幽体離脱
僕は天性の使い方をなぜか理解できた。
知ろうと思ったときに初めて分かるのは少し不便だ。
本来他人の体にあってはいけないからだと思うが。
僕は力を抜いた。
そして無心になった。
すると足元に何かが落ちる感覚がした。
下を見ると僕が立っていた。
霊体になったらしい。
僕は咄嗟にノルドール達の武器を殴り吹き飛ばした。
スローモーションになってるため若干時間の流れも遅いらしい。
4秒の時点で8人、急がないと……。
僕は霊体の体に力をこめてノルドール達が握り締めている武器に体当たりをした。
すり抜けたが、武器が吹き飛んだ音がスローで聞こえる。
霊体で草むらに待機しているノルドール達の武器を全て吹き飛ばしすぐに目をつぶった。
体が高速で何かに引き寄せられてる感じがすると目が覚めた。
現実の時間的には1秒程度か。
オリジナルのスパイクは逃げることを提案したがそれは厳しい。
逃げれるかもしれないが例え森の木を盾にして逃げたとしても痛手を追うはずだ。
僕は、急いで近くのノルドールのところへ走り落ちた剣を取った。
「仲間が殺されたくなければ全員武器を拾うな」
僕は叫んだ。
そのノルドールは若い10代の青年だった。
「なっなんで」
人質となった青年は叫んだ。
「卑怯な奴らめ!」
指導者は叫んだ。
「それはどっちだ」
僕は叫んだ。
場が沈黙した隙にグレッグがいなくなったのを気づいた。
「ふん、殺せない、なぜならそいつを殺せばお前らは死ぬ、人質など意味をなさぬ」
指導者は強気で言った。
だが動揺している。
「たったすけて」
ノルドールの青年が叫んだ。
目の前の死に対する耐性は、若ければないに等しいだろう。
例えノルドールでもだ。
「ロレント!」
イリアが叫んだ。
「友達を助けたかったんだったな、今がその時だ、イリア」
僕は叫んだ。
兵士達が武器を拾おうとしていた。
「拾うな! こいつの命はない」
僕は叫んだ。
「くそ、我らがこのような手に……」
指導者は呟いた。
人質を見捨てれば信用を失う、指導者にはそれができない。
そのはずだ。
だが奴は叫んだ。
「全員武器を持て!」
ノルドールたちが武器を拾った。
「待て、こいつの命は!」
僕は叫んだが指導者が微笑をした。
「ないのか、なら殺せ、我らは屈しない」
人質が意味をなさなくなれば、こっちが劣勢。
これでは皆死ぬ。
敵の兵士が弓を引いている時僕は死を感じた。
僕は、咄嗟に人質の腕を切った。
「ぐわあああ」
ノルドールの青年の悲鳴により敵の兵士の手が止まる。
「本気だ、早く俺らを逃がさないと、こいつは死ぬぞ」
あたりに青年の血が流れる。
「いけ! いけ! 」
指導者は叫ぶが、行動するのは兵士、動揺している。
その時、指導者の胸に剣が突き抜ける。
指導者は、声にならない声をあげ血を吐いて倒れた。
「指導者は死んだ、次はその兵士も殺すか?」
グレッグは叫んだ。
気づかなかったのが不思議なくらいだが、確かにあの時人質だけに皆集中していた。
グレッグのいた位置は草むらに近くグレイが前に立っていたためぱっと見ではわからない。
それにまだ気づくだけの時間を与えていない。
「わかった、やめて」
イリアが叫んだ。
「じゃあ全員武器をこちらへ投げろ」
僕は言った。
こうしてノルドールの部隊は武器を失った。
人質を放すとイリアは急いで止血処理をした。
「死人がでちまったな」
グレイが言った。
「仕方ない」
グレッグが言った。
「イリア、なんでこんなことを?」
僕は言った。
「人間に対しての恨みよ」
彼女は軽蔑した目でそう言った。
「よくわからねぇが、こんなやり方して死人でるくらいなら一緒に協力したほうがいいんじゃないか?」
僕は言った。
「指導者は死んだから一人一人が決めるんだな。」
グレイは言った。
周りがざわついた。
「俺らのところへ来る奴は?」
グレッグが言った。
すると若いノルドール2人がこっちへ向かってきた。
「俺たちは、人間のところへ行くぞ、今回でわかった、俺らは変わるべきだ」
双子のようで顔が同じだった。
「待って! これは条件に入ってないわ」
イリアが叫んだ。
「なら、もう一人死なせるか?」
僕は睨みを利かせた。
指導者を失ったノルドール達は沈黙していた。
イリアですら黙って下を向いていた。
「このツケはいつか清算してやる」
彼女はそう叫んだ。
僕達は森から足早に出た。
新しい仲間となったノルドールの双子が今回の利益だな。
街道に出た僕らはゆっくり歩いた。
「生き残れたし、仲間も増えたからラッキーか?」
僕は言った。
「さぁな、足が痛い」
グレッグが言った。
「みんなの武器が吹き飛ぶってことは昔にもあった、これは誰かの魔法か?」
グレイが言った。
「知らないな、ただ俺らがここで死ぬべきじゃないって事だろう」
僕は言った。
もちろん知っているが、僕だけ知っているほうが何かと都合がいいこともあるだろう。
「僕達双子は、ボロロとアロロって名前です、変な名前ですけどよろしくです」
この双子軽い装備に身を包んで体格も普通の青年に見える。
付けている鉢巻の色が赤と青に分けられている。
「僕がボロロです、赤い方です」
ボロロは言った。
「僕の方が、アロロです、青いほうです」
軽い自己紹介を皆した後彼らがなぜこちらについたのか聞くことにした。
「ノルドールは、戦闘民族で人が死ぬのが日常茶飯事です、ですが僕達はそれが嫌なんです、戦いで何もかも解決すれば後には何も残らなくて簡単でしょう、ですがそれは逃げだと思うんです」
アロロは言った。
「ノルドールは、あの森だけに住むわけじゃありません、きっとどこかに僕達のようなノルドールがいるはずです」
ボロロは言った。
「ともかく、仲間が死んだことはすまない、ああするしかなかった」
僕は言った。
「すまねぇな」
グレッグが呟いた。
「いいんです、彼らが招いたことです」
ボロロは言った。
僕達が街へ帰るとレベッカが真っ先にやってきた。
「見つかったの!? ってあれ、イリアは? その二人は? グレッグその足は!?」
レベッカの質問攻めが始まった。
僕達は事情を説明した。
「イリアが……、彼女は人とも会話しなかったけど、そんな子だとは思わなかったわ、ともかく新しい仲間を歓迎しましょう」
レベッカは、ボロロとアロロに新しい家を割り当てた。
ボロロとアロロはすぐ街に馴染みそうだ。
彼らの雰囲気はおおよそ、人間と近く戦闘民族の気配もない。
だが、今日わかったことは、この世界、敵はゾンビや魔物だけじゃないってことだ。
人間そしてノルドールのような別種族。
僕達の街はこの先どうなるのか。
いや、今はいいだろう。
今日は疲れた。
僕は自分の家に戻って、パンと焼いておいた冷たいジャガイモを食べて、ベッドに倒れこんだ。




