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カイと偉人と日元国  作者: ベガ爺
第一章 幕末編
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001 もう一人の妹

あけましておめでとうございます。初詣の帰りに本屋に立ち寄ると、今年は明治維新から、150年とのことで、関連本が沢山並んでいました。龍馬好きの私は早速、数冊の維新関係の本を買い求め、龍馬が暗殺されなければ、戊辰戦争なんかも回避されて、また違った維新後が展開されたのではないかと、空想しながら家路につきました。おみくじは、小吉でしたが、「新しきことに挑戦すれば、道開くなり」と書いてあったので、新道開あらみちかいくんが、明治時代に飛んで、別の歴史を作っていく小説に挑戦してみようと思いました。はじめての投稿なので、つたない文章になると思いますが、ご指導よろしくお願いします。

「はあ、ぜんぜん伸びてねえや。やっぱ、おれの人生終わったな・・」


新道開あらみちかいは、五十鈴川の御手洗場の石段に座ると、


先ほどメールで送られてきた、魔力診断結果の値を見て


深いため息をついた。




*** 新道開様の20歳の最終魔力量の検査結果をお知らせします。




赤色の肉体強化系魔力量10MP,


黄色の光系魔力量20MP,


青色の知力系魔力量10MP,


緑色の調和系魔力量10MP,


紫色の礼節系魔力量10MP,


銀色の科学系魔力量10MP,


白色の医療系魔力量20MP, ***




と表示されていて一番魔力が高い黄色と白色の医療系魔力量でも20MPで、


7色合計でも90MPにしかならず、


20歳の平均魔力量であるレベル3(1000~9999MP)に比べると、


わずか100分の1の魔力量で、幼稚園児程度の魔力量しかないのだ。




「はー、これからどうやって生きていこう・・・」




開の住む月本国(つもとこく、または、つきもとこく)は


魔力量の多さで人生が決まるといってもいい世界である。


どの人間もこの世に誕生すると共に、魔力を授かり


肉体が生長するに従って、1日に使える魔力量も伸びていくのだ。




しかし、肉体の成長が20歳ぐらいで止まるように、


その人間が1日に使える魔力の増加も、20歳で止まるのだ。




いや、魔力の増加は肉体の成長より、もっとハッキリしていて、


20歳の誕生日を過ぎると、魔力の増加はピタッと止まるのだ。


細かくデータが集められるようになった、この100年間で見ても、


20歳の誕生日以降に魔力が増加した人間の記録は一つもいないのだ。




なので、子供が生まれると、世間の親達は、こぞって


「グングン魔力が伸びる方法」や


「他の人に教えたくない、これを食べれば子供の魔力が驚異的に伸びる!」


などの解説本を読みあさり、クチコミなどで評判の様々なセミナーや


子供向けの魔力量向上塾などに通わせたりして、


自分の子供の魔力量増加のために力を注ぐのだ。




そんな世界で、開は昨日、20歳の誕生日を迎え、


その時に測定してもらった、魔力量の最終測定結果が、これなのだ。




つまり開の魔力は、もうこれ以上1MPも伸びない。




開はこれからの人生を、1日の創造魔力を7色魔力の合計90MPで、


毎日、生きていかなければならないのだ。


これは、月本国の社会では死刑宣告を受けた事に等しい。




なぜなら発展途上国なら、また違うのだろうが、


開が住む月本国のような魔法文明社会では、


1日生活するのに、とにかく魔力がかかるからだ。




例えば、6畳の部屋の照明器具に必要な魔力は1時間に約12MP程


エアコンの作動は1時間に24MP程


冷蔵庫は最近、省エネ化が進んでいるが、


それでも、1時間に18MPは必要で、それが24時間だから、432MPは必要なのだ。


それ以外にも、調理用魔力コンロや魔力炊飯器が1時間12MP程だし、


風呂用の魔力湯沸かし器も12MP程かかる。




また食事の面では、ハンバーガー屋の朝メニューが最低200MP


コンビニの弁当は500MP、牛丼は並盛りで380MP程なので、


文明的な生活に必要な魔力量は、1DKのアパート暮らしでも


1日最低、1700MP程度は、かかるのだ。




月本人の成人の1日の平均魔力創造量


(6時間睡眠後の測定値)は3000MPなので、


平均的な月本人なら余裕で払える魔力量なのだが、


1日の魔力創造量が90MPしかない開では、


冷蔵庫を動かすだけでも、途中で魔力切れを起こしてしまうのだ。




だいたいJRの初乗り運賃ですら130MPかかるのだから、


補助魔力をもらわないと魔力列車にすら乗れないのだ。




それなら、クルマで移動すればいいのではと言いたいところだが、


国産の自動車は全て、魔力モーター車だし、欧米メーカーの輸入


外車は、一応ガソリンエンジン車が主流を占めてはいるが、


