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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
15/55

015 土方さんと 沖田君 VS 龍馬さんと 開?

「ひどいありさまだな・・」

人目につかないように、箱根神社の方に降りた開と龍馬は、

入り鉄砲に出女を特に監視する、箱根の関所に来ていた。


土方さんと、沖田君には、近藤勇をはじめとする、新撰組の

説得の為に、もう少し先に飛んでもらっていた。


「一方的って感じですね」


薩長軍と幕府軍との箱根の関での戦が終わってから、まだ1日か2日しか

経っていないような感じで、兵士たちの死体は

ほとんど片づけられていないようだった。

金目の物は、はぎ取られているが、どちらが薩長軍でどちらが幕府軍かは、

およそ区別がつき、10対1、いや20対1の割合で、

圧倒的に幕府軍の屍の方が多かったのだ。


(これは多分、アームストロング砲で、関所の門を吹っ飛ばし、

後はガトリング銃で、皆殺しといった感じじゃな)


「なんてことだ、日元人どうしが殺し合ってどうするんだよ・・

龍馬さん、急ぎましょう」



****



開たちは、人目につかないよう、東海道から少し北よりの

今の東名高速道路が通っている辺りを飛んで行った。


「あれが、本陣かな」

今で言う、藤沢市あたりだろうか、宿場町の外れにある

比較的大きな寺(清浄光寺)に、多くの兵が詰めている。


「龍馬さん、少し離れた所に降りましょうか」


「いや、開師匠、それだと、本陣には入れてくれまいて、

こういう時は、強引に行ったほうがええっちゃ」と、

龍馬さんが、寺の境内に向かうので、慌てて開も後を追う。


「ちぇすとー」

大きな木を回り込むようにして、突然境内に降り立った龍馬たちに、

いきなり侍が斬りかかる。


ものすごい一撃だったが、それを難なく躱した龍馬さんが、

「驚かして、すまん、すまん、半次郎どんか、儂じゃ、

土佐脱藩の坂本龍馬じゃ」と斬りかかってきた侍に声を掛ける。


「坂本さんか、生きておらしたのか・・」


「ああ、なんとかな、それで、西郷どんに会いに来たんじゃが」



****



眼がグリっとした関取のような大男と、細身の面長の男が開の目の前に座っている。


(あれ?西郷さんって、坊主頭じゃなかったっけ?)


(ああ、あの上野の像の西郷隆盛さんは、もっと後の姿だよ、

隣は大久保利通さんだな、おどろいたな、大久保さんも

一緒だったなんて、てっきり京都にいると思っていたんだが・・)


(キター、西郷さんキター、大久保さんもキター)偉人好きの開は

内心大喜びだった。


「坂本さあ、無事でごわんしたか」西郷さんが、

本当にうれしそうに語りかけてくる。


「して、そちらの御仁は?」対照的に大久保さんは、

苦虫を潰したような顔で、開の事を聞いてくる。


「一条美子殿の兄さんで、一条開ノ宮殿じゃよ。

美子殿は、このたび正式に陛下とご婚約を成されたので、

まあ言わば、陛下の義理兄になるお方じゃのう。

訳けあって、今まで伊勢や熊野の山中で陰陽師系の修行をされておられてな、

偶然、京で知りおうて、刺客に襲われた、美子殿を魔法の術によって

助けてくれたんじゃよ。

それからは儂も魔法を習っておっての、今は儂の魔法の師匠でもあるぜよ」と、

打ち合わせ通りの履歴を龍馬さんが話す。


「ほう、一条美子殿を魔法で助けたと・・」

大久保さんが、鋭い視線を向けてくる。


一方、西郷さんは

「ま、魔法でごわすか、坂本兄は、いつもすごか人と

知り合いになりもすな、坂本兄の師匠でごわすか」と

好奇心丸出しで、聞いて来た。


「で、今回は何用で」


「これを陛下より預かってまいりました」と

幕府軍への攻撃中止命令書を渡す。


「な、この徳川討伐自体が、岩倉卿と三条卿の策略だったとは・・

一蔵(大久保)どん、こりゃはよ、この戦、止めなならんど」


「なりませぬな」


「はあ、なぜでごわす」


「吉之助(西郷)どん、戦には勢いが必要じゃ、ここで兵を引いてしまえば、

また会津が調子に乗りますぞ、船の数ではこちらが、負けておるのじゃ

勝てるときに勝って徹底的に潰しておかんと、逆に戦が長引きますぞ」


(さすがに、大久保さんだな、彼我の戦力を冷静に分析しておられる)


