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第十八話 激突! 杖VS刀

今回は地の文多めです。


第十八話 激突! 杖VS刀


「頑張って!」


「負けるな兄ちゃん!」


 様々な人の叫びが広い武道会場にこだまする。準々決勝が始まって武道会場の熱気は最高調になっていた。

 そんな中で僕と咲は試合開始早々、睨み合っていた。互いに互いの隙を見つけるべく神経を研ぎ澄ます。観客席も一切動かない僕らを見たせいか沈黙し始めた。そんな沈黙を破り、最初に動いたのは咲だった。動き始めた咲の姿が一瞬にして霞んだ。

その次の瞬間、金属同士がぶつかる硬質的な音が会場に響き渡る。緊張の糸の切れた観客席から大歓声が上がった。会場に熱が戻っていく。


「やるな、普通はこの時点で武器が真っ二つになってるはずなのだが」



咲は僕に自慢の刀を杖で防がれたことに感嘆したようだ。心底驚いたような顔をしている。


「どういたしまして。少しは見直しましたか?」


僕は腕を震えさせながらも聞いた。軽口を叩いて余裕があるように見せてはいるが僕に余裕はまったくない。咲の腕力が細い身体に見合わないあまりにも大きなものだったからだ。


「そうだな、少しはな!」


咲はそういうと僕から距離を取った。顔からは笑いが見てとれた。咲はその笑みを保ったまま刀を顔の前に構え、目には見えないほどの速度で振るう。


「ううっ!」


「大丈夫なの!」


突然唸りを上げた僕に、ナルが心配そうな声をして聞いてきた。僕は無言で首を振る。体中で鋭い痛みを感じたのだ。咲の刀から放たれた何かが僕の身体を切り裂いたのだろう。見るとローブから露出された腕や足のところどころに深い切り傷が出来ている。もし師匠に貰ったローブを着ていなかったら身体中が切り傷だらけになっていたかもしれない……。想像するだけで僕は背筋がゾッとした。


「私の放つかまいたちは目には見えないぞ。さあどうする?」


咲は高らかに笑う。く、目には見えない攻撃か……このままでは咲の思うつぼだ。そう思った僕は咲との距離を詰め、杖で攻撃を仕掛ける。

 狙いすました僕の杖が咲の脇腹を打つべく振るわれた。咲の刀と僕の杖が真っ正面からぶつかる。

杖と刀は激しく火花を散らし、金属音を掻き鳴らす。

僕の腕はぶつかり合う力の大きさに僕の腕は悲鳴を上げた。一方、咲は余裕のある態度だ。やはり剣士と魔法使いでは地力が違うか……。

修行しているとは言え、僕と超人レベルの剣士の咲との間には超え難い差があった。

 しかしよい作戦はない。僕は咲から一度距離をとり鍔ぜり合いをやめる。そして改めて次々と杖を振るう。右、左、正面、……杖が振られる度に刀によって防がれた。その度にキンっと澄んだ音が会場に響き、火花が舞台の上に咲く。


「白河、咲に近接戦で勝つのは無理よ! 危険を犯してもいいから咲から離れなさい!」


僕の様子を見兼ねた師匠が僕にアドバイスをしてくれた。やはりそうするしかないか……。

僕は師匠の意見に従って、かまいたちを放たれることを覚悟して咲から距離をとる。そして、僕は咲がかまいたちを放つ前になんとか魔法のイメージをして無詠唱で魔法を放つ。

数十ものバスケットボールほどの炎の塊が僕の周りに発生した。それらは咲に向かって炎の弧を舞台の上に描き飛んでいく。当たれば人一人ぐらい簡単に灰になる魔力は込めてある。だが、咲はなんと刀で炎を斬りはじめた。半分にされた炎は舞台を黒く焦がしていく。観客席からわあっと驚きの声が上がる。

 なんて非常識な……一瞬驚きで僕まで観客たちのように思考が止まりかけた。しかし僕はすぐに思考を再開できた。僕の周りにまだ数十もある炎はしばらくの間とめどなく咲を襲い続けるからだ。


「いいわよ……。勝てる!」


 師匠のつぶやきを僕はハッキリと聞くことができた。だが僕にはどうにも嫌な予感がしていた。咲がこのままやられるとは思えなかったのだ。

それからしばらくしていた黙々と炎を斬り続けている咲の額から汗が滴り落ちた。


「白河、私は君を舐めていたようだ。

ここからは本気でやろう。白河、私の流派の名前を覚えているか?」


 咲は炎の塊を次から次へと切り裂きながら僕に尋ねてきた。咲は炎の塊に囲まれながらもどこかまだまだゆとりのある顔をしていた。なにかある。そう思った僕はなんで今そんなことを聞くんだ? という疑問を心の底にしまい込んだ。そして咲の問いかけに素直に答える。


「飛天蒼空流でしたよね?」


僕の答えに咲は炎を斬りながらも満足そうな顔をした。そして上機嫌で話を始める。


「そうだ。では今、飛天蒼空流がなぜそう呼ばれるようになったのかを教えてやろう……」


咲は不気味な表情をすると唸り始めた。髪の毛が逆立ち身体が揺れ始める。


「嘘……ありえない」


しばらくして、咲のナルが頬をつねりながら呆然とつぶやいた。


「東方にそういう流派があるとは聞いたことあるけど実在したとは……」


師匠も咲の様子を見て唖然としていた。その口は半開きになってしまっている。


「飛ぶとは……」


僕は咲を見て思わずつぶやいた。

信じられないことに咲はその時、空に浮かび上がっていたのだ。魔法でも完全な飛行は難しいのに……。


「さあ、試合はここからだ!」


咲は上空で大声で宣言した……。

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