そもそも月本国にはガソリンスタンドが少ない上に、


ガソリンは1Lあたり200MPもするのだ。




したがって、開の移動手段は、自転車か歩きが主で、行動範囲は


伊勢の街を中心に10km程の範囲内だった。


ちなみに開のような魔力少力者には、


役所に申請すれば、生活保護の一環として、


黒い魔力パスポートに、1ヶ月に30000MPほど補助してもらえる。




魔力パスポートとは、明治30年に配布が始まった、写真付きの


身分証明書がはじまりで、表面に水晶がコーティングされているため、


持ち主の魔力によって、パスポートが輝くようにできている。


さらには持ち主が持つ魔力量によってパスポートの色が違って見える身分証明書で


昔は単なる、身分証明書だった魔パスだが、さまざまな技術の進歩により、


今ではクレジットカード機能もそなえているシロモノなのだ。




開のように1日の魔力創造量が100MP以下の人は


黒色のパスポート(レベル1)で、1ヶ月30000MPの補助がもらえる。




1日の魔力創造量が100~999MPまでの人は茶色のパスポート(レベル2)で


1ヶ月に20000MPの補助がもらえる。




ちなみに生活保護として魔法力補助が得られるのは、


黒色のパスポートと茶色のパスポート、略して、黒パスと茶パスの


2色のみで、茶パスが月本国の人口、約2億6千万人の約1%の260万人程、


開が持つ黒パスは、その260万人の中の約0.1%で26万人程だ。


特に黒パスの所持者は、様々な意味で、他の人々の


哀れみの対象になっていたりする。




なぜなら、7色の魔力量のどれかが1日の魔力創造量で1000MPを超える人が


国民の99%を占めていて、レベル3と呼ばれる健常者であるからだ。




逆に複数の色で1日の魔力創造量が1000MPを超える人はほとんどいないため、


昔から人々は、「月本国の主宰神である、月読さまは月本国の民を平等に


育まれておられる。なぜなら、色の個性はあるけれども、


皆に魔法力を十分に与えられておられるからだ」と、月読神を信仰する一方で、


たまに生まれてくる、複数の色での膨大な魔力保持者に対しては、


神の使いとして尊敬され、その人物が亡くなった後には、


信仰の対象になって、神社が建てられたりしている。




基本的に1色で1日の魔力創造量が1000MPを超えた色の魔法力が、


その人の基本の色になり、その色のパスポート保持者となるのだが、


同じ色でも、


1日の魔力創造量が1万~9万9999MPのレベル4、


1日の魔力創造量が10万~99万9999MPのレベル5、


1日の魔力創造量が100万~999万9999MPのレベル6と


レベルが上がるほどパスポートの輝きが増していくのだ。




例えば、レベル3の白色に比べ、レベル6の白色はパスポートの色が


パールホワイトのような白色になり、そのパスポートを見せるだけで、


ホテルやレストランで優遇されたり、就職が有利になったりするのだ。




1日の魔力創造量が1000万MP超えのレベル7では、


どの色のパスポートも全て、金色に見えてしまうようになる。


そのため、レベル7の人達はゴールドマスターと呼ばれて、


尊敬と憧れの対象になっているのだ。




ちなみに現在の月本国で、レベル7のゴールドマスターは7万人程、


2色で1000万超えのレベル7×2は7000人程、


3色で1000万超えのレベル7×3は700人程、


4色で1000万超えのレベル7×4は70人程、


5色で1000万超えのレベル7×5は7人、


6色で1000万超えのレベル7×6は1人、


7色全てで、1000万MP超えの7×7(セブンズ・セブン)は、


現在のところ1人もいない。




といっても、この制度が始まったのは、明治20年に人工水晶が生成され、


それを使って、明治30年に人工水晶をコーティングした、


魔力表示パスポートを、全ての国民に配布してからの、


この100年ほどの記録なので、それ以前の勾玉まがたま水晶時代には、


何人かの天皇や偉人たちが、7×7の魔力持ちであったのではないかと、


残された文献から推測されている。




勾玉水晶時代とは、飛鳥時代に聖徳太子が、水晶によって魔力量がある程度


測定出来ることに気づいたことから始まった時代の総称である。




聖徳太子は、個人の得意な魔力によって水晶の色が変化することと、


さらには月読神への信仰心が厚く、公正無私の人物ほど、


水晶の輝きが増すことを発見した。




そこで、水晶の輝きが強い人ほど、徳ある人物とし、徳高き人に


まつりごとを行ってもらうため、冠位12階の制度を制定するとともに、


「和をもって尊しとなし、徳在る者を政の基に為す」という


17条憲法を作ったのだ。




当時は、人工水晶など作れなかったので、山から見つかった天然水晶を


勾玉に加工し、魔力が多い者のみに、その勾玉を与え、


その勾玉水晶の色や輝きの違いで、大徳(濃紫)、小徳(薄紫)、大仁(濃青)


