表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
18/55

018 土方さんと沖田さんの想い

「開師匠!来てくれたんですか、最後に会いたかったですよ」

沖田さんが、うれしそうに微笑む。


「土方、どうにもならんのか」龍馬さんが寂しそうにつぶやく。



土方さんたちが、切腹を命じられたと聞き、開たちは、会津藩の江戸上屋敷に来ていた。


会津江戸藩上屋敷は、西の丸から桜田門を出たすぐの所にあり、

勝先生の名前と、天皇陛下の義兄ということになった、一条開之宮の

名前を出すと、すんなり面会できたのだ。


ちなみに、天照さまは、出かける寸前で、

「男どうしで、最後の別れをしてこい」と面会に行くのを取りやめたのだ。


カッコイイセリフだったのだが、そのセリフをお竜さんが、新たに持って来た、

みたらし団子を見ながら言っていた所は、みんな見なかったことにしていた。



「飛行魔術を使って、逃げ出しましょうよ、その後は、徐福さんの

変身薬を使って、別人になりすませば・・」


「・・・開師匠、これは、けじめだから・・」


小栗上野介の命を受け、徹底抗戦に舵を切った、幕府は会津藩松平容保に、

藤沢宿での戦に続き、江戸城下での戦の総大将を任命したのだ。

{普通は、徳川慶喜なのだが、慶喜公は、水戸へ逃げてしまった}


松平容保公は、実質の指揮官として、藤沢宿での戦いの終盤で、

鬼神のごとく暴れ回った、新撰組副長土方歳三を指名したのだ。


しかし、土方は、今後、日元国人どうしでの戦はしないと、

断固として、江戸での戦の指揮命令に従わなかったのだ。


松平容保公としては、これまでさんざん新撰組に軍資金の援助を行って

きたこともあいまって、土方、沖田に激怒し、切腹命令が出たのだ。


当初、開は松平容保公に接見させていただき、土方さんと沖田さんの

切腹命令を取り消してもらおうと思ったのだが、松平容保公は、

江戸にはいなかったのだ。


(皮肉なもんじゃな、松平容保公は、京都守護職時代には、職務を忠実に果たし、

京の街の治安を回復させたことで、孝明天皇{明治天皇の父}から深く信頼されて、

直筆の礼状までいただいていたと言うのに)


「総司、左の脇腹に突き刺して、グッと右までかっさばけよ、

間違って右に突き刺したら、その後、かっさばけずに苦しむぞ」


「分かってますよ、歳三さんこそ、間違えないでくださいよ、

あと、僕が先でかまいませんよね」

二人で、楽しそう?に切腹の段取りを決めている。


「あの!二人とも、僕の話を聞いてくださいよ・・

なんで、なんでそんなに死に急ぐんですか、

みんなで一緒に、日元国を変えようって、約束したじゃないですか」


(開、落ち着け、その時代には、その時代の正義があるんだ、

それを後の時代の俺たちが、とやかく言える立場じゃない)


(でも、僕が争いをやめましょうって言ったことで、

その約束を土方さんたちが守ったことで、切腹させられるなんて)


(うぬぼれるな、開の意見を少しは参考にしたかも知れんが、

最終的に切腹を受け入れたのは、土方さんたち自身だぞ。

彼らは、きちんと自分で考え、行動しようとしているんだ。

彼らを説得できなかったと歎くなら、それは、自分自身に

人を説得するだけの、感化力、人間力がないということだ)