(確かに小栗さんあたりは、榎本艦隊を使って、東海道を進む薩長軍に海から、

砲撃する案を将軍に進言していたよな)


(ああ、あれをされたら官軍は危なかっただろうって、歴史評論家が言ってたな)

勾玉内で男たちが議論を始めた


「あの、それなら、大丈夫だと思いますよ」


「どういうことじゃ」


「えっとですね、同士が、向こうの陣にも説得に・・」開の説明が終わらぬうちに

伝令が転がり込んできた。


「た、大変です。敵陣に、青鬼と桃鬼が現れ、我が先鋒軍が

壊滅しました」


(土方さん、沖田君・・何をやってるんだよ)


「ばかな、先鋒には、蔵六(大村益次郎)さんの、ガトリング銃が

あるだろうに」


「それが、鬼共には全く効かんとです、大村先生もやられました」


「なんと・・」


外が騒がしくなると同時に、2人目の伝令が駆け込んでくる。

「お、鬼が、本陣に迫っております、どうかお逃げくだされ」


何発もの銃声や、刀の交錯する音と共に、怒号が聞こえ、

大音響と衝撃を伴って、屋根を突き破って、青鬼と桃鬼が突っ込んできた。

半次郎さんが、咄嗟に斬りかかるが、逆に一刀両断される。


「な、なにー」


「西郷!覚悟せい」一刀のもとに西郷さんを切り裂こうとする刀を

一瞬で、赤い鎧を身に纏った龍馬さんが受け止め、

同じく、大久保さんに斬りかかった桃鬼を、白い鎧の開が止めた。


「土方!おまん何しちょる、歴史を振り出しに戻す気か」


「どけ、坂本、こやつらは、近藤さんを、新撰組の仲間を、

虫けらのように殺しおったんだぞ!」


(だめだ、風の谷のナ○シカに出てきた○ームのように怒りで我を忘れている)


「戦じゃきにしょうがあるまいて、おまんも今、半次郎どんを一刀両断したじゃろうに」

事切れた、半次郎さんをちらっと、見ながら龍馬さんが説得しようとする。


「どいてください、師匠、どかなければ師匠といえども容赦しませんよ」


(あれ、沖田君の方は冷静なのに斬りかかるって・・)


「う!!」

沖田総司の三段突きが炸裂する。

咄嗟にマジックシールドを創り出し、何とか受け止める。

(やばい、軌道が読めないし、早すぎる、このままじゃやられる)


龍馬さんに、北辰一刀流を習ったといっても、たかだか3日程、

そんな開が、幼い頃から天然理心流を習い、天才剣士と呼ばれた

沖田総司の剣をいつまでも躱せ続けられるわけがない。


(どうする、どうする、海?何か打開策は?)


(・・・)


(いつも騒がしいのに、なんでこんな時に限って、おとなしいんだよ・・

は、そうだ、もしかしたら、あれが使えるかも)


(おう、それだ、それ、開がんばれ)


(まだ、なにも言ってないじゃん・・)


