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第九話 勇者一行に加われ!

とにかく急展開です。



第九話 勇者一行に加われ!


「勇者も魔王もすでに知っているぞ」


翌日、博士に依頼中とそのあとのことを話すと想定外の返事が返ってきた。


「どうして知っているんですか? 僕らも昨日知ったばかりなのに」


「宿屋にダタール帝国から来たとか言う商人がいてな、そいつから聞いたのだ」


博士にしては普通の方法で知ったようだ。人の頭の中を勝手に覗いたとかではなくて良かった。


「そのとき、ついでに面白いことも聞いたぞ」


博士は少しもったいぶって間を開けた。スフィアが興味津々という顔をしてベッドから身を乗り出す。博士の言う面白いことなんてきっとろくでもないことだと僕は思うんだけど……。


「実はな、三ヶ月後に開かれる武道会で優勝すれば、なんと勇者一行に加われるらしい!」


博士は僕らの顔を見据える。だいたい博士の言いたいことは想像できた。


「僕らが参加してどっちかが優勝しろって言いたいんですよね……」


「ああそうだ。良くわかったな。さすがはわしの助手だ!」


やっぱりそうか!すまない、スフィア頼む! 君に任せた!

僕はスフィアを期待の眼差しで見つめた。


「うーん、たぶんなのだが精霊の私は武道会には参加できないぞ。精霊族だからな。白河、一人で戦ってくれ! 私は観客席から応援するからな!」


た、頼みの綱のスフィアが! どうするのさ!

 真っ白になっていく僕のことを無視していた博士が、ふと腕時計を見てつぶやいた。


「そう言えばお前たち、組合に呼ばれてるのではなかったか?」


スフィアが慌ててすでに真っ白になっていた僕を引きずって組合に行こうとした。そこへ博士が何か投げてくる。それは小さな箱だった。開けると中にはコンタクトが入っている。


「それを付ければどんな文字も読めて書けるようになるはずだ。大事にするのだぞ」


博士、ありがとう! 僕は博士に初めて感謝の気持ちを抱いた。

僕は感動しながら組合へと向かった。


★★★★★★★★


組合に着くとリーナはすでに待ちくたびれたのか怒っていた。


「遅いです! せっかく良いお知らせがあるのですから、早く来てくださいよ」


「ごめん、時間のこと忘れてたよ。それで良いお知らせって何かな?」


リーナは一瞬呆れたような顔をしたが、すぐに笑顔になってお知らせの内容を話してくれた。


「驚かないでくださいね、お二人は今日付けでCランクになることが決まりました!」


リーナは満面の笑みを浮かべているが、世間にうとい僕らにはいまいちピンとこない。僕とスフィアは微妙な愛想笑いをした。


「お二人とも反応がおかしいですよ!FからCなんて私でも初めて見たぐらいの大出世なんですからもっと反応してください!」


リーナは頬を膨らませながら、奥から小さめの麻袋を一つ持ってきた。


「組合からなんと報奨金まででています! 三十万ルーツです!」


今度こそ僕は驚いた。三十万ルーツと言ったら一ヶ月くらい生活できる額じゃないか。ずいぶんたくさん払ってくれたものだ。


「白河さん、今度は良い反応でしたね。もしかしてお金に弱いんですかー?」


リーナはからかうように言ってきた。お金が好きなのは否定しないけど守銭奴ではないぞ!


「白河さん面白いです……。さて、用事は以上です。ついでに何か依頼を受けていきます?」


さきほどから黙っていたスフィアがここで急に口を開いた。


「なあ、こちらから頼みたいことがあるのだが良いか?」


リーナは変な顔をしながらもスフィアの質問に答える。


「別に良いですけど、どんなご用件ですか?」


「実は、魔法使いを一人探してくれないか? 白河を弟子入りさせてくれる魔法使いを」


 リーナはいよいよ疑わしげな顔になった。


「どうして白河さんが弟子入りする必要があるのですか?」


スフィアは突然泣きまねを始めた。かなり下手くそだ。でもリーナはわからないようで、慌て始める。


「どうしたんですか! 私でよかったらなんでも話してください!」


スフィアは芝居がかった口調で話し始めた。


「白河は深ーい事情があって昨日初めて魔法を使ったのだ。そしたら初級の呪文が暴走してあんなことに……。私が教えてやれば良いのだが私にも事情があってな……」


「わかりました! 白河さんのために最高の魔法使いを探して見せます!」


 リーナはすっかりスフィアにのせられてカウンターの奥に飛んで行った。僕は勝手に話を進めたスフィアを自分のそばに寄せる。


「なんで僕が弟子入りするのさ。スフィアが魔法について教えてくれれば良いのに」


スフィアは申し訳なさそうに僕につぶやく。


「私は精霊族でも落ちこぼれでな……。精霊魔法は結構使えるのだが普通の魔法はあまり得意でないんだ。それに人間の白河は人間の魔法使いに教えてもらった方が良いかもしれないからな」


スフィアの目は真剣そのものだった。僕はその目を見てあきらめた。

ちょうどその時リーナが戻ってきた。


「白河さん、すごいですよ! Sランクの魔法使いがこの近くにいました! 最近は活動してないようで、私も会ったことないですけど確かに住んでます! 会って見たらどうですか?」


 リーナが興奮した様子で僕に話しかけてきた。僕はスフィアの方を見る。


「早速行ってみると良い。博士には私が行っておこう……。これでしばらくお別れだな。修行頑張るんだぞ」


スフィアは組合から出て行こうとしたが、こっちに戻ってきた。そして僕の口に……。


「しばらく会えないかもしれないからな。あと、私はいつでも白河のこと考えてるぞ。だから修行中に浮気なんてするなよ!」


スフィアはそう言い残して去って行った。顔を真っ赤にした僕は、スフィアにもう会えない訳でもないのに少し寂しかった。



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