1/46
プロローグ
プロローグ
闇の堆積した、いずこにあるとも知れぬ部屋。
その中心に一人の男が座っていた。つやのない銀髪、いや白髪で室内の闇に溶ける黒い服を身につけている。その顔は高い筋の通った鼻と大きな眼が特徴的で大変整っていた。
だが、乾燥してかさついた肌と獣のような眼光によって男の顔はその美しさを根こそぎ奪い取られていた。
そんな男は木目の浮いた光沢のある机の上に紙の束を広げ、ウンウン唸りながら目を通していた。
「ほう……これは」
男の目がある資料の上で止まる。男はその資料を手に取ると食い入るように読み漁り始めた。
「はは、素晴らしい、これこそ私の求めていた結果だ」
男は資料を机の上に放ると、笑い始めた。狂気に染まった声が室内の澱んだ空気を揺るがせる。
「これが成功すれば私は至高の存在になれる! 失ったものを再びこの手に取り戻すのだ! もう一度、もう一度あの日に戻れる!」
男は立ち上がり、拳を突き上げる。その快哉の叫びは深い闇に吸い込まれていった。
今、何かの歯車が回り始めた。