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9-3旧知と牢籠

黑稻相癸です。第三節。


亜倫、探しに来たよ。でもここはやっぱり敵の地だ。慎重にいかないと……

 地下一層は想像以上に複雑だった。


 通路は蛇穴のように曲がりくねり、数十歩ごとに岐路があった。壁の松明の間隔は広く、その光は足元のわずかな範囲しか照らさず、残りは全て闇だった。


 あたしにとってはむしろ好都合だった。


 耳をぴんと立て、かすかな気配を一つ一つ捕らえた。遠くに足音がした——二人、歩みが重く、皮鎧をつけている守衛だろう。あたしたちの方へ向かってきている。


「左だ」あたしは声を押し殺し、艾琳を引っ張って狭い脇道に飛び込んだ。


 壁に体を貼り、息を止めた。二人の守衛があたしたちの前三歩のところを通り過ぎた。気にも留めなかった。


「……上があんなに騒がしいのに、まだここを守らせるのか?」


「余計なことを言うな。ヴァルドが言った、荷物が何より大事だと」


 声が遠ざかった。


 あたしはため息を吐いて、艾琳に前進の合図を送った。


……


 このような場面がそれからの道中で何度も繰り返された。


 一人で角に蹲って居眠りしている守衛を、あたしたちが背後から音もなく通り抜けることもあった。二、三人が固まって雑談しているところは、あたしと艾琳が迂回して蜘蛛の巣だらけの廃棄支道を歩くしかなかった。


 岐路に出るたびに、判断を下すのはあたしの耳と鼻だった。


左に風がある。もっと深いところへ繋がっている。


右にねずみの臭いがする。行き止まりかもしれない。


前方……人がいる。三人。いや四人。そのうち一人の呼吸が浅い、眠っているのかも。


「右へ」艾琳が突然あたしの袖を引いた。壁と一体化しているように見える側道を指差した。


「旧市図によると、この道は主通路を迂回して下層の階段に直接繋がる」


 あたしは一瞬躊躇した。その通路は墨のように黒く、しかも鼻がむずむずするほどのかび臭さがした。


 でも艾琳の目は揺るがなかった。


「信じて」彼女は言った。


 あたしは頷いて、先に立たせた。


 森の中では精靈が最も潜行に長けた種族だ。でもこの地底の迷宮では、あたしたちはそれぞれの強みを持っている——あたしの鼻と耳、彼女の地図と魔法。


……


 とうとう地下二層への階段を見つけた。


 狭い石段が螺旋状に下り、さらに深い闇へと消えていた。階段口に二人の守衛が立っていた——一人は大柄な人間で、錆びた曲刀を手に持っていた。


 そしてもう一人は——


 艾琳が突然あたしの腕をつかんだ。力が強くて、危うく声が出るところだった。


「探知魔法を使っている者がいる」


 声が張り詰めた弦のように緊張していた。


「あの守衛——この辺りを走査している。しかも……」


 声が詰まり、顔に信じられないという表情が浮かんだ。


「あれは精靈だ」


 あたしの心臓がずんと沈んだ。


 あの守衛を見た。頭巾で顔の大半を隠していたが、その細長い体型、白い肌、そして隙間から見える尖った耳——


 間違いない。精靈だ。


「なぜ精靈が人身売買の連中に加わっているの?」あたしは声を押し殺して聞いた。心臓が太鼓のように打っていた。


 艾琳は答えなかった。顔色が地底の石墓よりも青白かった。


 その時、あの精靈の守衛が突然振り向き、薄金色の目があたしたちの潜む陰影を真っ直ぐに見た。


「誰かいる」


 声は小さいが、この静寂の地底では、驚雷のように澄み渡った。


 人間の守衛がすぐに曲刀を抜いた。


「どこに——」


 言葉が終わらなかった。


 一つの黒い影があたしたちの後ろを走り縫い、風のように速かった。


ドン。


ドン。


 二つの鈍い音とともに、二人の守衛がほぼ同時に倒れた。精靈の額には青い痣ができており、人間の守衛はぐにゃりと地面に伏せ、後頭部にまだわずかに血が滲んでいた。


「動きが遅いぞ、薬草師よ」


 見知った声が闇から届いた。


 亜倫が陰から歩み出た。手にはさっきあたしが渡した折り畳みナイフをまだ握っていた。服はさらに破れ、顔にざっと擦り傷も増えていたが、あの目は刃のように鋭かった。


「どうやって——」


「牢の鍵が古すぎた」彼はさらりと言い、さっきの二連続昏倒は片手間だと言わんばかりだった。


「それに、自分で処理できると言っただろう」


 艾琳が地面の気絶した精靈をじっと見て、眉をさらにひそめた。


「なぜ精靈が……」


「後で話す」亜倫が遮り、下へ続く階段に目を走らせた。


「先に人を救う。時間がない」


……


 亜倫が先導するようになってから、道が格段にスムーズになった。


 彼はまるでこの地底の構造を熟知しているかのようだった——拘留されていた間、守衛たちの会話から断片を繋ぎ合わせたのかもしれない。守衛に出くわすたびに、必ず先に合図をくれて、最速で相手を処理した。


 殺さない。昏倒させる。


「死体は騒ぎを起こす」彼が低く説明した。


「気絶しているだけなら、怠けているとしか思われない」


 あたしは余計なことを聞かなかった。


……


 地下三層。


 最後の階段を下りた時、目の前の光景にあたしは息を飲んだ。


 上よりずっと広い空間で、巨大な地下倉庫のようだった。薄暗い火の光が鉄の檻の列を照らし出していた——


 動物を入れる檻ではない。*人*を入れる檻だ。


 中に様々な影が蜷局を巻いていた。精靈は垂れた尖耳で目は虚ろ。獣人はかつて強靱だった体が今や骨と皮。何種族かわからない者たちも数人、みんな同じように青白く、絶望を纏っていた。


