第十五話 大陸最強武道会ついに開幕!
ついに武道会編に突入です! 長かった……。
第十五話 大陸最強武道会ついに開幕!
僕らは波乱の再会を終え、ついに武道会の当日を迎えた。
「すごい人出ですね。一万人以上いませんか?」
会場となる競技場は様々な装備に身を包んだ冒険者たちや見物客で賑わっていた。楕円型をした野球場ほどもありそうな競技場の周りが、人で埋めつくされている。
「昔とかわらないわね。私たちも早く受付すませるわよ」
師匠はそういうと僕らの手を引っ張り、冒険者でごった返す受付へと向かった。
受付に着くと受付のおじさんが妙な顔をして僕ら三人を見た。
「三人で出場ですか?」
受付の人は痛い人でも見るような目をする。僕は辺り見回した。ゴツいおじさん連中に怪しい雰囲気たっぷりの魔法使いたちばかりが見える。なるほど……。あまりにも僕たちが弱そうだから疑っているのか。か、悲しくなんかないぞ!
「二人で参加よ。ほら、名前を書き込んで」
僕とナルは受付の人の微妙な視線を無視して出場選手名簿に書き込んだ。
「おっと、すまない」
肩に何かがぶつかった。僕が後ろを振り向くと着物を着た女の人が立っていた。長いつややかな黒髪に紅い着物が映えている。 その後ろには黒い胴着を着た男たちが控えていた。
「師範、行ってらっしゃいませ!」
男たちは一斉に頭を下げた。女は何かの師範で男たちは門下生のようだ。
「あなたも出場選手なの?」
ナルが女に聞いた。女はナルに気持ちよく答える。
「ああ、私は桜坂 咲。東方で飛天蒼空流という流派の師範をしている。君たちも出場選手なのか?」
ナルは咲に元気良く答える。
「そうなの! 私はナル、こっちは白河よ。よろしく」
咲は師匠の方を見てつぶやいた。
「あなたは出場しないのか? かなりの腕前に見えるが……」
師匠は咲の質問に笑いながら答えた。
「ははは、私はこの子たちの師匠よ。付き添いでいるだけよ。だから出場は……うぬ?」
不意に師匠はある一人の冒険者を鋭い目つきで睨みつけた。さらに顔を険しくして唸る。僕にはその冒険者はどこにでもいそうな冴えない騎士風の男に見えるのだけど……
「まさか……。気が変わった。出場するわ」
師匠は出場選手名簿に名前をさらさらと書き加える。そんな、師匠には勝てませんよ!
「師匠、どうして?」
ナルが師匠の顔を上目遣いに見る。師匠は目を逸らすと鞄から漆黒のローブと長めの金属の杖を取り出した。
「まあ、気にしないで。それよりも二人にプレゼントがあるわよ!」
師匠は話をうまく逸らすとローブと杖を差し出した。滑らかな質感のローブが肌に心地好い。
「それはドラゴンの皮! しかも杖はオリハルコニウムでできてるじゃないか!」
咲が僕らの貰ったプレゼントを見て叫ぶ。そんなにすごい物なのか?
「師匠、ありがとうなの!」
ナルも感動した顔をして、師匠を尊敬の眼差しで見つめる。
「ありがとうございます!」
僕も良くわからなかったがすごいことのようなので深々と頭を下げた。
「私にとって見れば、大したことじゃないんだけどね」
師匠はかなり自慢そうに高笑いをする。
「すごい人なんだ……。これは油断できそうにないな。それじゃ、お互い頑張って試合で会おう!」
咲は一言いうと競技場の中に入って行った。僕らもすぐに続いて中に入っていく。
★★★★★★★★
競技場の中心にある舞台の上で背の高いスーツのような服を着た司会者が杖をマイクのような物を手にして大音響で叫んでいる。
「さあー、いよいよこの時がやって参りましたぁー! 大陸最強武道会開幕です! 今年は五十二人もの選手が出場いたしました。みな大陸各地から集まった猛者中の猛者! まさにこの大陸最強の座と勇者一行に加わる権利を賭けて戦うのにふさわしい大会となりました。それでは出場選手入場です!」
観客たちから大歓声が沸き上がった。競技場が熱気に包まれる。
「白河負けるなぁー、優勝しろぉー!」
控え室から出て行くと大きな旗を振り回して叫ぶスフィアの姿が見えた。は、恥ずかしい。
「以上五十二人が今回出場する選手であります。それではさーっそく記念すべき第一回戦第一試合を始めたいと思います。第一試合はロベルト選手対クレナリオン選手です!」
僕らは控え室に戻っていった。僕は第四試合から出場する。まだしばらく時間があった。その間ナルと出場選手の観察をする。
「誰か有名な人とかいる?」
ナルはしばらく考え込むと一人の男を見た。鈍い銀色の鎧を着た、線の細い男だ。確かに近寄り難いような雰囲気の男である。
「全員有名だけど強いて言えば彼。彼は確かダタール帝国の騎士団長で優勝候補筆頭と言われているの。何でも音より速い男って呼ばれているんだとか」
音より速いか……。本当だとしたら師匠なみの化け物だな。僕がしばらく思案していると師匠が僕を呼びに来た。
「白河、出番よ! 頑張って来なさい」
「はい、行ってきます!」
僕は師匠に気合いを入れて返事をした。
「私と師匠は舞台の脇から応援してるの。頑張って!」
ナルは僕の目を見て言った。僕は深く頷く。そして舞台に向かってゆっくりと歩き始めた……。
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