「・・すまんな、開師匠。会津藩には、新撰組設立時から、世話になっている。

その我々が、命令に従わんと言ったのだ、切腹命令はしかたないだろう。

俺らには、こういう生き方しかできんのじゃ

この数日、楽しかったぜ・・日元国をたのんだぜ」


「たのみます」


そう言って、二人は開の肩をぽん、ぽんと叩くと、お白砂へと消えていった。


最後に見た、二人の凛々しさに、開は、もうこれ以上、彼らを

引き留めることは、できなかった。


勾玉内で父親に指摘された、自分の感化力、人間力の無さに、くやしくて

その場に崩れ落ち、号泣する開を、龍馬さんと海舟さんが優しく見つめていた。


このときの会津藩の記録係の手記によると、

二人とも見事な切腹で、

沖田総司は、力むこと無く、まるで筆で横一字を書くように、

左から右にかっさばき、微笑むように切腹し、

土方歳三は、豪快になんと三度も腹をかっさばいたという。


****


「きっと、あの船だろう」

開の横を飛行する龍馬さんに跨がった勝先生が、品川沖に向かう、

5隻の黒船を指さした。


会津藩上屋敷を辞した後、築地にある海軍操練所に小栗さんを訪ねたのだが、

すでに出航した後だったのだ。


2年後の函館戦争前に、暴風雨で沈没してしまうが、現在では最新鋭の

{開陽丸}や{回天}{高雄}{千代田}などの幕府側の黒船が、

黒煙を上げながら進んでいる。


「あそこです、いきます」そう言うと開は、旗艦と思われる、

木造外輪式蒸気船コルベットの甲板を目指して、飛行高度を下げた。


(絶対に止めてやる。自分に感化力が無いのは分かった・・

でも、でも、土方さんたちの想いを無駄にしないためにも、

日元国人どうしの戦いは、もう絶対させない)


「ちょいまちいな」あわてて、龍馬さんが止めようとするが、

開は急降下して、ドンっと、甲板に降り立った。


「く、くせ者だ、で、であえ」その声とともに、すぐに

刀や銃を構えた侍や水夫たちに囲まれる。


今にも、撃ってきそうな状態の、開の横に、ふわっと降り立った

龍馬さんの背中から勝さんが降りると、よく通った声で、

「ご公儀軍事取扱、勝海舟、小栗上野介殿に火急の用で参った。

こちらにおわせるは、天皇陛下の義兄、一条開ノ宮殿であられる、

一同、控えよ」と伝えた。


****


「それで、攻撃を中止せよと?」ひたいが広く、才槌頭で、

面長で目の大きな侍、小栗忠順が、気張ったところもなく、

まるで知人に問うように自然体で、開に質問してきた。


艦長室には、テーブルを挟んで、小栗忠則と、開陽丸艦長榎本武揚、

勝海舟と開が、座っており、少し離れた入口付近に龍馬さんが立っていた。


「はい、小栗さまとしては、いろいろと考えがございましょうが・・」


「いいですよ、攻撃は中止です。直ちに、築地に引き返しましょう。

榎本艦長、全ての艦に連絡後、180°反転」


「は」榎本艦長は、短く返答すると、命令を実行するため、部屋を出て行った。


「え、いいのですか・・」

開はすんなりと、要望が叶えられたことに逆に戸惑い、思わず聞き返してしまった。


(・・・感化力が上がったと思うなよ、開)


(わかってます。僕は何も話してないですから・・)


