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第二十話 決着と咲の決意

お気に入りが五十を超えました。読者の皆さんに感謝です。

第二十話 決着と咲の決意


空の上から斬撃が降り注いできた。彗星剣の前振りだ。僕は舞台中央の穴の中にある土を利用して頑丈な壁を作る。さっきは硬い石が敷かれていたのでできなかったのだが、この方が魔力が少なくて済む。そして節約した魔力を「作戦」のために使うのだ。

斬撃が土の壁を叩き、爆撃でも受けているような衝撃が僕を襲う。

斬撃が終わった。空の高いところに青い光が見えた。それはこちらに向かって急速に接近してきている。


「これで終わりだぁー!」


咲が力の限り叫びを上げた。

 それを聞いた僕は「作戦」を開始する。僕は土の壁の中から出てきて杖を振り上げた。空の彼方から炎の球が無数に舞台の上に集まってくる。僕がさっき咲に向けて放った炎の球だ。あらかじめそれらを離れたところに待機させていたのだ。それらの炎の球は次々と融合して巨大な球を形成し始める。

すぐに球は青い輝きを放ち舞台を覆いつくすほどに成長した。猛烈な熱が辺りを支配する。その様子はさながら小さな太陽が生まれたようだった。あまりの熱さに観客席から人が逃げ出していく。師匠とナルもシールドを張って熱に耐えていた。


「いっけえぇー!」


僕は歯を食いしばり気合いを入れた。太陽がゆっくりと空に向かって上がり始めた。

上空の咲の顔が驚愕に歪んでいく。


「く、か、かわせない!」


咲はなんとか回避をしようと試みたものの、彗星の勢いを持った身体は方向転換を許さない。

咲の身体は太陽の中に吸い込まれていった。

 一瞬後で鈍い音がした。

咲が舞台の上に落ちたのだ。すぐに僕は魔法を解除する。太陽が掻き消え、辺りに静寂が戻った。僕は横たわったまま動かない咲に駆け寄った。着物が焼け焦げ、肌が煤けている。僕は真っ黒になった咲の顔を見つめた。咲の目がゆっくりと見開かれた。咲の漆黒の瞳が僕の目を見据えてくる。

咲の口が重々しく開かれた。咲の唇が震えながら言葉を紡ぎ始める。


「私の負けだ……。完敗だ……」


会場全体が爆発したような興奮に包まれた。司会者がどこからか現れた。さらに舞台の上に昇って僕の勝利を宣言する。


「準々決勝第一試合の激闘を制したのは白河選手でしたあぁ!皆さま、彼にどうか盛大な拍手をお送りください!」


観客たちは総立ちになって拍手を始めた。なんだか恥ずかしいな……。僕は観客の視線に気恥ずかしさを感じながらも咲を舞台の端まで引っ張った。師匠とナルが舞台に上がり、咲に駆け寄ってくる。


「agjmpt……ヒール!」


師匠が咲に治癒魔法をかけた。暖かい光の粒が杖の先から出てきて咲の身体に降り注ぐ。傷が光って少しずつふさがっていった。


「うぅ……ふう、すごいな。もう楽になって来たぞ」


咲は身体を起こすと手を閉じたり開いたりした。良かった、傷はだいたいふさがったようだ。


「それではただ今から舞台の復旧作業を行います。次の試合までしばらくお待ち下さい」


司会者がそう言うと黒服を着た魔法使いたちが現れ、舞台の復旧を始めた。その魔法使いたちはこちらにもやって来た。


「そちらの選手の治療をさせていただきます」


黒服の魔法使いが咲の方に来て、彼女を連れて行こうとした。それを咲自身が立ち上がって止める。


「私は大丈夫だ。舞台の方を早く復旧してくれ」


咲は黒服の魔法使いを追い返すと僕の方を見た。


「白河、話があるからついて来てくれ」


咲はそう言うと控え室に戻って行った。僕は咲の後を追う。


「怪しい気配がするの!」


 ナルも慌てて僕の後をつけて来た。師匠はニヤリと笑って手を振りながら僕らを見送った。


★★★★★★★★


咲は控え室の端まで来ると足を止めた。そしてゆっくりと話を始める。


「白河、試合の前にした約束を覚えているか?」


咲は顔を赤くして声を震えさせながら僕に聞いてきた。あの約束は半分冗談だったのにな。もしかして咲はあれを本気にしたのか……。


「覚えているけど、あれって場の勢いで出た冗談だったんじゃないの?」


僕の後ろにいたナルも無言で頷いた。

しかし咲は想定外のことを言いはじめた。


「私も試合が始まるまではそうだった。だがな、試合を行っているうちに白河の強さに惚れたというか……と、とにかく、私を白河の家来として仕えさせてくれ!」


なんですとー! いきなりすぎますよ咲ー! 僕の頭が混沌の渦に飲み込まれた。様々な考えが脳裏をよぎる。そんな混沌とした僕の頭はすぐに冷やされた。ナルが僕の背後で絶対零度のオーラを発したからだ。


「それはできないわ。だって私が認めないもの」


ナルは冷え冷えした声で言い放った。しかしそんなナルの冷たく響く声にも咲は動じはしなかった。


「どうしてナルに認めてもらわないといけないんだ?」


咲の質問にナルは自信満々に言い切った。


「私が白河の嫁になるからよ」


なんでナルが僕の嫁になるの? ナルじゃ嫌とかではないけど突然嫁になる宣言は……。


「白河が困った顔をしているじゃないか。まだ嫁になった訳じゃないんだからナルは関係ない。そういうことで白河、今から私は白河の家来だからな。よろしく頼むぞ主殿♪」


こうして愉快な仲間がまた一人増えました……。

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