 あたしの胃が波打った。


「この人たちは……」艾琳の声が震えていた。


「荷物だ」亜倫の声はこの地底の石壁のように冷たかった。


「彼らにとって、これは値を待つ荷物に過ぎない」


 守衛は意外なほど少なかった——二、三人のみで、しかも上の騒ぎに引き付けられていた。ただ、ここは空ではなかった。


 檻の群れの奥に、一人が立っていた。


 背を向けて、一つの檻の中の「荷物」を点検していた。その格好は普通の守衛ではなかった——皮革の外套、銀色の留め具、そして腰の宝石を嵌めた短剣。


検品する者だ。


 亜倫が突然足を止めた。


達里斯(ダリス)


 それは名前だった。しかし亜倫の口調の中に、あたしはそれ以上のものを聞いた——驚き、失望、そして一度も見たことのない……痛みのような何か。


 その人物が振り返った。


 三十代ほどに見え、きれいに整えた山羊髭を蓄え、口元に世慣れた微笑みを浮かべていた。視線が亜倫に落ちた時、その笑みがさらに深まった。


「亜倫?」


 目をぱちくりして、自分の目が信じられないという様子だった。


「まさか。昨夜のあの酔っ払いがお前だったとは……本当にこの稼業に来るとは思わなかったぞ?」


 亜倫に向かって数歩近づき、久しぶりに再会した仲間への熱っぽさを口調に含ませた。


「やっと腹を括ったと思っていたんだよ。人の助けにも金が要る、この世の中ただ働きなんてない——」


 突然、言葉が止まった。


 亜倫の後ろにいるあたしたちを見たからだ。


 あたしと艾琳。一人は獣人、一人は精靈。手に武器はないが、明らかに捕虜の様子でもない。


 達里斯の微笑みがゆっくりと固まった。


「……来るために来たんじゃないな」


 問いではなかった。


 亜倫は何も言わなかった。ただ達里斯を見て、その目の光がこの地底の陰影よりも深い闇を帯びた。


「俺たちはかつて長い道を共に走った」亜倫がついに口を開いた。声は静かだった。


「氷雪の洞窟を抜けて、裂谷の断崖を越えた。お前に助けられて、俺もお前を助けた」


「お前が去り際に言った言葉は覚えている——『助けにも金を貰う、それが生き残る道理だ』。俺は同意しなかった、でも尊重はした」


 彼は少し止まり、あの檻の中で蜷縮む影たちに目を走らせた。


「でもこれは金を貰うことじゃない、達里斯」


「これは命を売ることだ」


 達里斯の顔色が変わった。一歩退き、手がすでに腰の短剣に触れていた。


「お前にはわからない、亜倫。この世の中——」


「よくわかってる」


 亜倫の声が突然冷えた。


「だから申し訳ない」


「お前を生かしておくわけにはいかないようだ」


……


 戦闘は早く終わった。


 達里斯の腕前は悪くなかったが、彼一人だった。あたしたちは三人いた。


 亜倫が正面から絡みつき、折り畳みナイフが闇の中で鋭い弧を描いた。艾琳が後方で法杖を構え、風刃が達里斯の退路を断った。そしてあたしは——


 彼の斜め後方に回り込み、注意が逸れた一瞬に、鬼燈苔の抽出液を全力で顔に叩きつけた。


 達里斯の動きが固まった。目の焦点がぶれ、短剣が手から滑り落ちて、そのまま体全体が麻袋のようにぐにゃりと崩れ落ちた。


「殺さないんですか?」艾琳が聞いた。


 亜倫が一瞬沈黙した。


「縛れ」彼は最終的に言い、声に感情が読めなかった。


「法の裁きを受けるべきだ。俺ではなく」


 もう考える時間はなかった。


 あたしたちは手分けして、あの檻を開けにかかった。


 艾琳は魔法で錆びた錠前をいくつか溶かした。あたしは達里斯の体を探って鍵束を見つけ、一つ一つ試した。亜倫は折り畳みナイフで最も古い籠の扉を直接鋸で切断し——


 一つ。


 二つ。


 三つ。


……


 八つ。九つ。もう十近い籠だ。


 精靈、獣人、さらに何人かの人間。放たれた時、大半は立つこともできず、支えが要った。首にはまだあの灰色の環をつけている者もいた——紊魔項圈(まなかく)だ。艾琳が魔法で外そうとしたが、何らかの反制機構があり、彼女の魔力は壁にぶつかったように弾かれた。


「時間がない」亜倫が低く言った。


「まず連れ出す。項圈は後で対処する」


 あたしはその救われた人たちを見た——彼らの目に少しずつ希望の光が浮かんできた。長すぎる絶望の後、ついに光を見た者の表情だった。


あたしたちはやり遂げた。


 でもその思いは三秒と続かなかった。


 上の階段から足音が聞こえたからだ。


 たくさんの足音だ。


「こっちで倒れている!」


「下で何かあった!」


「下りろ!」


 あたしは顔を上げ、上層へ繋がる階段口を見つめた。松明の光が揺れ、影が壁の上で踊っていた。


 十数人。


 いや、もっと多いかもしれない。


 もう間に合わない。

お読みいただきありがとうございます。


「縛れ。法の裁きを受けるべきだ。俺ではなく」


 亜倫は旧友を殺さなかった。でも許しもしなかった。この冷静な判断の奥に、どれほど複雑な感情が隠れているのでしょうか。


——次回、第四節「暗渠と取引」

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