶりです、月読さま」と平気で挨拶し、

「絹江も元気でしたか」と月読さまも返していた。


(ばあちゃん、月読さまと知り合いだったのか?何者なんだ)と

心の中でつっこんでいると、


「喜一郎から、連絡が入りました。あちらに行っていた、勇一郎と

美咲からも報告があるとのことなので、ご足労ですが、工房に

来ていただきたいとのことです」と、爆弾発言があった。




「なっ、ばあちゃん、親父とお袋から連絡って」


「絹江ばあちゃん、どういうこと、お父さんと、お母さんは生きてたの」


取り乱す、開たちに、絹江ばあちゃんは

「話は、向こうについてからだよ」と

舞の制服を着た女子高生風の天照さまと、女王のような姿に実体化した

月読さまを先導して階段を下りていってしまった。



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