第5章:架かる橋、崩れ落ちる橋 (As one bridge is formed, another falls)
ナウィックの手が振り下ろされる。
その背後から、モトの腕が彼を羽交い締めにしていた。
決して華麗な技ではない。地に這い蹲っていた状態から、ただ己の意地と執念だけで絞り出した最後の一撃。彼はナウィックを強引に後方へと反り投げ、焦げた大地へ脳天から叩きつける渾身のバックドロップを見舞った。激しい衝撃が両者の骨を揺らす。
息を詰まらせ、モトが一瞬地面に倒れ伏している間に、ナウィックは身をよじって立ち上がった。彼はモトを乱暴に掴み上げ、ナジョの隣へと放り投げる。
「なぜそこまで死に急ぐのか理解できんな」とナウィック。「だがいいだろう。望み通りにしてやる」
ナジョはモトを呆然と見つめた。
モトは片肘をついて体を起こす。呼吸はボロボロだったが、その瞳の光だけは全く衰えていなかった。
「お前が『才能』ってやつを恐れてるなら……俺のことも底抜けに恐れた方がいいぜ。なんせ、今お前の目の前にいるのは『最強』だからな」
ナジョが首を向ける。彼の表情に、ほとんど無意識の、競争心のようなものが微かに浮かんだ。
「……まずは俺を倒してから言え、チビ」
「俺の方が、お前の親父をたくさん殴ったぞ」
「俺の方が、重い一撃を入れた」
「――いい加減にしろ!」ナウィックの声が甲高く裏返った。「私を無視するな! これから死ぬというのに、ふざけおって……!」
「……まだ殴り足りなかったみたいだな」モトがナジョに向かってボヤく。
ナウィックが両手を掲げる。その両腕に、濃密で凶暴な雷光がとぐろを巻いた。気圧が下がる。足元の大地が、帯電によって黒く変色していく。
その時、雷鳴が轟いた。
ズドォォォン……ッ!!
空からではない。もっと古く、深い場所からのような響き。鳴り響くというより、それは一つの『宣告』だった。肩を重い手で掴まれたかのような物理的な圧力が、ナウィックを打つ。
彼の動きが止まった。両腕が、まるで自分の意志ではないかのようにゆっくりと下ろされていく。顔から血の気が引いていた。
土埃の向こうから、一人の老人が歩いてくる。
完璧に仕立てられた衣服。急ぐ素振りは微塵もない。己の存在を誇示する必要など、ただの一度もなかった人間の持つ風格。彼の背後で、先ほどの雷鳴が、まるで敬意を払って距離を置いているかのように微かに響き続けている。
「よくも私の後継者を、私から遠ざけてくれたな、ナウィック」
何年もの間、最も恐れていた言葉を突きつけられた男の硬直した動きで、ナウィックが振り返る。
ジニンビ(Ginimbi)の背後に控える従者たちの中から、ドレイクが一歩前に出た。その顔は険しく、疲れ切っており、そして同時に深い安堵に満ちていた。
ナジョはドレイクを見た。そして、数メートル離れた地面に倒れているシェウを見る。彼女と視線が交差した瞬間、すべてのピースが繋がった。
ナジョが一人で突っ走り、二人を置き去りにした時。シェウは、彼らが向かっている絶望的な状況を一目見て、瞬時に全く別の計算を弾き出していたのだ。彼女は分かっていた。自分たちがこのレベルの大人の雷使いに勝てるわけがないと。誰も勝てないと。
だが、ジニンビであれば、孫が生きていると知れば必ず動く。それは賭ける価値のある確実な手だった。
モトのあの冗談も。決してこの状況を深刻に受け止めようとしなかった、あの狂気じみた態度の裏で。彼は最初からずっと、広場の入り口を監視し、時間を稼いでいたのだ。
あと一秒遅れていれば、結果は全く違うものになっていただろう。
ナウィックは追い詰められ、声にならない言葉を呑み込んで表情を歪ませた。ジニンビは彼に言葉を探す時間など与えなかった。
「答えろ!」
「なぜ、私に帝国を譲るのをそこまで拒むのです!?」ナウィックの声に混じる絶望が、彼をひどく醜く、そして実年齢よりもずっと幼く見せていた。「なぜだ!?」
ジニンビの表情はピクリとも動かない。「まだそんなことを言っているのか。言ったはずだ。お前は弱い、と。お前に譲れば、十七代にわたって築き上げた財産が一年と持たずに奪われるだろう」
「あなたが一度も私を鍛えてくれなかったのに、どうして強くなれると言うのです!」『鍛える』という言葉でナウィックの声が割れた。そのひび割れからは、長い間吐き出されるのを待っていた泥のような感情が溢れ出していた。「あなたはいつだってナイジェル(Nigel)ばかりを――」