「ふふ、驚いていらっしゃいますな、一条殿」


「え、ええ」

史実では、東海道を江戸に向かう新政府軍に海から、攻撃を加えるという

小栗の案は、慶喜公に却下されていたが、後にその作戦を知った、

大村益次郎たちは、この攻撃を受けていたら新政府軍は

壊滅していただろうと、肝を冷やしたのだ。


今の新政府軍は、それよりも少ない千人程、もしここで攻撃を受ければ、

西郷さんや大久保さん、桂さんなども含めて全滅する可能性も高いのだ。


しかも、幕府艦隊側には、ほとんど被害はない、まさに

パーフェクトゲームで完勝できるのだ、指揮官としての名声を

求めるなら、攻撃を中止するなんて、ありえないのだ。


「私も、勝さんと同様、メリケン国をこの目で見てきたのですよ。

メリケン国の港には、このような黒船が何百隻と並び、陸には、

陸蒸気が轟音を立てて、馬よりも早く、走っていました。

街の通りは広く、その両側には、天まで届くようなビルディングという

建物が並び、招かれた会議場には、高級そうな絨毯が敷かれ、

その上をみな、土足で歩いていたのです。

我が、日元国との、技術力と富みの差は明らかでしたねえ。

いまだに攘夷を叫ぶ人は多いですが、今、あのメリケン国と戦えば、

あっという間に、日元国が負けるのは明らかでしょう。

そのメリケン国ですら、まだ空を自由に飛ぶことは出来ていませんでした。

ところが、あなた方は、先ほど自由に空を飛んでいらっしゃいました。

つまり、あのメリケン国よりも、さらにすごい技術をお持ちの方々と

判断いたしました。

そんな方々と戦っても、負けることは目に見えていますからね」


「さすがだな、彼我の差を一瞬で見極めてしまうとは」

勝先生が、ニヤリと笑う。


「ふん、大政奉還の大本はあなたでしょう、自分が動けないからと

弟子を使って、あのような策を仕掛ける、あなたに誉められてもねえ」

龍馬さんの方をチラッと見ながら、小栗さんがぼやく。


「いや、弟子と言ったら龍馬に失礼だよ。まあ、同士ってとこだな」


(おいおい、なんだよ今のやりとり。小栗さんは勝さんが、

幕臣でありながら、幕府を瓦解させるために動いてたことを

知っていたってことか)


(たぶん、小栗さんは、300以上に分かれた幕藩体制を潰して、徳川家を中心とした

中央集権国家にしたかったんじゃないですか)


(だからある程度の幕藩体制の崩壊は容認していたが、勝さんや龍馬さんの

大政奉還は行きすぎだと思っているのかも)

勾玉内で二人の会話を基に、議論が活発化していた。


「で、一条殿、あなた方はいったい何者なのでしょうか」

開と同じく空を飛んでいた、龍馬さんの方もちらりと見ながら、小栗さんが尋ねる。


「小栗さま、まずこれを見てもらってもよろしいですか」と

開は、魔力パスポートを開き、天照さまに映像をもらい、

海に手伝ってもらって編集した、明治維新後から、中国に占領される

平成までの歴史の映像を見せながら説明を始めた。


「・・それで、小栗さまが進めてくれていた製鉄や横須賀の造船所の建築、

鉄道などの施設は、幕府から新政府に受け継がれました。

おかげで日元国は急速に富国強兵がなされ、40年後には、

ロシアとの戦争に勝利するまでになりました」


「ほう、ロシアに勝ったのですか!」

数年前、測量目的と称し、対馬にロシアの軍艦が停泊し、

そのまま、水兵が上陸して、対馬の租借を要求され、現地に派遣された

小栗は、その交渉の席で、彼我の軍事力の差に歯ぎしりしたことを

思い出したのだろう。


そのロシアに戦争で勝利し、しかも自分が種をまいた、横須賀造船所が

役だったことにうれしそうに、微笑んだ。


「そうです。しかしその後、アジア、アフリカの解放のため、

新たにできた、国際連盟に有色人種への人種平等条項を連盟規約に盛り込むことを

求めたものの、メリケンのウイルソン大統領に潰されたのです。

さらに、巧みな外交で、日英同盟を破棄され、ABCD包囲網という

経済封鎖政策を築かれ、だめ押しとして、自衛を無視した

{ハルノート}という文章を手交され、やむにやまれぬ気持ちで

メリケンとの戦争に突入するのです」


「あの、メリケン国と戦争ですか、おそらく負けたのでしょう」


「ええ、敗戦しました。しかも、江戸(東京)や大坂など日元国の

100以上の街は灰燼に帰し、広島や長崎には、一発で10万人もの市民が

焼き殺される新型爆弾を投下されての敗戦です」


「な、江戸が灰燼に・・」


「その後、メリケン国に占領され、植民地のような憲法を押しつけられ、

自虐史観を植え込まれ、今の志士のように、

自分の国は自分で護ろうという気概を持った人間は

右翼といってもわからないですね、

そうですね、危ない思想の人間と思われるようになり、

自分で考えるのではなく、海に浮かぶクラゲのように、

人の意見に流される人々が増え、日元国全体が、これといった信念を

持たない、ただ国際社会のなかに浮かぶクラゲ国家になった所で、

清国から変わった、中華人民共和国に占領されてしまったのですよ」


「「な!」」小栗忠則と艦隊指示から戻って、一緒に話を聞いていた、

榎本武揚は絶句したまま、しばらく動かなかった。


先日、NHKの「おはよう日本」で9割が中国人留学生で、中国国歌を歌い、お小遣いも渡している

宮崎の自治体が運営する高校が放送されていました。日本の税金がそんなところに使われているんですね・・。日元国のようにならないことを祈ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