表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
17/55

017 江戸城は地下要塞?

「ほお、これが魔法かい、本当にすごいもんだな」勝さんが、感嘆の声を上げる。


肉体強化魔法で、赤い鎧武者になった龍馬さんが、勝海舟先生を背負ったまま、

10cmほど浮いて、地上をすべるように、地下道を驀進しているのだ。

それは、SFアニメのガ○ダムの敵方の黒いモビルスーツのようだった。


「いや、それより、この地下道のほうがすごいですよ、

いったい何キロぐらい続いているんですか」

同じように白い鎧武者になった開が天照さまをお姫様抱っこしながら、

龍馬さんの後ろ進んでいるのだが、

芝の増上寺から続き、大人四人が余裕で並べて歩ける、

大砲も通れるような、巨大な地下道に驚いていた。


(というか、あの増上寺の地下7階にもなる、地下要塞の規模にも

驚いたな。月本国の伊勢の地下道といい勝負だよ)


「いや、俺も軍艦奉行に任命されたときに、初めて知ったからなあ、

全貌は解らんよ。でも、おそらく地下道だけで数十里はあるんじゃないかな」


「そ、そんなに、やっぱり黒船の大砲に対抗するために作ったのですか、

でもペリー来航から数年で、よくこれだけ掘り進められましたね」


「いや、大砲に対抗するためと言えばそうなんだが、

この地下道が作られたのは、家康さんの時代だよ。

もう一つ言えば、地下を掘り進めたのではなく、

先に、これらの通路を作った上に盛り土をして、江戸の街を作ったのさ」


「な、なんですとー」


勝海舟さんの話によると、徳川家康は、大阪城を攻めたとき、

当時交易をしていた、イギリスのアダムス(後の三浦按針)や

オランダのヨーステンから、外堀の向こうから、天守閣にまで砲弾が届く、

カルバリン砲を手に入れ、淀君を攻め、豊臣家を滅ぼしたのだという。


この、外堀の向こうからでも、砲弾が天守閣まで届いてしまうという、

カルバリン砲の存在が、そのまま、大坂城をぶんどって、

大坂に幕府を開くという、家臣からの提案をしりぞけ、

いまだ開発途上だった、江戸を拠点とすることになったのだという。


当時のヨーロッパでは、このカルバリン砲から城を守り、逆に、

こちらのカルバリン砲で敵を撃退する、城塞都市の研究が盛んだったらしく、

結論としては、これから益々、大砲の飛距離が伸びて、破壊力が増せば、

地上の天守閣では、とうてい守りきれないので、地下要塞を築くことが、

最良の選択であるということになったらしい。


そのため、江戸城も基本的には、地下要塞にすることになったのだという。


かといって、当時の日元国の技術力では、堅固な地面を掘って

地下要塞を築くことは、不可能だったらしいのだが、さいわいにも、

江戸の家康の居城は、太田道灌が作ったとされる、城とはとても呼べない

建物と寒村があるだけで、周りは、芦原の湿地帯だらけだったらしい。


ならば、先に、大砲が通れる道や、水路を張り巡らせ、その上に

盛り土をして、街を築けばよいではないかという話になり、

先の外国人技師(イギリス人は三浦按針だけで、あとはオランダ人)の力を借りて

当時、最先端の防塞都市とされていた、ドイツのミュンスター城塞都市を参考に

オランダ式の城塞都市として江戸城が作られたのだという。


(なるほど、これで、謎が解けたぞ、いや、疑問だったんだ。

なぜ幕府が鎖国後も、長崎に出島を作って、オランダだけを優遇したのか、

そして、江戸城の天守閣を焼失しても、なぜ再建しないのか)


(ああ、確かに、最初から地下に堅固な城主の部屋や武器弾薬庫などが

完備されているなら、飾りとしての天守閣が焼失しても、問題はなかった訳か

それに、そんな軍事技術を持っているオランダを優遇するのも解るなあ)


また、海舟さんの話では、芝の増上寺と対を成すように上野の山にも、

地下要塞があり、それぞれ、西方と東北から万が一攻められた時の

防衛拠点になっているのだという。


(なるほど、それで腑に落ちたよ、前回の歴史では、この明治維新の後、

上野の山に3千人もの彰義隊が立てこもって、新政府軍と戦ったんだが、

資料を読むと、100名ほどの犠牲者を出して、

彰義隊が壊滅したと書いてあったんだよ。

あれ?3千名は、いたはずなのに、その内の100名の犠牲者で壊滅的って、

どういう事だ、数が合わないんじゃないかと思っていたんだが、

今考えると、残りは地下要塞で死んでたってことだったんだな)


