ただの幼なじみとプリクラを撮ったら
プリクラを撮った帰り道、俺と彼女は肩を並べて歩いていた。
道路に散った桜の花びらが、春の終わりを感じさせる。
一年後、俺たちは高校生になる。そうしたら、こんな風に二人で遊ぶことはなくなってしまうのかもしれない。
俺たちがいつまでも一緒にいられるという確証はないのだから。
今はただ、幼なじみで、同じ中学で、同じ部活で、同じ塾に通っていて、たまたま一緒にいる時間が長くて、たまたま仲が良い、というだけなのだ。
高校生になって別の学校に通うことになれば、それだけで会う機会は減る。
塾に通い続けるとは限らないし、部活に入るかもわからない。
付き合ってもいない俺と彼女が、いつもこうして一緒にいることに、理由なんてないのだ。
そんな希薄な俺たちの関係は、いつ壊れるかわからない。
……俺はそれが怖かった。
彼女がどう思っているかは知らないけれど、少なくとも俺は、ずっと一緒にいたいと思っている。
俺は彼女が好きだった。ずっとずっと、昔から。
この想いを伝えたくて、でもそんな勇気はなくて。
だらだらと、偶然によって生み出された二人の時間を過ごしてきた。
確証を求めながらも、現在の関係に満足している自分がいた。
―――けれど、もう時間がない。
夏がやってくれば、俺も彼女も部活を引退する。
俺と彼女を繋いでいた一つの偶然が、壊れてしまう。
どうか、その前に。
今の関係に、終止符を打たなければ。
「今日は楽しかったね」
彼女が無邪気に笑う。
今の関係のまま時が流れていったら、あと何回、彼女は俺に笑ってくれるのだろうか。
……わからない。
だから、俺は求めるんだ。
いつまでも、俺のそばで、彼女が笑う『確証』を。
「そうだな」
どうか、早いうちに。
俺の告白が成就して。
彼女と付き合えますように。
俺はそう祈りながら。
彼女が悪戯っぽく笑いながら、言った。
「明日もプリクラ撮らない?」
「は?」
俺たちは明日も、プリクラを撮るのかもしれない。
女の子とプリクラを撮るのは一つの夢であります。
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