死から遠ざかる為に
精神が耐えられなくなるのは予想よりも早い。
僕は、ベッドから起きると、リュックの中の水と、倉庫から取った食事を食べた。
ドアのバリケードを剣で切って外した。
宿屋の光景は何も変わらない。
僕は、鍵を開けて宿屋の外に出た。
だが、どうも宿屋の主人の死体が目に付いた。
ゾンビ相手だとそういう気も起きなかったのだがこの宿屋の主人の事を日記で知り、そして安全な夜を過ごさしてもらった手前少し恩を返すことにした。
宿屋の横の地面に剣で穴を開けた。
剣がだんだんぼろぼろになっている。
僕は、宿屋の主人の死体を穴に入れて埋めた。
こんなことをしても何も意味がないかもしれない。
だけど、これは僕の為でもある。
善行を積んだという自信がほしかった。
この世界に来てから僕は、失われた財産を貪るなんというか、遺跡荒らしのような事しかしてない。
僕は、街道を歩き続けた。
霧が深かったが、ゾンビに見つかりにくいため好都合だった。
すると、なにやら話し声が聞こえた。
人だ!
僕は、急いで声の元へ走った。
声の主は、2人の男でひげが生えていて、なんというか、とても善人には見えなかった。
「やぁ生存者さん、悪いが持ってる物全て渡してもらおうか」
一人の背の高めなひげ男が言った。
もちろん渡しては生きるのが辛くなるだろう。
だが、相手にはもう一人居る。
小さく、弱そうだがもう一人いるのだ。
「わかりました、ちょっと待ってください、えーと……」
僕は迷ってる人を装ってるような言い方で言った。
実際本当に迷ってるのだが、真実とはいかにも疑わしくなるものなのか。
「はやく決めろ! 死ぬか、出すかだ」
背の高い男が叫んだ。
「馬鹿やめろ! ゾンビが来る」
小さな男が言った。
すると背の高い男は、微笑をして言った。
「こっちは、戦士だって何人も倒してるんだ、今更怖くねぇ」
この言葉の裏はこいつは、正規の戦士ではない、そして油断している。
今なら殺せる、背の高い方から殺せば、小さい方なら、僕の若い体なら余裕だろう。
僕は、剣を瞬時に抜いて背の高い男の胸に突き刺した。
血が男の口から飛び出した。
ちびの男は驚きながらも、斧を出して振り下ろしてきた。
近すぎて避け切れないと瞬時に察した。
僕は、履いている靴が硬質なレザーだということを思い出し、斧に向かって蹴りを入れた。
斧と靴がぶつかったに近い。
時間で言えば、男が斧を振り下ろした瞬間だろう。
僕は、初めての戦いで極度に緊張をしていた、だがそれが僕に異常な判断速度の早さを与えたのだろう。
最も、この男の振りはかなり遅かったが。
僕は、地面に回転して転がった斧を取り出し、小さな男に向かって振り下ろした。
僕は、男達の持ち物を探った。
鋭利な剣と斧、あとは酒か。
食べ物や水は無かった。
この男達は、食べ物に困っていたのかもしれない。
そうなると同情の余地もあるかもしれなかったかもしれないが、この男達の話し振りから察するに、奪い殺すことは初めてでなく罪悪感は感じていなかった。
僕は鋭利な剣に持っている剣を交換して、斧をリュックに入れた。
血がついていたので男達の服で拭いた。
僕は、これ以上死体を見るのが耐えられなかったので走り出した。
罪悪感で耐えられなくなる前に。
ある意味この男達も罪悪感を感じていたが、それを気にしては耐えられないからそういう振る舞いをしたのか、酒はそれを忘れるため?
これ以上同情をしようとするとおかしくなりそうなので必死に走ることに集中した。
まるで、万引きして逃げる学生のようだ。
走っていると何かにぶつかった。
それは、うめき声をあげた。
僕は、驚きで顔がこわばりながらも、剣を取り出し、震えた手の恐怖を振り払うように切った。
ゾンビの首は飛んだ。
そして地面に落ちた。
そのゾンビの顔はまだ動いていて、僕に良心の呵責を伝えているようで僕はまた走り出した。
何時間走って、歩いてを繰り返していただろうか、ふと、僕は立ち止まった。
キャンプがある。
そして異常な疲れをどっと感じた。
おなかが空いていた。
僕は急いでパンを食べて宿屋の近くの井戸で補給した水を飲んだ。
水筒は一気に空になった。
僕は、走りながら叫んだ。
「スパイクだ! みんないるか!」
その声に気づいた人たちが近づいてきた。
僕は、追いはぎと合い、そしてゾンビとも合った。
だがいずれにせよ、生き残ることができた。
この状況で嫌になって投げ出す人もいるだろうが、僕はこれを幸運だと思えた。
もしかすると、善行っていうのは意味があるのか?
いや、善行をすると帰ってくると思うのは、それによって何か良いことがあったと思わせる事が原因かもしれないな。




