コーンポタージュ
「はあ…」
重い息を吐くと、目の前には白い煙が広がった。本格的に冬が始まったことが分かる。あの暑かった夏はいったい何処へ行ってしまったのだろうか?いきなり居なくなるとは何と薄情なものか。まるで、あのときみたいだ。
「はあ…」
もう一度息を吐いた。さっきよりも、深く、重く。冷たい風が吹き体を冷やしていく。何か温かいもので体を温めようと思い、近くの公園にある自動販売機へ足取りを進めた。ココア、コーンポタージュにおしるこ、コーヒー。色々な種類が並ぶ中、僕は迷わずコーンポタージュを選ぶ。
ーガコンッ
勢い良く落ちてきたそれを取り、公園内の錆びれたベンチに座る。かじかんだ手が感覚を取り戻してきた。
ーぷしゅ
可愛い音を立てたアルミ缶を傾ける。飲み込んだポタージュが体中を駆け巡り温かい。
「はあ…美味しいー」
幸せな気分に浸りながら、公園内で元気に辺りを駆け巡る子供たちを眺めた。中には半袖、短パンで遊んでいる男子もいて思わず苦笑する。そして、そんな自分も半袖、短パンで寒い中遊んでいたことを思いだした。あのころは、それがかっこいいと思っていたのだ。今は苦くて恥ずかしい思い出だけれど、大切な思い出でもある。
「はあ…僕もあんなころがあったなー…」
思わず溢れた自分の言葉に、一人で驚いた。きっと、最近国語の授業でやった小説のせいだろう。その小説にはこんな言葉があった。
ーーさっきから後ろで、小さい子供たちの声がしている。自分にもあんなころがあった、と半ばうわの空で思いながら、ぼんやりと信号が変わるのを待っている
この言葉を読んだとき、自分と同い年の設定なのにそんなこと思うわけないと思っていた。年もそんなに変わらない子供のくせにと。しかし、今、確かに僕は主人公と同じことを感じた。あの言葉は本当だったのだ。何故だか笑いが込み上げてくる。
「ふふっ…あははっ はぁ…同じだな」
そう呟くと、少しぬるくなったポタージュを流し込み、底に詰まったコーンを取るために缶を傾け叩く。なくなったのを確認すると、ベンチから立ち上がり缶をゴミ箱に捨てた。そしてポケットに手を突っ込み、家を目指し歩き出す。何故だか気分が良いから鼻歌を歌いながら。
「あっ…久しぶりにあいつに電話でもするかー」
ふと、また思い出した小学校の時の友人。いきなり転校してしまったあいつは、いったい今何をしているのだろうか?元気にしているだろうか?そうだ。こっちの地方ではいきなり冬になったことを愚痴ってやろう。そして、お前に似ているとからかってやろう。多分、お前は言うだろうな。
「意味がわからない」
と。