(そういえば、上野の不忍池の地下には、東京メトロの広大な車両基地が

あるって、鉄道マニアの友達が言っていたな、そんなのいつ作ったんだろうと

思ってたけど、300年前から地下空間が、あったってことか)


(じゃあ、月本国の江戸も地下要塞なんだろうか)


(どうだろう、でも向こうに戻ったら調べてみましょう)

勾玉内で、江戸の地下要塞の話で盛り上がっていると、高さが6mぐらいで、

直径が50mはありそうな広場のような空間に出た。


そこは、開たちが入って来たトンネル以外に、7本のトンネルが延びていて

脇の階段を上ると、門があり、その門をくぐって回廊を進むと、

また階段があり、その階段を上ると、また門があり、その門をくぐってまた、

回廊を進むということを、7階は繰り返しただろうか、途中には、水路があったり、

その水路を船で進むための船着き場があったり、また広場があり、

そこからいくつかのトンネルが延びていたりと、

迷宮のダンジョンのようになっていた。


(キター、江戸城ダンジョン!きたー、なあ開、ここをCGで再現したゲームを、

売り出せば、絶対いけるぞ、ゾンビ系?いやモンスター系にするか)と、

やけにテンションの上がる海をスルーして海舟さんについていくと、

20畳ほどの、質素な部屋に案内された。


「随分質素な部屋ですね、あのー、裃を着て、松の廊下とかを通って、

その奥の座敷とかで、小栗さんと会談とか、しないんですか」

当時、日本最大と言われていた、江戸城本丸には、畳み5枚分の幅で、

なんと、長さが50mもあり、その障壁には、千鳥が乱れ飛ぶ松原が画かれた

松の廊下と呼ばれる廊下があったそうで、維新後に取り壊される前に

是非、歩いてみたいと思っていたのだ。


「いや、ここは俺が登城したときに使ってる部屋だよ。

{松の廊下}を歩きたいのかい?

うーんでも、地上の設備は、大名たちが、公式参拝するときに使うもので、

実際の実務は地下でやっているからなあ、やはり会談も地下になるかな」と

言いながら、筆と硯を出すと、サラサラと、何かをしたためた。


「火急と言っても、手続きを踏まないと会えないのさ、まったくめんどうだぜ」と

その手紙を、いつの間にか現れた、小僧さん?に渡した。


おそらく小栗さんの所に届けに行くのだろう、小僧さんが出て行くと同時に

今度は、綺麗な女の人が、お茶や、おまんじゅうを持って入って来た。


その女性の顔を見るなり、龍馬さんが驚きの声を上げた。


「お竜?おまん、なしてここにおるとじゃ?長州の三吉君に預けたはずじゃろう」

龍馬さんは、大政奉還させるために京に上る途中、長崎で一緒に暮らしていた

お竜さんを長州に預けてきていたのだ。


「龍馬さま、京で襲われたと聞きましたが、ご無事でなによりです。

天照大神さま、影法師さま、お初にお目に掛かります、お竜と申します。

以後、お見知りおきを」といいながら、龍馬さんの問い掛けをスルーした、

お竜さんが天照さまと開を尊敬するような眼差しで見つめた。


「ほう、影法師を知っておるとは、お主、志能便しのびか」と

天照さまが少し感心した様子で呟く。


(なあ、忍って、忍者のことだろ、どういう事だ?

お竜さんって、寺田屋で働いていて、僕らより前に、龍馬さんが襲われたときに、

裸で走って、助けを求めに行った人だよね。忍者だったの?

それと僕の事を、影法師って呼んだよね、それって何なの?)


