第一話
アミは新卒の6ヶ月目
そこそこの商社に就職してそこそこに社会人生活を上手くやっている
「課長ホントに人使いあらいんだから~」
10時まで書類整理に追われ、クタクタで帰宅の途についている
今夜は金曜日、明日は休みである
本心はお酒でも飲みに行きたい所だが今日は大人しくしてよう
ガチャ
「ただいま~」
誰もいないが自宅についたら一応ただいまだけは言う
アミは会社からあてがわれた一軒家タイプの社宅に住んでいる
1人で住むには広いのだが、空いているし、会社から近いのでここに住んでいる
部屋に入ると、、ガサガサ、、
「ん・・ゴキブリ・・?」
見渡すがなにもいない、
「きのせい・・かな・?」
晩御飯を軽くすませ、寝る準備をして、そのままベッドの上でテレビをダラダラみる
ガサガサ
「・・やっぱりなんかいる、、」
次の瞬間、首筋に激痛が走る
「痛い!なに!?」
瞬間的に部屋の鏡をみると背骨のあたりに銀色の小さな蛇みたいなものがスルスルと入っていってしまった。
そのままアミは激痛で気を失ってしまった。
「ん・・ん~・・アレ?私気を失ってた・・?」
すでに窓から射す光は朝がきた事を告げていた
不思議と痛みは全くない、とりあえず顔を洗おうと洗面所に向かった
「な、なにこれ・・」
アミは鏡に映る自分をみて驚愕した
「なに!?どうなってるの!?」
鏡に映った自分は顔はそのままだが、首やら手が銀色に染まっている
銀色というより、金属
アミは慌てて着ていた服をぬぐ
その姿はまるでロボット
サイズはもとの身体とかわらないが、アミの身体は金属で覆われていた
「え?なんで?どうしよう?」
ピンポーン、ピンポーン
玄関の呼び鈴がなる
「こんな時に誰よ・・?」
居留守を使えばいいのだが、呼び鈴の主は中にいることをハッキリとわかっているのが伝わってくる
「もう!こんな時に!どうしようこの銀色の服?鎧?を脱がないと!」
ガサゴソ
「どうしよう全然脱げない!」
アミはとりあえず服を着て、靴下と手袋をはめてなるべく銀色の部分の露出がないようにして玄関のドアの穴から外を覗いた
「(隣りの人だ・・)」
アミの隣人がそこに立っていた。
引っ越しの日に挨拶に行った時ぐらいしか言葉を交わしていない、いつも何かを自宅に籠もっておこなっている変わった隣人だ
「あの~、朝早くにすいません」
隣人は玄関までアミが来ているのを気づき声をかけてきた
「急用なんですよ~、開けていただけませんか?」
ガチャ
アミはドアを少し開ける
「はい・・?」
「隣りのカシワギですが、すいません~、2~3日前からペットが逃げちゃって、もし見かけたら近寄らずに教えて貰っていいですか?」
「は、はい!わかりました。」
「ところで手どうしたんですか?手袋」
「いや~これは、乾燥が酷くて」
「そうなんですか~」
そういうとアミはドアを閉めた
「ふー、なんとかしのいだ」
アミは、部屋に戻り再び服を脱ぎ、部屋の全身が映る鏡の前にたった
「どうやったら脱げるのよこの鎧は、そもそもいつ着せられたの?」
「やっぱりか~」
背後から声をかけられてアミは思わず振り向く
「君がキャリアなんだね」
そこにはカシワギが立っていた
「カシワギさん・・この鎧の事なにかわかるんですか?」
「説明は私の自宅でしよう、準備ができたら来てくれないか?」
アミはカシワギが家に勝手に入ってき事など気にも止めず藁をもすがる気持ちでカシワギの家へと向かった。
「この鎧の事わかるんですか!?」
カシワギ宅に到着したアミは少し強い口調で問いただした
「まー…その前に少し聞きたい事があるのだが」
「なんですか?」
「最近の状況を教えて貰っていい?例えばなんか蛇みたいなのに噛まれたとか…」
「あ!そういえば!噛まれた?
