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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
12/55

012 新撰組の土方歳三も魔法使いになる?

「うう、ここは?」

開が土方さんの頭に巻いていたサラシを外しても、

目や頭にヒーリング魔法を掛けていると、

赤い鎧の龍馬さんに、渾身の右ストレートでノックアウトされた

土方歳三が目をさました。


「う、斬られたはずの左目が見える!お主何をした。いや、お主何者じゃい」


「話は後で、左肩もケガしてますよね、ついでに治療してしまいましょう。

起き上がれますか」

開はそう言いながら土方さんの上体を起こすのを手伝い、左肩のケガの様子を見た。

(これは、重傷だな、かなりの痛みがあったはず、どれだけ我慢強いんだよ)


よく見ると、左肩だけでなく、脇腹にも銃で撃たれた後があり、

普通の人なら痛みで動けなくなり、出血多量でとっくに

死んでいてもおかしくない状態だった。


開がその両方の傷をヒーリングしていると、龍馬さんが、雑炊を持って入ってきた。


「土方、おまんしばらく何も食うとらんじゃろう、

まず、これでも食え、話はそれからじゃ」


龍馬さんの毒気を抜くような話し方と、卵の入ったおいしそうな、

雑炊の臭いに土方さんも、素直に従った。



「ごちそうさまでした・・すまない」

卵入り雑炊を3杯もおかわりした土方さんは、食器を片付けに来た、

お登勢さんにお礼を言うと、これまでの、いきさつを語りはじめた。


徳川慶喜公が、大政奉還をなされ、大阪から船で、江戸に戻られてから3日後、

突如、天皇より勅令が下されたのだという。


その勅令の内容を要約すると、

{徳川家が朝廷に対して謀反を起こしたので、これを鎮圧するため、

西郷隆盛を征夷大将軍とした、官軍を組織した。

諸侯は、この官軍に馳せ参じ、朝敵である徳川を撃て}ということだった。


ご丁寧に会津藩や壬生の新撰組は、朝敵と名指しで批判されており、

戸惑う、京都の会津藩邸や新撰組に、薩長軍が襲いかかってきたのだ。


しかも薩長軍には、なんと錦の御旗まで掲げられていたとのことだった。


不意をつかれた、会津藩や新撰組は、半数以上が討ち取られ、

残った者は、這々の体で、東海道を江戸に逃げ帰っているのだという。


土方さんは、これは絶対に龍馬さんの仕業だと思い、

龍馬さんの行き先を調べ、以前見回り組が押し入った寺田屋に

あたりをつけて、やって来たのだという。


「開師匠、どう思われますか」龍馬さんの質問に内心

師匠と呼ぶのは、やめてくれと思ながらも、

勾玉内の海たちの話を聞きながら、

「僕の知っている歴史でも、12月9日に岩倉具視を中心にした倒幕派が、

地位挽回のために、王制復古の大号令というクーデターを起こして、

御所を封鎖し、勝手に錦の御旗を作って、内戦を仕掛けてきます。

その最初の内戦が、ここ伏見と鳥羽で、1月3日に始まり、それに大勝した

官軍こと薩長軍が江戸へ攻め上って行くんです。

でも、そうなるにはまだ一月ほど余裕があるので、

その間に、お田鶴さまの紹介で、三条実美さまや岩倉具視さまを

説得しようと思っていたのですが・・」と、今後の情勢を話した。


「ふむ、やはりお田鶴さま一人では、荷が重すぎたか、

よし、ここは儂が、師匠に教えてもらった飛行魔術で

助けに行ったほうがよかろう」

覚えたての飛行魔術を使ってみたくてしょうがない龍馬さんが

そう言いながら、寺田屋の2階から飛び出そうとする。


「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ、こんな昼間から飛んでいったら、

怪しまれて、話も聞かずに、砲撃されますから・・」


「大丈夫です師匠、儂には肉体強化魔法もありますから」と

一瞬で、赤い鎧を身に纏った龍馬に、

「いや、だからそれじゃあ余計怪しまれるでしょ」と押し問答をしていると

天照さまが、中身が麻衣ちゃんの美子さんを連れて入ってきた。


「何をしとるんじゃ、まったく」と言いながら天照さまは

龍馬と開にゲンコツを落とした。


