第二十二話 最強……? 超強運戦士!
今回は少しコメディー風味です。
第二十二話 最強……? 超強運戦士!
クレナリオンの試合が終わった後、僕らは次のナルの試合が始める前に、控え室でナルの対戦相手を観察していた。
「うーむ、見れば見るほどただの女だな。ここまで残ったのが不思議だ」
咲が首を捻った。咲の言う通りナルの対戦相手は弱そうに見えた。僕が見る限り、ナルの対戦相手の女戦士は戦士と言うより酒場のお姉さんと言った雰囲気の女だ。健康的な褐色の身体にも筋肉はほとんどついておらず、柔らかいラインを描いている。特にスイカのような胸がなんとも……。
「鼻の下を伸ばしちゃダメ!」
後ろから叫び声がした。恐る恐る僕が後ろを振り向くとナルが鬼のような形相で立っていた。
やばいぞ……、ナルは本気だ。身の危険を感じた僕は助けを求めて辺りを見回した。
そして、スフィアと咲の方を見て精一杯すがるような目をしてみる。
「自業自得だな」
「今のは白河が悪い」
二人は軽蔑したような目をして言った。助けてくれるどころかナルと一緒に攻撃してきそうだ。し、仕方ないじゃないか胸の谷間に目を奪われたって……。僕も男なんだから。
最後の手段だ、同じ男の博士なら味方してくれるに違いない! そう思った僕は博士の方を見た。博士は手に持った機械に向かって語りかけていた。ダメだ、どこか異世界に飛んでいる……。
「まあまあ、喧嘩しちゃダメよ。もうすぐ試合なんだから」
し、師匠が助けてくれた。さすが師匠ありがたいです!
僕は師匠に心から感謝した。
「むう、それなら仕方ないの。後にする」
ナルは頬を膨らませて納得いかないように言う。でもとりあえず僕は今のところは助かったようだ。
なんとかナルの試合が終わるまでに言い訳を考えておかなきゃな……。
僕がそう思っていると急に舞台の方が騒がしくなってきた。スフィアが舞台の方を覗いてくる。
「どうやら準備が終わったようだ。私と博士は観客席から応援するからしっかり頑張って」
舞台の方から戻って来たスフィアはそういうと博士の服を掴んだ。そして観客席まで博士を連行して行く。
博士はその間も機械に向かって語り続けていた。
「私もそろそろ行くの」
ナルも舞台に向かって歩き始める。僕と師匠とスフィアもナルに続いて歩き出した。
★★★★★★★★
「それでは準々決勝第三試合ナル選手対ジェシカ選手を開始いたします。それでは試合開始!」
毎回おなじみとなった司会者の宣言で試合が始まった。観客席から大歓声が上がる。舞台の上からジェシカは観客席に向かって手を振った。おじさん連中の興奮した声が聞こえてくる。
一方、ナルの方は観客たちにほとんど無関心だった。沈黙したままジェシカを見据えている。
沈黙を破り、ナルが先に勝負を仕掛けた。ナルは呪文を唱え始める。大魔法を使ってジェシカを一気に片付けるつもりだ! 対するジェシカはその場で胸を張って立っているだけだった。大きな胸を張って余裕で立っている。
「adkmp……いた、いたぁ……。舌噛んだの」
舌噛んだぁ? ナル、いくらなんでも初歩的すぎるミスだよ!
師匠もあまりのミスに額に手を当ててうなだれる。咲に至っては呆れて口が半開きだ。
「あらら、そんなんじゃお姉さん倒せないぞ♪」
ジェシカが笑いながら手に持っている鞭でナルに攻撃してきた。あまり速くはない、ナルなら十分回避できる攻撃だ。
もちろんナルはそれを素早く回避しようとした。だが……。
「ふあぁ!」
ナルは何故か足元にあった小石につまずいた。そして頭を 硬い舞台にしたたかにぶつける。さらに起き上がろうとして顔を上げたところにジェシカの鞭が直撃した。
「お、おかしいの!」
鼻を赤く腫れさせたナルがジェシカに向かって叫んだ。しかしジェシカは涼しい顔をして答える。
「うーん、お姉さんは何にもしてないよー? きっとあなたの運が悪いだけだよ」
ジェシカは色っぽくそういうとまた鞭で攻撃を始めた。先程と変わらず攻撃自体はたいしたことはない。今度はナルも失敗しないように周囲をよく確認してから回避しようとした。
しかしそこで風が吹いてきた。
「目にゴミが……。何にも見えない!」
ナルの目にゴミが入った! 視界を奪われてしまったナルはまたもや鞭の直撃を受けてしまう。
ナル、運が悪すぎじゃないか?
「何かあるわね、あの女。いくらなんでもつきすぎよ」
師匠がジェシカを見て忌ま忌ましげにつぶやく。咲もジェシカを睨みつけていた。
「ナル、しっかりしろ。そんな色気だけってみたいな奴に負けるな! 負けたら承知せんぞ」
咲はナルに向かって声援を送りはじめた。僕と師匠も声を張り上げて応援する。応援に対してナルはVサインをしてこっちを見た。
そして杖を振り、魔法を使う。
雷がジェシカに襲いかかった……。
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