小仁(薄青)などと12の階級の役人に、取り立てていたのだという。


戦国時代や、徳川幕府の時代になると、そういった制度は廃れていったが、


明治維新の王政復興運動時に、たまたま、維新の志士たちや後の明治天皇が


強力な魔力持ち達だとわかり、錦の御旗と共に、勾玉水晶制度が


復活したのだ。




そして、人工水晶が作られるようになり、全ての国民に


魔力表示パスポートが配布されてからは、益々魔力量が


重視されるような時代になったのだ。




そんな魔力量至上主義の社会で、魔力量の少ない開は、これから一生


生活保護対象者として、黒パスに魔力量を補助してもらいながら、


生活していかなくてはならないのだ。




最近では、少ない魔力でも動く少魔力機械が出来てきてはいるが、


それでも、開のような魔力少量者は、つける仕事が限られている。




「はあ」開はもう一度ため息をつくと、サラサラと流れる


五十鈴川を眺めていた。




「見つけた!やっぱりここにいたのね、開兄ちゃん。


夕ご飯出来たって、絹江ばあちゃんが・・」




「ああ、舞、ごめん考え事してた」


舞は白色系の治療魔力のが5000MPを超えるため、


13歳からすでに医療系学校に通っている、開の妹である。




「もしかして、魔力検査結果が届いたの、どうだった、伸びてた?」


「いや、まったく去年と変わらなかったよ」


「そう、あれだけリハビリしていたのに、ごめんなさい。私のせいで・・」


「何いってんだ、舞のせいじゃないよ。


それに、今はどんどん少魔力機械の性能も上がっているから、


魔力量が少なくたって 生きていけるさ、気にするな」


「でも、あの時、私を助けたせいで、お兄ちゃんの魔力が・・」




****




2008年3月11日、光系魔力を持つ伊勢神宮の内宮の巫女だった母、美咲と、


緑色と銀色系魔力を持ち、神宮の環境整備や法具を作る仕事をしている父、


勇一郎が休息し、たまたま、一緒に五十鈴川のほとりの御手洗場で


遊んでいた、開と舞を突然の鉄砲水が襲ったのだ。




それは奇妙な光景で、突然、五十鈴川の上空10mぐらいの空間が


バキバキという音と共に裂け、なぜかそこから、大量の濁流が


滝のように吹き出してきたのだった。




土魔法で、慌てて壁をつくりながら、二人を助けに駆け寄る父と


ヒーリング魔法で裂けた空間を修復しようとする母。


開が両親の姿を見たのはそれが最後だった。




舞と共に、あっという間に濁流に呑まれ、気がつくと、宇治橋の袂まで


流されていて、横には、びしょ濡れで、冷たくなりつつある妹がいた。




開は妹を助けるため、ありったけのヒーリング魔法を注ぎ込んだのだ。




何度も何度も、魔力が枯渇して、そして開自身が、再び気絶するまで。




それは、魔力回路が体内に出来つつある、10歳の少年にとっては、


成長する魔力回路を潰してしまう事になるので、絶対にやってはいけないと


言われている行為だったのだ。




事件に巻き込まれるまでは、開の魔力は生まれてから毎年、1000MPも増加し


10歳で、すでに黄色と白色魔力、2色で3000MPを超える天才少年と、


地元では有名だったのだが、3日後に病院のベッドで目覚めた時には、


魔力回路がズタズタに壊れ、修復は絶望的という非情な現実だった。




****




「だから、そうじゃないって、舞。さあ、帰ろう、うん?なんだ」



 

開が立ち上がると、10年前と同じような、バキバキと音がして


五十鈴川の上空に亀裂が起き、そこから今度は濁流ではなく


洋服が焼け焦げ、体中ボロボロになった少女が投げ出されて来たのだ。




開と舞は、瀕死の少女を岸辺に運び抱き起こして驚愕した。




「な、なんで、舞が二人いるんだよ・・」




そう、抱き起こした少女は妹の舞にそっくりだったのだ。





昨日から仕事が始まり、今日は新年会です。なので、初めての投稿なのに予約掲載機能を使ってみました。仕事の合間にコツコツと書いていこうと思うので、週1回ぐらいのペースで、掲載できればいいかなと思っています。これからよろしくお願いします。

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