不穏
ファンタジー×ゾンビ
僕は、いつもひとりだった。
高校生活を始めてからも周囲に馴染め無かった。
僕はインドア派でPCに掛ける時間は長かったが、オタクでは無かった。
だからオタクとも話が合わないし結局僕はただただ悲しいのを悟られないために校舎裏のベンチで弁当を食べていた。
勇気を出せば変わるのだろうか。
過去の記憶を振り返り、ああすれば良かったと思うことは在っても、今は甘く無い。
結局のところ勇気なんて出せっこ無かったんだ。
スマートフォンの画面に表示される時刻を確認しながら僕はただボーっと時が過ぎるのを待っていた。
急に雨が降り出した。
僕は急いで校舎に帰ろうとした。
だが急ぎすぎて転んでしまった。
流石に惨めだ。
どう隠そうかと考えていたがとにかく校舎へ行かないと。
だけど行く必要もなかった。
僕はそこで雷に打たれて死んだのだから。
目が覚めるとベッドの上だった。
木でできた壁と床が見え、部屋の中には誰もいない。
そして僕の姿は、中世風の洋服だった。
鏡を見ると顔も違った。
僕は気付いた、どうやら生きる世界が変わったのか。
ともかく転生という奴だろう。
僕は、誰かいないか試そうと思った。
「誰かいませんか?」
叫んでも誰も返事をしない。
僕は開きっぱなしのドアから出て辺りを見回した。
どうやらここは宿屋のようだ。
ということはファンタジーの世界だな。
剣が飾られていて、置いてある絵はドラゴンやゴブリンが描かれていた。
僕は期待を胸に膨らませた。
僕は運よく異世界に来られた。
しかしここにも誰も人がいない。
僕は宿屋のドアを開けた。
外には人がたくさんいた。
だが全員皮膚がただれて赤い目をしていて、ゾンビのようになっていた。
僕は状況の異常性に気付きドアを閉めた。
どういうことだ。
そうか、僕が来た世界は終りかけの世界だったというわけなんだな。
ゾンビが僕に気付いたのか扉をバンバン叩く音がした。
僕は、近くにあったテーブルをドアに寄せて簡易的なバリケードにした。
幸いこの小さな宿屋は窓は小さな換気用のものしかなく、人が通れるものではない。
いや、ゾンビが通れるものではないというのが適切だろうか。
ともかく、僕はこの小さな宿屋でこの世界に何があったのか知る必要があった。
優しい物語の転生は普通のものでも、奇抜なものでも夢があったかもしれない。
だけど彼は紛れもなく人間で、そして不幸だ。