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第二十四話 武道会に二つ目の恐怖!

忙しくて連日更新できませんでした。作者が忙しくなってきたので、これからは二日から三日に一度の更新となると思います。


第二十四話 武道会に二つ目の恐怖!


控え室の端で師匠は先程から瞑想を続けていた。師匠はあぐらをかき、目を閉じて、呼吸すら抑えている。その師匠の周りには膨大な魔力が渦巻き、時折火花が飛び散っている。魔力によってあぐらをかいたその姿は蜃気楼のように歪んで見えた。あまりにも大きな魔力が空間をわずかにねじ曲げているのだ。


「気持ち悪くなってきたな。私は先に外に出て待っているからな」


咲は蒼白な顔をし、口を抑えた。そしてよたよたと控え室から出て行く。きっと師匠の魔力に酔ったのだろう。巨大すぎる魔力は人を酔わせるのだ。


「私もそろそろ限界。白河は平気?」


ナルも具合が悪そうに顔を俯けながら聞いてきた。息が乱れていて、かなり苦しいように見える。


「僕は大丈夫だよ。ナル、もし気持ち悪くなってきたのなら休んでおいで」


僕がそういうとナルは早速、控え室から駆け出していった。これで控え室には僕と師匠と師匠の対戦相手の男しかいなくなった。ちなみにスフィアと博士はいない。なんでも、博士が先程ナルと戦った透明人間に透明になる方法を聞くんだ、とか行って消えたからだそうだ。スフィア、博士の面倒みるのご苦労様。

僕がくだらない考えをしていると、師匠はいきなり呻き始めた。


「うぅ、むぅ、はあぁ!」


師匠の身体から魔力が噴出した。濃密な魔力が火山のように溢れ出す。僕には馬鹿みたいな量の魔力があるが、今の師匠はそれよりもさらに大きい。

 控え室に魔力が満たされていった。僕は魔力に飲み込まれそうになる。


「素晴らしい魔力ですねえ。感心に値しますよ」


先程から沈黙を守っていた対戦相手の男が、師匠に話しかけてきた。張り付いたような笑みを保ったままである。


「それはどうもありがとう。でも、あなたならこれぐらいの魔力あるんじゃない?」


師匠もまた微笑んで男に返答する。しかし、その目の奥には黒い物が覗いていた。


「怖いですねえ、そんな目をしないで下さい」


男はおどけたように言うと、控え室を出て行った。

師匠はしばらくして妖艶な笑みを浮かべた。


「ふふ、面白い。久々にやるとしますか。さて白河、舞台に行くわよ。そろそろ準備もできてるだろうから」


師匠はゆっくりと立ち上がると控え室から出て行った。僕も師匠の後に続いて行く。

舞台に着くと、すでにナルと咲がいた。二人とも顔色は良く、体調は戻っているようだ。


「いよいよなのね、師匠」


「ええ、まあ頑張ってくるわ」


「あなたがどのような人か、私はいまいち知らないが……とにかく頑張ってください」


師匠にナルと咲が話かけてきた。師匠はナルと咲に向かって笑いかける。そして舞台の上に上がった。舞台の向こうでは、対戦相手の男がいやみのある笑みを浮かべて立っている。男は一見するとひょろっとした長身で、顔立ちなどは冴えない、至って普通の男に見える。着ている鎧も軽装の物で、せいぜい熟練者が愛用する程度のありふれた物だ。

だが男は舞台の向こうから得体の知れない、それこそ底のない闇のような気配を放っていた。

師匠と男が向かい合うとすぐに舞台の中央に司会者が現れた。司会者は向かい合う両者の雰囲気に圧倒されながらも、大きな声を張り上げた。


「そ、それでは準々決勝第四試合チェリス選手対エントス選手を開始させていただきます! それでは試合開始です!」


司会者はそういうやいなや舞台から離れていった。会場は試合開始に熱狂し、観客席からは叫び声やら怒鳴り声やらいろいろな叫びが聞こえてくる。

 それに対し、師匠とエントスは互いに笑ったまま動こうとしない。


「すごい、両者とも隙がまったくないぞ!」


咲は舞台の上の二人を見て感動したように叫ぶ。咲が叫ぶのも無理はない。師匠とエントスは隙だらけに見えて、隙がまったくないのだ。二人はそのまま一歩も動かずに睨み合いを続ける。それは永遠に続くかのようにさえ思われた。

そして師匠とエントスの睨み合いに会場がシラけてしまった頃、ついに動きがあった。

突如として激しい魔法の撃ち合いが始まった。炎、氷、風、土、さらに光に闇。およそ考えうるかぎりの属性の攻撃魔法が舞台上を飛び交い、目を開けていられないほどの光が発生する。僕とナルは全力でシールドを展開して、咲はそのシールドの後ろに避難した。

その間にも戦いは激しさを増しているようで、狙いをそれた魔法が観客席にも当たり、あちこちから炎が上がった。たまらず観客たちは次々と逃げ出した。そしてやがて博士とスフィアらしき人影がその場で頑張っているのみになってしまった。

光に包まれた舞台からお腹に響く地鳴りのような音がしてきた。その音の感覚は次第に狭まり、すぐに絶え間無く聞こえるようになる。

信じられないことだが……師匠とエントスはあれだけたくさんの魔法を使いながら、同時に武器での戦いも行っているらしい。

 人間とは思えないな……。

僕と同じことを咲とナルも思ったようで、感心したような呆れたような微妙な顔をしている。

舞台の光が収まった。二人の姿がはっきりと視界戻ってくる。


「あなた一体何者なのかしら。ただの人間とは思えないわよ。 そろそろ正体を明かしたらどうなのかしら?」


師匠がエントスに向かって話かけた。口調は軽いが、目つきは矢のように鋭い。

 師匠の言葉を聞くとエントスが腹を抱えて笑い始めた。高笑いが大気を揺らす。


「ははは、気づかれていたのか。私としたことが失敗だったよ。良かろう、私の正体を教えてやろう……」


エントスはもったいぶって、間を開けた。師匠は固唾を飲んでエントスを見守りつづける。


「私は魔将軍エルストイ、この大会を潰し、さらに勇者を殺すためにきた者だ」


エルストイの背中から闇を纏った漆黒の翼が現れた……。

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