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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
11/55

011 麻衣ちゃんの決意

「これは・・」


麻衣ちゃんになった、美子さまに抱きつかれたとたん、

一瞬、意識が飛んだ開が目を開けると、海と海の両親、そして開の両親と、

輪郭が少し、ぼやけていると表現していいのだろうか、

麻衣ちゃん?の姿があった。


「勾玉の中だよ」海が答える

どうやら、天照さまの力で、魂が勾玉の中に吸い込まれた事に

開はようやく気がついた。


「え、じゃあ俺の肉体は?」


「まあ、ほとんど時間停止状態じゃが、大丈夫じゃ、3次元世界と、

勾玉内の時間の流れは違うからのう、1時間ぐらいなら、ごまかせるはずじゃ」

そう、答えたのは、月読さまにそっくりな、金髪の女性だった。


「え、もしかして天照さまですか」

(初めて見たよ。外見は20代後半ってとこかな?とても1万年も日元国を

統治してきたとは思えないよなあ、女神さまってある意味すごいな)


「当たり前じゃ、お主、何か変な事を考えておりゃせんじゃろうのう?」


「・・いえ、まったく。美しい大人の女性がいらっしゃったので、

驚いただけです・・」


「そうか、そうか、」

海の母親の実咲さんが、ケーキを持って来た。


「開くんどう?すごいでしょ、この間、瀧原宮で実体化してもらってから、

この中でも、食べたり飲んだりしたら、味がわかるようになったのよ」


実咲さんの話だと、強くイメージすれば、ケーキやワインなどが現れて、

しかも、味わって食べたり飲んだりできるのだという。


「ほんとですね、ケーキの味がします」

(でも、これってトイレには、行きたくならないんだろうか?)


「お主、また変な事考えていないだろうな、霊体なんじゃから、

厠などに行く必要はないぞ。それより、美子の魂の件じゃ」


「そ、そうでした。すみません」


天照さまの話によると、美子さまの魂は、斬られた時に、帰天したらしい。


そこで、憑依していた、麻衣が代わりに肉体に入って、

なんとか肉体生命を維持しているのだが、

完全に魂と肉体がリンクしていないことと、

もともと麻衣の魂は7つに分かれたうちの、

1つ分のチャクラエネルギーしかないために、このままだと、

あと1年程で美子は死んでしまうのだという。


「そうなんですか、でもまあ、美子さんの魂はすでに天国に帰られたんですよね。

だったら、麻衣ちゃんの魂も無理しないで、1年経ったらその肉体から抜けてもらって、

本来の麻衣ちゃんの体に戻ればいいんじゃないですか。

美子さんの肉体は、死んでしまうことになるので、少し残念だと思いますが、

今回の人生は、それで納得してもらうしかないんじゃないですか」


「開、それが、勇太郎さんの話じゃそう簡単にいかないんだよ」


「と、いうと?」


海の父親の勇太郎さんが言うには、月本国と違い、日元国では、

一条美子様が、明治天皇の子供、つまり大正天皇を生むのだという。


「なんですとー、この方が明治天皇の奥様になられる方だったんですか」


「そこからかよ開、もうちょっと歴史を勉強しとけよ」


「うう、正論すぎて反論できねー」


「うみ(海)兄ちゃんと、開兄ちゃん」


「うみ兄ちゃんって・・」


「え、だってカイ兄ちゃんが二人いるから紛らわしいかなと思って」


「だったら、こいつの方をヒラク兄ちゃんとかにしてだな」


「いや、麻衣ちゃんその呼び方グッド!」


「てめえ、自分がそのままカイ兄ちゃんって呼ばれてるからって」


「で、麻衣ちゃんどうしたの?」


「私、美子さんの体で、数十年生きてみようかなって思って」


「え、でも、そんな事できるの」


「さっき天照さまから聞いたのですが、天照さまのお力で、

肉体と魂を繋ぐ霊子線をきちんと繋げ直してもらうと、

数十年は生きられるって」


「でも、それって明治天皇と結婚して、天皇の子供を産むってことだよね」


「麻衣―、兄ちゃんはゆるさんぞ、そんな好きでもない男と結婚して

その子供を生むなんて、それに麻衣の肉体の方はどうするんだ、

あんな年増にずっと、肉体を預けて置く気か」


「ぐおー」

年増と言った瞬間、海は天照さまの回し蹴りをくらって、

勾玉部屋の壁まで吹っ飛ばされていた。


(普段はいいヤツなんだけど、妹の事になると、暴走しちゃうんだよな、

これが、シスコンってやつか・・まあ、俺も他人のことを言えないか)