その様子をあっけにとられながら見ていた土方は、

美子さんの顔を見るなり、顔色を変えた。


「も、もしや一条美子さまでありますか!何とぞ、徳川をお守りくださいませ。

どうか、陛下に徳川は、朝敵ではないと、進言してくださいませ、何とぞ、何とぞ」と、

額を畳みにこすりつけるようにひれ伏した。


「新撰組副長の土方歳三殿でしたね。顔を上げてください。

私も日元人どうしが、これ以上殺し合うべきではないと思っており、

そのことを、これから陛下にお伝えしに参ろうと思っていたところです。

もし、よろしければ土方殿も、ご一緒に参りませんか」


(おお、さすが俺の妹の麻衣だ、少し憑依していただけなのに、

完璧に美子さんに見えるしゃべり方だぜ)勾玉内の海が自慢げだった。


「あ、ありがたきお言葉、しかし、御所は、封鎖されており

たとえ、一条美子さまでも陛下には会えないかと・・」


「大丈夫ですよ、こちらには、開兄い・・、いえ

大魔法使いの開殿と、卑弥呼の再来と呼ばれる、テラス巫女がいますから」


「おお、貴殿は魔法使いだったのですな」


「土方、おまんやけに素直に信じよるな」


「自分の傷の深さは自分が一番よう知っておるよ。

左目をやられ、腹と肩を撃たれたからのう、

なんとか、お前に一太刀浴びせて、死のうと思っておったのだ。

それが、このとおり全快したんじゃ、信じるしかなかろう。

で、貴殿の事を話してもらえるとありがたいのだが・・」


開は、昨晩、今後、人から聞かれた時のために、自分達の出身を龍馬さんと

打ち合わせしていたとおりに、異次元世界から来たことは伏せて、

自分は陰陽師、安倍晴明と、弘法大師、空海の子孫で

様々な術が使える大魔法師であり、高野山から大台ヶ原を中心に

山伏のように修行をしてきたこと(ほぼでっちあげ)。


テラス様(天照大神さま)は、天上界の天照大神さまの声が直接聞ける

巫女として、邪馬台国の卑弥呼の時代から繫がる巫女の子孫であり、

近頃下界が騒がしいので、開と共に、伊勢神宮から京に様子を見に来たこと。


その途中で、龍馬や美子に出会い、怪我をしていた美子を助けた事などを話した。


「ちなみに、土方殿、貴方にも、魔法の素質があるみたいなので、

傷の治療のついでに、魔力回路も整えておきました。

たぶん龍馬さんと同じ肉体強化魔法が、使えるようになりますよ」


「誠ですか、敵である拙者にまで、かたじけない・・」


「敵って、同じ日元人ではないですか」


開は、土方さんが護ろうとする、徳川家に対する忠誠は

立派な事であるが、日元国を取り巻く世界情勢が切迫しており、

このまま内乱を続けると、清国のように、欧米列強に植民地にされてしまう事。

それを防ぐには、早急に争いを止めて、日元人が一致団結して、

外交に当たらなければならない事を分かりやすく説明していった。


「おお、目から鱗が落ちる気分じゃ、開殿、儂も龍馬と同じく、

貴殿を師匠と呼ばせてもらいますぜ」


「いや、それはちょっと・・」


(やけに素直に話を聞くと思ったけど、開、おまえ、

土方さんの、チャクラキレートもやっただろう?)


(あら、いいじゃない。龍馬さんもそうだけど、

この時代の男って、なんて純粋で真っ直ぐなんでしょう。

素敵だわ、ねえ実咲さん)


(ええ、ほんと、カッコイイわね)


(母さん・・)


((お前・・))勾玉内がまた騒がしくなっていた。


「おお、土方も魔法が使えるようになったがか、そりゃええ、

それじゃ師匠、ここはやっぱり飛んでいきましょうよ。肉体強化魔法と

魔法鎧を装着すれば、2人ぐらい背中に乗っけてでも飛べるでしょう

土方には、後で魔法を教えるとして、とりあえず今は

儂が紐でぶら下げて行きますわ」


「だから、昼間から飛んで行ったら、大騒ぎになるでしょうが」

どうしても、飛んでみたい龍馬さんの提案に半分あきれながら

開が反論した。


「なら、瞬間移動すればよいじゃろう」と天照さまが言う。


「ええ、出来るんですか?確か一度行った所でないと行けないのでは」


「ふん、御所の場所は変わっとらんのじゃろう?だったら、平安京に

都を移した時に、桓武に呼ばれて行ったことがあるわ」


「桓武とは、桓武天皇の事でしょうか?

