第六話 街道を防衛せよ!
まだ戦わない……。次回には戦います!
第六話 街道を防衛せよ!
僕はスフィアに爆笑されていた。
「金も持たずに店に行くなんて白河は天然だな!」
金のことを忘れていたのだ。カール商店の店先でそのことに気づいた僕は、博士から金塊をわけてもらい今銀行へ向かっている。
「ここが銀行かな」
金貨のマークの描かれた看板の掛けられた角ばった大きな建物だ。ここが銀行と両替商の入った建物だろう。
僕はガラスのはめ込まれた扉を開けて中に入る。
「国営銀行です。なんのご用でしょう?」
愛想の良いスーツの行員が擦り寄って来た。
「両替はどこかな?」
行員は顔をしかめたがすぐに営業スマイルに戻る。
「両替はあちらです。両替後は是非とも我が国営銀行にどうぞ」
僕は行員に指示された窓口に向かった。窓口にはおばあさんが座っていた。眼鏡を掛けていてかぎ鼻だ。
「すいません。これの両替をお願いします」
おばあさんは眼鏡をクイッと上げて天秤を出した。
「これなら六十万七千ルーツになるね。金貨十二枚と銀貨七枚だよ」
おばあさんは金貨と銀貨を袋に入れてくれた。六十万ルーツってどれくらいだろうか。宿屋が一泊二食付きで一万ルーツだから一ルーツは一円と同じくらいなのか?
「結構あるな。これなら良い装備が買えそうだな」
金に疎そうなスフィアはのんきに言った。そうかなあ、ファンタジーの武器とか防具って馬鹿みたいに高いイメージあるけどな。
僕は行員の熱心すぎる勧誘を振り切り、全額を持って行くことにした。
☆☆☆☆☆☆☆☆
カール商店の店先。先程、ここで恥ずかしい思いをしたが、もうしない。
僕は両開きのドアを勢いよく開けた。
「こんにちは、お客さんかい?」
髭で色黒なおじさんが調子よく僕に話し掛ける。
「冒険者になったばかりなんですが、必要な物を買いに来ました」
包み隠さず正直に何も知らない初心者だと話した僕におじさんは大笑いした。
「おもしれえな。たいていの奴は見栄張るのに素直に初心者だって言うとは……。気に入ったぜ。任せてくれ、初心者用の装備一式と薬みんなまとめて売ってやる」
おじさんは商品が雑多に陳列された店内をせわしく動き回わった。やがてたくさんの商品を抱えて戻ってくる。
「ほれ、お前さんと連れの姉ちゃんの二人分の装備だ。ちょっと着てみてくんねえか? サイズを確かめたいんだ」
僕はおじさんの差し出した革の鎧を着てみた。さすがにプロだけあってサイズはピッタリだった。
「スフィアはサイズ合ってる?」
スフィアは膨らみすぎた胸元を指差した。
「少しきついかな。だがまあ許容範囲だな」
おじさんは革の鎧のサイズが大丈夫だったことを確認すると、薬箱を見せてきた。
「この中には薬草、毒消し、麻痺直しが五つずつ入ってる。冒険する上で一番基本的な薬類だな」
おじさんは薬をこっちに寄越すと、壁に掛けてあった赤銅色の剣を持って来た。
「これがうちで一番安い剣だ。他のはまだお前たちには早いな」
僕は剣を持ってみた。銅製でかなり重い。これを振るのはかなりの重労働だろう。
ふと隣を見るとスフィアが剣を軽々振り回していた。精霊さんは体の構造がおかしいと思います!
「気に入ったようだな。代金は全部で五十万ルーツだ」
僕はふくろから金貨を十枚取り出した。
「ありがとよ! これからも安くしとくからカール商店をよろしくな!」
おじさんの気持ちの良い挨拶に送られて店を出た。その足で冒険組合に向かう。
「いよいよ仕事だな。白河は心配しなくて良いぞ。私がしっかり守るからな」
男として女に守られるのはどうだろうと思ったが、スフィアの方が強いから仕方ないのか?
「いらっしゃい。あ、遅かったわね」
リーナが僕らに気づいて顔を赤くした。遅かったから怒ったらしい。
「ごめん、お金を用意することを忘れてて」
「抜けてるわね。戻って来るのがあんまり遅かったから依頼は私が確保しといたよ」
「ありがとう。これがその依頼用紙?」
カウンターに置かれた用紙にスフィアが目を通す。
「かい、いの、……」
文字がよく読めないようだ。博士に頼んで翻訳機でも作ってもらおうかな。でもなあ、きっと作れることは作れるだろうけど……。
「私が読みますよ。アーク街道に角猪が出没中! 撃退してくれれば一万ルーツ支払います、て書いてあるわ」
自慢げにリーナが胸を張る。スフィアが唇を噛んだ。
「受けますか? 割りの良い依頼だと思いますが」
リーナは怒り心頭のスフィアを無視して僕に尋ねる。
「ほかには?」
「特にないですよ。時間が遅いですから」
なら特に断ることはないな。受けますか。
「わかった受けるよ」
「わかりました! 依頼頑張って下さいね」
こうして僕らは街道を守るべく角猪に戦いを挑むのだった。
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