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プロローグ 指先の悪魔
指先が臭う。
その新鮮な感覚は経験したことのない、自分の体内に侵入してきた野蛮人の様だった。
その単なる感覚はだんだんと臆病さ、息苦しさ、生き苦しさの詰まった
肉の塊に共鳴して雲のように縦横無尽に走り回り、潰れた。
もういっそ食べてしまえと誰かがいった。
誰かが言った。誰かがいった。
者はそれを見下ろしていた。
そして肉を引き千切った。
叫び
声
喘ぎ
悶え
少しの笑い声。
彼が噛んだ指は意識を持たず、また生えてきたものはそれを持っていた。
「ねえ、君のことが好きだよ。」