とにかくちっちゃい蛇みたいなウネウネしたものがクビに刺さって…」
「気がついたらその身体になってたと」
「そう!この服?鎧?外れないですよ!」
「まず、順に説明しますね」
カシワギ宅の中は殺風景で使われてない部屋が沢山あるような一戸建ての家だ、その中の普段居住しているような空間でアミはカシワギから話しを聞いた
「まず、蛇みたいな生物の事なんですが、あれはナノマシンの塊まりなんでして…」
「ナノマシン?」
「う~んと…スッゴく小さな機械、それの集合体があの蛇」
「よくわからないけど、それがなんでうちに?」
「目を離したらスルスルと…ケースから逃げ出しちゃいまして」
「そもそもカシワギさんは何者なんですか!?」
「被害者だから一応隠さず言うけど…」
「え?被害者!?」
「あ!いやその…もともとはとある兵器開発の企業にいまして、そしてナノマシンの研究をしていたんですよ、」
「はい?兵器?」
「そして不死身の兵士を作るとかいうプロジェクトがありまして、まー漫画みたいな」
「不死身の兵士?」
「そこでできたのがこないだキミに噛みついた蛇みたいなやつ」
「あれは兵器なんですか?」
「いやあれ自体は兵器ではなくて、人を兵器に変えるものというか…」
「人が兵器?」
「ま、そこでちょっと問題がおきて私はその兵器開発の企業をやめて、自宅で研究を続けてたのです」
「さっきの話しをまとめると
被害者は私で
蛇はナノマシンで
兵器は私という事ですか?」
「ご名答!あはは…」
「戻して下さい!」
「それがその…」
「早く!」
「戻らなくて…」
「え!?戻らない!?」
「戻らない!現状は…
さっきの問題というのは不死身の兵士にした後にまた普段通りの生活がおくれるようにしたかったのだが、そこまでは予算がまわしてまらえなくて、なのに企業はナノマシンをアメリカに売る為の準備を始めたから資料を全部持って企業から私は逃げ出したの」
「じゃーもうずっとこの鎧のまま?」
「いや!今自宅で研究を続けてあと少しというとこまできてるから大丈夫!多分…
あと、それは鎧じゃなくて…」
「鎧じゃないならなんなんですか?」
「そういう身体なんですよ、なんというか機械の身体なんですよ」
「え?いつ改造したんですか!?さては蛇で意識がない間にですか!?」
特に悲観するわけでもなくアミは聞き返した
「違いますよ!
その蛇…ナノマシンが首にささると、脊髄から全身に回って、そこから身体のタンパク質や骨や周辺にあるものを取り込んで身体を元の体格や体質を参考に脳以外を全て機械化するんですよ」
「この身体が機械だなんて…元に戻りますよね?」
「理論上は逆の事をすればいいだけだから、後はそれを行うシステムと装置があれば」
「あー良かった!機械の身体は格好いいけど、これじゃ会社もいけないし
昨日が金曜日だったから2日でなんとかしてくださいね」
「ん?昨日金曜日?」
「そうですよ、残業で帰ってきてからだから今日は土曜日でしょ?」
「今日は月曜日ですよ…」
アミは慌ててカシワギ宅のテレビをつける
TV「月曜日の朝はZZIP!
今日からお仕事の方一週間頑張りましょう!
ではまた明日もZZIP!」
「ちょっと!なんでしかももう8時じゃないですか!」
「人体のサイズを機械化させには55時間ぐらいでしょうかね」
「55時間ぐらいでしょうかねじゃないですよ!仕事行かないと!課長に今日の会議で使う資料を用意頼まれてて渡さなきゃいけないんですから!」
「身体が機械になっちゃってるのになんか余裕ですね!」
「お前が言うな!とりあえず私は仕事行きますから帰ってくるまでになんとかしてくださいね!」
そう言い残すとアミは自宅に戻った
「とは言ったものどうしよう」
アミの身体は顔はそのままのようだが、首は蛇腹の金属に置き換えられ、身体は至る所に継ぎ目がある金属の身体、手足の関節は球体を模した関節、足の指は簡素化されて親指とそれ以外の指でわかれている、関節の隙間からはコードが見え、身体を動かす度にかすかな稼働音やモーター音が聞こえる
「とりあえずパンツスーツはないから…厚手のタイツと手袋とタートルネックで素肌を隠して」
真冬の完全防備
パッと見では身体が金属になってることはわからない
季節が秋だということを除けば
「早く仕事いかないと!」
アミは出社していった