「本当にいいのかい、天照さまに頼めば、明治天皇に側室を迎えて、

その中から男の子を産んでもらう事も出来ると思うんだけど」

月本国では、確か正室からは男の子が生まれず、側室の方から生まれた子が

大正天皇になっていた。


「あの、実は美子さまに憑依してから、ずっと美子さまの明治天皇に対する、

愛しい気持ちや、逆に明治天皇が美子さまに対して、抱いておられる

優しいお気持ちが、伝わっていたんです。

だから1年後に、この肉体が死ねば、どれほど明治天皇が悲しむ事になるか、

もし、私にそれを止めることができるなら、止めてあげたいんです。

それに、私も一度ぐらいプリンセスの人生を送ってみたいかなと」


「わかった。それにしても麻衣ちゃんが、皇后さまになるなら

ますます、日元国が滅ぼされないように頑張らなきゃな」


「よろしくお願いします。開兄ちゃん、海兄ちゃん」


「おう、まかしとけ、でも麻衣、そのうみ兄ちゃんと言う呼び方はなあ・・」

海がぶつぶつ言っていたが、みんな無視して、

女性陣がイメージングで生み出す、ケーキを食べながら、

今後の事を話しあった。


結論としては、麻衣ちゃんの気持ちを尊重して

このまま美子さまの肉体に宿り続ける事。

麻衣ちゃんの肉体には、もうしばらく天照さまに入っていてもらい、

できるだけ早く、残りの6つの麻衣ちゃんの魂を見つけ出す事になった。



そして時間停止?が解け、無事に肉体に戻った開は、

勾玉の事は伏せたまま、龍馬さんたちには、妹の麻衣の魂の一部が

美子さまの肉体に入っていることや

引き続き、残りの麻衣の魂を見つける旅を続ける事を話した。


その後、陸奥さんは、隊長の中岡慎太郎さんがいなくなり、

不安な気持ちでいるであろう陸援隊を説得して、

長崎の海援隊と合流させる役を請け負い、

長岡さんには、開や海の父の助言を基に、

これから活躍するであろう、多くの偉人たちに会ってもらい、

開たちとのコネクション役になってもらうことになって、

それぞれ旅立っていった。



****



草木も眠る丑三つ時の巨椋池の湖畔。


「なあ、熊さん、もう帰ろうよー」


「アホ抜かせ、ここまで来たんや、ほんまに梅吉が言うように、

赤鬼と白鬼が出るか確かめんと帰れるかいな」


「そやかて、ほんまに出たらどないする、食われるかもわからんやん?」


「出るわけないやろ、それは、あいつが仕事さぼった言い訳やで、

赤鬼と白鬼の争いに遭遇して、泥水浴びたからこれんかったって

もうちょっと、ましな嘘ぬかせっていいたいわ」


「く、熊さん、あ、あれ、」


「なんや、八っさん、俺を怖がらそうなんて、そうは、・・」


巨椋池上空では、真っ赤な光の玉と、真っ白な光の玉が

ものすごい勢いで、ぶつかったり離れたりしていた。



「くそー、どんどん速くなる、やっぱり龍馬さんは化け物だな」

斬られてもすぐに回復するように、防御と治療を兼ねた

白色の鎧甲をイメージングで創り出した開は、

飛行魔術で浮きながら、赤い鎧をまとった龍馬さんの

攻撃に防戦一方になっていた。


麻衣ちゃんが入った美子さんが意識を取り戻してから3日が経っていた。

あれから、すぐに、天照さまが、麻衣ちゃんの魂と美子さんの肉体の

霊子線を強化したのだが、その様子見と、体力の回復を兼ねて、

もう3日程、寺田屋でお世話になっていたのだ。


その間、開と龍馬は、様々な魔法の練習をしていたのだが、

飛行魔術の練習に限っては、昼間から、大空を飛び回る訳にもいかないので、

真夜中になってから、巨椋池上空で剣の鍛錬も兼ねて練習を行っていたのだ。


「どれだけ適応能力が高いんですか!」

開は魔法力がほとんど無かった頃からずっと、10年間、毎日欠かさず

イメージトレーニングをしてきたのだ。

それに対して、龍馬さんは、魔法回路を整え、魔法が使えるようになったのは、

わずかに4日前である。


「たった、4日で、ここまで肉体強化と飛行魔術を使いこなすなんて・・」


「いやいや、開師匠も、剣術は初めてだろうに、たいしたもんじゃから」

