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第十七話 ベスト8! 戦いはこれから

次回から本格的な戦いが始まります。

第十七話 ベスト8! 戦いはこれから


舞台に立っている選手は大きな怪我を負っていた。小柄な体を巨大な切り傷が縦にはしっている。そこまではまだ普通だ。武道会なら怪我をしていても何の不思議もない。だが傷口が尋常ではなかった。人間が怪我をすると血が出てひどいと骨が見えたりする。しかしその選手の傷口からはコードらしき物体が飛び出し、金属の骨格が覗いていた。


「人じゃない……。ゴーレム?」


ナルが師匠の目を見て言う。師匠は肩をすくめて言った。


「あれだけ人間に近い形のゴーレムを作るのは私でもむずかしいわ。それにもし作れたとしても武道会に出場させるなんてとてもとても……」


師匠でも無理なのか……。僕は改めてその選手を見た。どこにでもいそうな気弱そうな小柄の男にしか見えない。恐ろしいほど良くできている。考えたくないがこんな物を造れるのはあの人しか……。


「えー、大陸最強武道会の規定には精霊族や魔族の参加禁止は記されていますが、それ以外の参加については記されておりません。ですのでクレナリオン選手の参加を引き続き認めます。試合を再開して下さい!」


司会者の発言に会場が揺れる。あろうことかクレナリオンとか言う選手はこれからも出場を認められるらしいようだ。


「良かったじゃないか、出場停止にならなくて。でも君はこの試合で退場だよ! この僕が君を倒すからさ!」


もう一人の対戦選手らしい気障な優男がレイピアでクレナリオンに攻撃を仕掛ける。かなり速い! 言うだけのことはある。口先だけではないようだ。さらに優男は無駄のない流れるような動きで次々と斬撃を放っていく。


「どうだい? さっき君を切った時より速いだろう? これ以上怪我したくないなら降参したまえ」


優男はレイピアで絶え間無く攻撃しながらクレナリオンに降参を迫る。クレナリオンはニヤリと不適な笑みを浮かべた。


「オロカナ……」


クレナリオンは電話越しのような無機質な声で言うと優男のレイピアを掴んだ。優男は顔を赤くして力を込めて引き抜こうとするが引き抜けない。やがてクレナリオンは優男の手からレイピアを強引に取り上げるとその場で直角に曲げてしまった。


「馬鹿な……ミスリルのレイピアを曲げるなんて……」


言葉を失っている優男に、クレナリオンは嫌みったらしい笑みを浮かべて話し始める。


「オ前ヲ倒スコトナド簡単ダ。タダ修復機能ノ確認ガシタクテ切ラレタダケダ」


そういうとクレナリオンは手に持ったレイピアの残骸を放り投げ、優男に近づいた。

 ドンという鈍い音がすると優男が宙を舞う。優男は観客席に叩きつけられた。


「これは……なんとも驚きの試合でしたぁー! 果して今後クレナリオン選手を止められる選手は現れるのでしょうか!」


しばらく会場が沈黙したあと司会者が魔法具片手に思い切り叫ぶ。試合が一応終わったので僕らは重い足取りで控え室に戻った。


★★★★★★★★


「わしは知らん、本当にそんなクレナリオンなんて物は知らんぞ!」


僕はスフィアに博士を呼んで来て貰っていた。無論、尋問するためである。この人がクレナリオンの製作者としか考えられない。


「そんなはずありません! あんな物を造れるのは博士だけですから」


僕は冷静に嘘をついているであろう博士をさらに問い詰める。


「だから知らんものは知らん! だいたいわしは巨大ロボット派だ。人間サイズのロボットなんて造らんわ!」


博士は無限巾着の中からロボットのフィギュアを取り出して熱く語り始めた。案外嘘をついてないのか? だがそうすると一体誰があんな物を……。


「あれはその老人の造ったロボットとかいう奴じゃなくておそらく古代兵器よ。ああいう兵器を文献で見たことあるから」


師匠が否定し続ける博士を見て言う。古代兵器か。意外にそうかも知れないな。博士が造ったならもっと破滅的な性能だろうし。


「いずれにせよ、私が明日の準決勝で戦えば奴の正体がわかるな」


近くで話を聞いていた咲がトーナメント表を見て言う。うぬ……なんかおかしいぞ。


「ちょっと待て。それまでに白河との試合があるじゃないか。準決勝に進出するのは白河に決まっているぞ!」


僕の隣にいたスフィアが咲に噛み付いた。その通りとは言わないが、咲が勝つと決まった訳ではないはずだ。


「私は東方随一の剣士だ。白河に負けるつもりはない」


咲はさも当然という風に言ってのけた。何かが僕の中で切れた。


「そこまで言うなら僕には絶対負けませんよね?」


「もちろん。そうだな、もし負けたら白河に一生仕えてやろうじゃないか」


売り言葉に買い言葉。咲はすごいことを言い出した。よし、絶対勝って謝らせてやる。


「白河、面白い約束をするのもいいけどそろそろ試合よ。次の試合に勝たないと咲と戦うことすらできないんだから」


 師匠がニヤニヤ笑いながら僕に試合の時間を知らせてくれた。僕は改めて気合いを入れ直して舞台に向かう。


★★★★★★★★


武道会二日目になった。今日は準々決勝から行われる。もちろん僕もちゃんと残っていた。


「それでは大陸最強武道会二日目を始めたいと思いまーす。まずは今日まで勝ち残った選手たち八名の入場です。拍手!」


司会者の合図とともに僕らは舞台の上に上った。僕は改めて周りの選手たちの顔を見る。ナル、師匠、咲にクレナリオン、色気たっぷりの女戦士にダタールの騎士団長で音より速いとか言う男。あれ一人足りなくないか?


「以上七名って……おやおや一人遅れてますね、お、きたきた。以上八名で戦います」


遅れてきた男は昨日最初に師匠が睨みつけていた男だった。師匠は再び鋭い目をして睨みつける。男は笑みを師匠に返した。なんだろう、得体の知れない男だ。


「皆様、お待たせいたしました。それでは準々決勝第一試合を始めたいと思います。白河選手と咲選手以外は控え室にお戻り下さい」


司会者が言うと僕と咲以外は控え室へと戻ってゆく。師匠とナルだけは舞台の脇から試合を見てくれるようだが。


「頑張ってなの。負けたらダメ」


舞台の下からナルが真剣な目をして言ってきた。僕は大きく首を振る。


「それでは準々決勝第一試合……開始!」


いよいよ僕の運命の試合が始まった……。



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