開の疑問に勾玉の内で、海の父親の勇太郎さんが、開の父の勇一郎に問う


(勇一郎殿、開君にはまだ話をしていなかったのですか)


(ええ、あの事件があったとき、開はまだ10歳で、その後は、すぐ私達は

こちらの世界に飛ばされましたから・・。親父{喜一郎}も話して

なかったのでしょうね)と二人がどうしたものかと、真剣に話し合っている。


それを見かねた、美咲が、

(あなた、天照大神さまにお願いして、開にまた勾玉に入ってもらっては)と

提案した。


勾玉内と外では、時間の進み方が違い、勾玉内での1時間は外では一瞬だったりするのだ。


****


開の母親の美咲の願いに、天照さまが、快く応じ、開は、再び魂のみ勾玉内に入った。


なぜか、天照さまも付いて来て、隣のテーブルで、女性陣が作った、

ケーキやプリンを爆食いしていた。


その様子にしばらくあっけにとられていた、男性陣だが、

「ところで、親父、影法師って何なんだ」との開の問いに、

我に返って、説明を始めた。


要約すると、神武天皇の頃から、天皇家をお護りする、

影法師という集団が在ったこと。


その影法師の集団は、やがて、表の公式行事を支える者{後の八瀬童子}や、

裏で、謀反を起こさないよう各地の豪族を諜報活動する者、

さらには、魔法で、天皇家を護る者に、役割分担されていったこと。


新道家は、魔法で護る者として、DC69年頃、垂仁天皇の皇女、倭姫命が

伊勢神宮を建立されたときに、伊勢に来たのだということ。


そのまま、大和の国に残った、影法師の一部の諜報活動をする者達が、

聖徳太子の時代に、物部守屋を滅ぼす為に、裏で様々に暗躍し

志能便しのびと呼ばれるようになったこと。


さらにその一部が、やがて伊賀の里や甲賀の里に住み着き、

やがて、守護大名たちに雇われて、諜報活動をするようになり、

志能便しのびから、忍び、と呼ばれるようになったことなどである。


こちらの世界では、あからさまな魔法は使われていなかったが、

陰陽師を中心に使われていた呪術は、一種の魔法といってもよかった。


(なるほど、だから、お竜さんがあんなに、憧れの目で見てくるのか)


おそらく、京都での、近江屋での龍馬暗殺未遂事件や、御所での陛下の

暗殺事件などで、麻衣の体に入っている天照さまや、それを護っている

開の情報はかなり入っているのだろう。


なので、お竜さんたち、忍からすれば、陰陽師を超えるような魔法を使い、

自分達の本来の役目をこなす開の姿が、尊敬する先輩?

あるいは、アイドルのように見えているのかも知れなかった。


(いやー、しかしお竜さんが、志能便(忍)とは!この地下の要塞といい、

まったく、驚かされる事ばかりですな)


まさかと、思うところもあったが、出発する前の、絹江ばあちゃんや

喜一郎じいちゃんと、月読さまとのやり取りや、あの伊勢から熊野に

渡る地下鉄網のことを思い出すと、認めざるを得なかった。


30分ぐらいかけて、大方の情報を得た開が、

「さあ、そろそろ戻りますね。天照さまいきましょう」と声を掛けると、

口いっぱいに、ケーキをほおばっていた天照さまが、


「もぐ(まだ)、もわ(いい)、もぐ(だろう)」と訴えてきたが、


「向こうでも、おまんじゅうが出てたじゃないですか」と

なだめると、渋々帰してくれた。


****


「は、はい伊賀のくノ一のお竜です。まさか、天照大神さまや影法師さまに

お会い出来る日が来るとは、夢にも思いませんでした」と、

キラキラして眼差しで見ながら、おまんじゅうを差し出すのだった。


その横では、「くノ一だったのか、全く気づかなかった・・」と

龍馬さんがショックを受けていた。


そんな龍馬さんを尻目に、「おお、苦しゅう無いぞ」と、

ニコニコしながらまんじゅうを食べ始める天照さまに、


(ついさっきまで、勾玉内で、ケーキとプリンを爆食してたんじゃ?)と

開が心の中で呟いていると、先ほど手紙を届けに行った、小僧さんが戻ってきた。


「勝さま、残念ながら、小栗上野介さまは、入れ違いで、海軍操練所の方に出られた様子です。

それと、別件ですが、新撰組の土方殿と、沖田殿が切腹を命じられたそうです」


「なんだと、土方達が・・」


「勝先生、お願いがあります」


「わかってるさ、会津藩松平容保殿の上屋敷は、西の丸を出た所だし、

そこでまず、土方君と沖田君を救ってから、そのまま操練所の小栗に会いにいくか」


開たちが、頷く横で、天照さまが、残った、おまんじゅうを全て

口に詰め込んでいるのが見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