そう言いながら、龍馬さんがせまる。


「ぐう」龍馬さんの袈裟斬りをかろうじて受け止める。

赤い甲冑に身を包んで、大空を自由に飛び回る姿は、

宇宙空間でモビルスーツという大型ロボットを操縦して戦う

SFアニメに出てくる、主人公のライバルの仮面の少佐のようだった。


袈裟斬りを止められた赤い鎧は、今度は鋭い突きを繰り出してくる、

咄嗟に盾で受け止めるが、防ぎ斬れなかった突きは、

そのアニメの主人公が操縦していたモビルスーツをイメージして纏った

開の兜にまで、到達する。


「がは」湖面スレスレまで弾き飛ばされた開は、

「たかが、メインカメラ(本当は強化ゴーグル)をやられただけだ」と、

そのアニメの主人公のようなセリフを吐く。


「だから師匠、もっと、スコーンと来て、ズバーとやらなきゃ

あかんっていってるじゃろうて」

(だから、そんなアドバイスじゃ、意味わからないですよ・・)


相変わらずのアドバイスにあきれながらも、

そのアニメに出てきた敵の戦法を思い出した開は、

「これならどうだ」と自分の分身を2つ、魔法で創ると、

とどめを刺そうと、湖面に降りてきた龍馬さんに縦列で迫った。


「ジェット○○リームアタック!」


「うおー」一人目の分身を大太刀、二人目の分身を小太刀で受け止めた

赤い鎧の龍馬さんも、最後の三人目の開の突きは受け止められずに、

数十m程吹っ飛ばされて、盛大な水しぶきを上げた。


「すげー」その様子を見ていた熊さんと八っさんは、

後に、開たちと仲良くなり、明治維新で職を失った藩士の救済を兼ねて

歩兵役9人と飛車角2人に金、銀、桂馬など、将棋の役を

人間に置き換えて20人の飛行魔法チームで行う、

バトルスポーツの興行をまかされ、やがて、

日元国中にプロチームが結成される、一大娯楽コンテンツに

発展させることになるのだった。


また開が見せた、アニメの敵役の戦法「ジェット○○リームアタック」は、

日元国の騎兵隊の生みの親とも呼ばれる、秋山好古にも伝わり、

日露戦争の奉天の会戦で多用されることになるのだった。



****



美子さんの体もようやく回復し、いよいよ京都に戻ろうと準備をしていると、

お登勢さんが、呼びに来た。


「外に、血まみれの壬生浪のお侍が来てますけど、どないします。

追い返しましょか」


「どれ」龍馬さんは、臆することなく、2階の窓から、戸口を覗く。

そこには、片眼をさらしで縛った、傷だらけの新撰組の侍がいた。


「坂本!、あれが、お前のやり方か!卑怯な手を使いやがって!

降りてこい!、最後に俺と勝負せい」

そう叫ぶ侍に開は見覚えがあった。

(あの人は、もしかして・・)


いつの間に下に降りたのか、その侍の前に龍馬さんが立った。


「土方!久しぶりやのう、お主また、目つきが悪うなっちょるぜよ」

(やっぱり、新撰組の副長土方歳三さんだ!)

龍馬のあとを追っていそいで降りてきた開は、血まみれの侍に

龍馬が掛けた言葉で確信する。

(すげー本物だ)


「大政奉還がそげん、気に食わんとか、しかしのう土方、

あれが一番、人が死なんと、まるう収まる案じゃったし、

最終的には慶喜公が決断なされたことじゃぜ」


「うるせー、その話じゃねえ!慶喜さまが政権を奉還したにも

関わらず、徳川家を朝敵とし、偽物の錦の御旗を立てて

攻めてきた事じゃ!汚い手を使いやがって」


「なんじゃと、錦の御旗?ちっ岩倉卿か・・」


「しらばっくれるな、薩長同盟にしろ、大政奉還にしろ、

全部黒幕は、おまえだったじゃねえか、今回もお前だろ!覚悟せい」


刀を抜き、斬りかかる土方に、お登勢さんを始め、

まわりにいた女中から悲鳴が上がる。


開が助っ人に入るよりも早く、龍馬は魔法で赤い鎧を身に纏うと

一瞬で、土方の懐に入り、アゴに渾身の右ストレートをたたき込んだ。


「ぐは」土方はそのまま地面に大の字に倒れた。



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