それに、瞬間移動?テラス巫女はいったい何歳でござろうか、

巫女は長寿だと聞いた事がございますが、もののけ・・ぐわ」

土方さんがそう呟いたとたん、天照さまの回し蹴りが炸裂した。


「歳三とやら、おなごの年を推測するものではないぞ」と

ものすごい殺気で警告する天照さまに、

コクコクと頷く、土方さんであった。



****



「だは、あ、あぶなかったなあ、いきなり敵陣のど真ん中に

移動してしまうとは・・」


「土方殿、大丈夫ですか、あ、血が、開殿!」

開が直ぐに土方のそばに来て、治癒魔法を掛けていく。


「師匠、度々すみません」


「いえ、こちらも迂闊でした、」


あれから、天照さまの瞬間移動で、御所に飛んだのだが、

薩長軍が警戒している、ど真ん中に現れてしまったのだ。

開と龍馬が白と赤の鎧姿になって、正面からの発砲は

防いだのだが、側面からの発砲に対処できず、

危うく美子さまが撃たれそうになった所を、土方が

身を挺して守ったのだ。


再び伏見の巨椋池の湖畔に戻って来て、一息つくと龍馬が尋ねる。


「どうしましょうか、開師匠?夜になったら、再び飛んでみますか」


「いえ、あの様子では、夜でも警戒しているでしょう、困ったな

なんとか、早く天皇陛下に会って話しをしなければ・・」


「あの、陛下に手紙を届けるのは、どうでしょうか?

一つだけ、心当たりがあるんです」

美子(中身は麻衣)さんの記憶では、陛下の基には、

隠岐出身の儒学者中沼了三先生が、教育係として、

よく御所に出入りしているのだという。

そして、中沼先生は、女子にも男子と同じように接してくださるので、

美子も、何度か、講義を聴きに、先生のお屋敷に伺ったことがあるのだという。


ただ、先生のお屋敷は、銀閣寺のそばにあるそうなのだが、

天照さまが、銀閣寺の場所を把握しておらず、瞬間移動ができないとのことで、

この際、夕方まで、巨椋池で、土方さんの魔法特訓をしてから、

龍馬さんがやりたかった、飛行魔術で、向かうことになったのだ。



****



「開兄ちゃん?たぶん、今のが、逢坂の関だと思うから、

このまま山の上を飛んでください」

背中にまたがった、麻衣ちゃん(美子さま)が、

後ろから顔を近づけて指示を出してくる。

土方さんには聞こえないから、妹口調だ。


「わかった」

開は、飛行魔法と肉体強化魔法そして、開を中心に2mぐらい周りを覆う、

シールド魔法を同じく展開しながら、お姫様抱っこで、天照さま、そして

背中に美子さまを背負って、高度1000m程で、銀閣寺方面に飛行していた。


いくらか暗くなってきていたが、さすがに京の街上空を飛行するのは

危険だということで、巨椋池から、東に飛び、しばらく宇治川に沿い

そこから、比叡山脈ぞいに北上していたのだ。


(しかし、この時代の名のある侍は、みんな化け物かよ・・)


龍馬さんと同様に赤色系統の魔力があると判断した土方さんの

魔力回路を修復してあげて、魔力の使い方を教えてから、

まだ、半日も経っていないのだ。


なのに、土方さんは、肉体強化と鎧魔法(土方さんの鎧は青色だった)を早々と覚え、

出発する1時間前には、なんと飛行魔術まで覚えてしまったのだ。


最初のうちは、2回ほど巨椋池に落ちたが、それでコツを掴んだようで、

今は、危なげなく、開の左後方を飛行しているのだ。


さすがにシールドを広げて張ることができないので、

天照さまと、美子さまは開が背負っているが、

{最初は2人そろって開に跨がる予定だったのだが、

なぜか天照さまが、お姫様抱っこを希望されたため、背中には

美子さましか跨がっていない}

それでも、この魔法上達速度は異常だった。


(こんなに簡単に飛行魔術を覚えてしまうなんて、

俺の10年間の努力は、なんだったんだよ・・)

開が心の中で歎いていると、


「お兄ちゃん、見えてきたよ。あれが銀閣寺だと思うから、

もう少し高度を下げてもらえるかな、ほらあの、庭に大きな木が

生えている家が、中沼先生のお宅だよ」


「了解」

開は、両腕が塞がっているので、念話で龍馬さんと土方さんに

高度を下げる事を伝え、ゆっくりと降りていった。



****



「ほほほ、空から、赤鬼と青鬼が降りてきたと思ったら、美子殿か」


(でたー、ヨーダがでたー)勾玉の中で海が騒ぐ、


確かに、耳を少し尖らせて、緑色に着色すれば、

スターウォーズに登場するヨーダ師匠に間違えるような

仙人のような人物が立っていた。


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