開は、銀行の受付などに用意してある、泥棒に投げつける、

蛍光塗料入りのカラーボールを思い出し、

蛍光塗料の代わりに、中にGホ○ホイについている接着剤が

入っているボールをイメージして、物質化した。


ボール1個を、物質化するのに100MPほど必要だったが、

最近は訓練のおかげか、1日の魔力創造量が10万MPを超えているので

飛行魔術と肉体強化魔術でそれぞれ、1万MPずつ消費していても、

まだ8万MPの余裕があったのだ。


開は接着剤入りボールを100個ほど物質化すると、土方さんと沖田君の

周りに浮かべて、一斉に投げつけた。


いくら、剣の達人とはいえ、360°の全方面から、それぞれ50個もの

接着ボールを投げつけられれば、全てを避けきるのは不可能で、

変な例えだが、二人はGホ○ホイにつかまった、Gのように動けなくなった。


「龍馬さん、すぐに戻りますから、土方さんたちに誰も手をださないように

見張っててください」半次郎さんに駆け寄ったが、事切れていて、治癒魔法は

無理だと判断した開は、龍馬さんたちに、そう告げると飛びだそうとした。


「おう、開師匠、でもこれじゃあ、誰も動けんぜよ・・」

土方さんや、沖田君がはじき飛ばした接着ボールが、龍馬さんをはじめ、

西郷さんや、大久保さんにもぶつかっていたみたいで、みんな動けなかったのだ。


「あれ、す、すみません・・とにかく、すぐ戻りますから」

と、開は飛んでいく。



****



しばらくすると、開がうなだれながら、近藤勇と思われる遺体を抱いて

戻ってきた。


「す、すみません、半次郎さんと同じで、間に合いませんでした・・」

このところの魔力創造量の増加により、かなりの瀕死状態でも

回復させる、治癒魔法が使えるようになった開だが、

死者を生き返らせることはできなかったのだ。


「もう少し早く、ここに来ていれば、止められたのに・・」

半次郎さんと、近藤さんの遺体の横で、

開は握った拳を振るわしながら、ポロポロと涙を落とした。


「開師匠、そんなに自分を責めちゃいかんぜよ、慎太郎の時にも

言うたが、儂らは、新しい日元国を創るための礎となる志を抱いて、

脱藩したじゃきに、その時に命は天に預けて来ちょるがな。

近藤さんや、半次郎どんも、たぶんそうじゃと思うぞ、なあ土方」


「新しい日元国を創るための礎か・・そうだな」龍馬の

命を天に預けてきているという言葉と、

初対面の近藤の死を本気で悲しみ、

涙を流す開の姿に魅入られ、

土方、沖田、西郷、大久保をはじめ、

周りで様子をうかがっていた兵士たちからも、殺気が消えていった。


それは、風の谷になだれ込んだ○ームの群れの攻撃色の赤い眼が

ブルーに変わっていくような感じで、戦場全体が静かになったのだった。


「で、師匠、そろそろ動けるようにしてほしいんじゃが・・」


「あ、すみません」開は慌てて、物質化していた接着剤を消した。


 

****



それから、2日後の早朝、清浄光寺の境内に、開たちがそろっている。


「じゃあ、開師匠、一足先に行ってるきに」


「はい、気を付けて」


「・・・いろいろ、すまなかった、師匠」土方が頭を下げる。


この2日間は怒濤のごとき忙しさだった。


開はあれから、魔力が尽きるまで、戦場を飛び回って、治癒魔法を掛け続けたのだ。


ちなみに、後に陸軍創始者とも呼ばれる、大村益次郎さんは、重傷だったが、

開の治癒魔法のおかげで、なんとか生還していた。


そして、官軍、幕府軍関係なく、生き残った者全員で、清浄光寺のそばの

土地を譲り受け、そこに近藤さんをはじめ、全ての兵士の遺体を埋葬したのだ。


両軍合わせて5千人(幕府軍4千人、官軍1千人)もの墓が並ぶ様子は、

見る者に、強烈な印象を与え、特に情の深い西郷さんが、

幕府との和解賛成派に回ってくれたことは大きかった。


そのため、幕府側の陸軍総裁に復帰した、勝海舟の弟子だった

龍馬さんと、新撰組の土方さん、沖田君が、会談の根回しのため、

先に江戸に向かうのだ。


「顔を上げてください、土方さん。まだまだ、僕らには、やることが

残ってますよ。全部終わったら、またここに報告に来ましょうよ」

開は、現在の状況を陛下に知らせるため、別行動をとるのだ。


「そうだな、じゃあ、5日後に、品川で会おう」

そう言うと、龍馬さん、土方さん、沖田君が、人目につかぬよう、

一気に上空高く舞い上がり、海の方に飛行していった。


その姿を、恨めしそうに見ている西郷さんたちに開が声をかける

「その、西郷さんも大久保さんも大村さんも、魔法の素質があるみたいなので、

もしよければ、時間があるときに、魔法回路を調整してみましょうか」


「「「 誠ですか(ごわすか) 」」」


「え、ええ、でも飛行魔術は結構魔力を使うので、みなさんが

使えるだけの魔力があるかどうかは、まだわからないですよ」


「「「 それでも、いいです(よかです)から、よろしゅうたのみます 」」」


「そうですか、じゃあ江戸で」

官軍2万人(1千人死亡で、現在は1万9千人)の内、諸藩から集めた、

農民兵1万8千人を帰藩させ、薩長主体の1千人のみで、徒歩で江戸に向かい、

5日後に高輪の薩摩藩邸で、落ち合う手はずになっていたのだ。


開も京都に向けて飛び立った。



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