「その名を口にするな」ジニンビの声の温度が、絶対零度まで急降下した。「お前が何をしたか、私は知っている。それでも私はお前を生かしておいた。その結果がこれか」
「死してなお、お気に入りの息子を庇うのか。あなたは私をただの護衛の一人かのように――」
「お前には『嵐』の資質がない」ジニンビは、まるで扉を閉ざすように言い放った。「お前には最初から、受け継ぐ権利などなかったのだ。それでも、私はお前にすべてを与えた。お前だけの部下を。お前だけの自由を――他の者たちのように、お前を監視したりはしなかった。だが、お前はその自由を使って、自分の子を狩ろうとした」
彼は顔をわずかに背けた。まるでナウィックが、直視する価値もないほど矮小な存在に成り下がったかのように。
「お前は恩知らずの愚か者というだけではない。この一族にとっての危険因子だ。私が死ぬまで、この名が地に落ちることは決して許さん」
その後下された追放の宣告は、静かで、そして絶対的なものだった。
ナウィックの口が開く。「……私に、どこへ行けと言うのです」その声には、もう虚勢を張る気力すら残っていなかった。「ゼン(Zen)の狂信者たちの元へか? それとも、ゲヘン(Gehen)の地獄絵図の中へ行けと?」
「お前も男だろう」すでに背を向けながら、ジニンビが言った。「自分で考えろ」
ナジョは、土埃の中で立ち尽くす父親を見ていた。ナウィックの顔にはまだ怒りが残っていたが、その底には別の何かがあった。壊れてしまった、ひどく古い何か。おそらく二人とも今まで一度も名前をつけたことのないような、深い悲哀。それはほんの一瞬だけ浮かび上がり、すぐに消えた。ナジョは理由も分からないまま、その光景を記憶の底へしまい込んだ。
ジニンビがナジョの前に歩み寄ってきた。彼は、ずっとこの瞬間を待ちわびていた人間がそうするように、心の底からの感情を秘めた丁寧な作法で自己紹介をした。
「見せてみろ」彼はただ一言、そう言った。
ナジョは筋肉の奥深く、魂の底まで疲労困憊していた。前腕を上げ、力を振り絞る。しかし、皮膚の表面に浮かび上がったのは、弱々しく青白い、ほんの微かな火花だけだった。
パチッ……。
ジニンビの顔が、ふわりと綻んだ。ここに到着してからずっと崩さなかった、あの洗練された冷徹な表情ではない。明るく、驚きに満ちた、全く無防備な、本物の笑顔だった。
「ああ。これだ」
最初に医療チームが到着し、次いで提案がなされた。雷の里への居住、立派な屋敷、エリート校への入学手続き。ずっとこの時を待っていて、これ以上一秒たりとも時間を無駄にしたくない男の並外れたスピードで、すべてが手配されていく。
ナジョは一切の躊躇なく、友人たちのことも要求した。全員分だ。
ジニンビは交渉の余地すら挟まずに同意した。全員に、誰かと部屋を共有する必要などないほど巨大な屋敷が与えられることになった。ナオミは深く感謝してそれを受け入れたが、静かに、少し離れた場所に別の住まいを手配してもらった。ナウィックの記憶が染み付きすぎた場所の近くには住めなかったからだ。その決断に反対する者は誰もいなかった。
夕陽が沈み、世界を黄金色に染め上げる中、モトは雷の里の門の前に立っていた。彼は門の向こうにあるエリート校を見つめ、多くを語らなかった。シェウは彼の隣に座り、彼が言葉を発しない理由を理解していた。
――そこから何マイルも離れた場所。
ニカ(Nyika)の国境沿いの岩の上に、ナウィックは一人で座っていた。祖国は彼の背後にあり、もう二度と戻ることはできない。
足音が聞こえたが、彼は顔を上げなかった。
「その顔、見覚えがあるよ」声がした。気負いのない、ゆったりとした、どこか面白がっているような声。「ツイてない一日だったって顔だ」
「……誰が気にするもんか」とナウィック。
男は近くに座ったのか、座らなかったのか、あるいは立っていたのか――ナウィックは気にも留めなかった。その時、彼の視界に何かが差し出された。
差し出された手。その掌に乗せられた、一つの紋章。
絡み合う二つのアルファベット。『M』と『D』。
ナウィックはそこで初めて、顔を上げた。
男は長身で痩躯。こんな辺境の地には不釣り合いなほど、汚れ一つない白と黄色の服を着ていた。短いブロンドの髪。世の中のほとんどの出来事を適度に楽しんでいるような表情で、今この瞬間も例外ではないらしかった。
「貴様……何者だ?」ナウィックが問う。
男は、微笑んだ。




