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4-3 泥濘の中の死の舞踏

黑稻相癸です。第三節。


地面の下に、何かがいた。


それだけ言えば、十分ですよね。


覚悟して、どうぞ。

 体が頭より先に反応した。


 尻尾が一瞬で棍のように張り詰め、全身の毛が電流を流されたように逆立った。「何がいるの」を尋ねる間もなかった——ザカの声が落ちたのと同じ一秒に、あたしは感じ取っていた。


 地面が動いていた。


 地震のような揺れではない。もっとおぞましい感覚だ。あの震動が岩層を伝って這い上がり、足の裏から頭の天辺まで駆け抜けた。規則的で、ゆっくりとした、大きなうねりを帯びていた。


 呼吸のように。


「出ろ!」ザカの声が鞭のように炸裂した。


 片手で黒曜石の長槍を掴み、もう片手で鉄頭の首縄を死んでも離さず、弾き飛ばされたようにテントの外へ突進した。鉄頭が悲鳴を上げた。四本の脚が濡れた石の上で滑ったが、ザカの力は圧倒的で、百キロはある駄獣を引きずったまま油布の外へ引っ張り出した。


 あたしも転がるように飛び出した。


 豪雨が一瞬で飲み込んだ。冷たい雨水が無数の小刀のように毛皮に突き刺さり、何も見えない。鉄頭の恐怖の嘶きとザカの怒鳴り声が風雨に混じり、方向がわからなかった。


 そして——


 地面が消えた。


 陥没ではない。下から突き上げられたのだ。


ドォン——!


 世界が目の前で爆発した。


 足元が突然消え、体が巨大な力に弾き飛ばされた。砕石、泥漿、雨水——全てが同時に顔を叩いた。口が泥でふさがれ、目が糊づけにされ、耳の中は崩壊の轟音だけだ。


 何回転したかわからない。着地した時、体は氷のような腐った泥の中に叩き込まれた。胸まで没するほど深かった。


「ペッ!ペペッ——!」


 あたしは狂ったように顔を拭った。指先で目の周りから粘つく泥を削ぎ落とすと、世界がゆっくりと水の中から浮かび上がるように戻ってきた——ぼやけた灰色。豪雨の白い線。そして……


 鉄頭。


 最初に聞こえたのは音だった。嘶きではない。短く、肺から絞り出された鈍い音——水を満たした皮袋が踏み潰されたような音。


 次に視覚だった。


 鉄頭がいなかった。


 さっきまでいた場所——あたしの右側、十歩と離れていない場所——は今や直径五歩を超える穴になっていた。泥が穴の縁から溢れかえっている。何かが中で咀嚼しているかのように。


 穴から伸び出ているのは、灰白色の柱だった。


 違う。柱ではない。


 それは生きている、ゆっくりと高さを増す巨大な肉の柱だった。灰白色の表面には瓦を積み重ねたように重なる岩石の鱗が覆い、一枚一枚があたしの掌ほどの大きさで、縁は喉を切れるほど鋭い。それはどんどん高くなった——二人分の高さ、三人分の高さ——生ぐさい熱気と骨の砕ける音を伴いながら。


 頂端に頭はなかった。目もなかった。


 あるのは、環状の巨大な口だけだった。


 その口が閉じていくところだった。血と雨水が口の隙間から滲み出し、岩石鱗の溝を伝って流れ落ち、灰白色の体に生々しい赤い筋を描いていた。


 鉄頭の後ろ足の一部が口の端からぶら下がっていた。蹄がまだ痙攣していた。


「鉄頭——!」ザカの声が傍らで炸裂した。


 言葉ではなかった。背骨の最も深いところから引き裂かれた慟哭だった。


 あたしはこれまでザカがこんな声を出すのを聞いたことがなかった。赤羽鷹に追われた時も。影妖が鉄頭に絡みついた時も。この瞬間、あたしより頭一つ分背が高く、木のように逞しいこの半獣人が発した声は、子を失った獣の声に似ていた。


 その目が赤くなった。悲しみの赤ではない。金色の獣瞳が血で満たされ、琥珀色に燃え上がった赤だ。


 彼は突っ込んでいった。


「ザカ!」あたしは手を伸ばして引き止めようとしたが、指が掴めたのは泥だけだった。


 彼は速すぎた。二歩の間に長槍は頭上高く掲げられ、耳を劈く戦吼を上げながら、巨蛇の胴体へと叩きつけた。


ガァン!


 黒曜石の穂先が岩石鱗に当たった。


 火花が豪雨の中で炸ぜ、橙赤色の欠片が雨水に即座に消された。矛の柄がザカの両腕の中で激しく震動し、歯が噛み合う音が聞こえた。


 白い傷跡一本。岩石鱗に残ったのは爪の深さの白い擦り傷だけだった。


 あの蛇は反応すらしなかった。身をよじりもしなかった。あの蛇にとって、ザカの全力の一撃は、雨粒が体に当たるのと変わらなかったのだろう。


「**石甲巨蛇(せっこうきょじゃ)**!」亜倫の声がどこかから届いた。


 この混乱の中でも、彼の声はあたしを苛立たせるほど冷静だった。


「ザカ!下がれ!体温を感知できる——近づくほど狙われるぞ!」


 ザカは聞かなかった。あるいは、聞こえていたが、体が理性の命令を拒んだ。また一撃、また一撃——毎回火花が散り、毎回白い擦り傷しか残らない。暴雨の中で生きた石壁に矛を叩きつけながら吼え続ける様は、罠に嵌まった野獣そのものだった。


 そして蛇が動いた。


 ゆっくりとした転向ではない。全身が鞭のように横薙ぎに払われた。


 風切り音。


 数トンの肉柱が高速で空気を断ち切る時の、遠雷に似た轟音だった。


 灰白色の胴体がザカの立つ場所を薙いだ。彼は最後の瞬間に長槍を横に構え、柄で受けた。


 鈍い音。骨が軋む音か?わからない。だがザカが吹き飛ばされるのを見た——泥地の上を少なくとも七、八歩後退し、両足が二本の深い溝を掘り、踵のところから泥が半身の高さまで舞い上がった。右腕が垂れ、長槍が落ちそうになった。


「逃げて——!」あたしは叫びながら、四肢で泥の穴から這い出してザカへと向かった。


 だがあれの方が一歩早かった。


 巨蛇はザカを追わなかった。向きを変えたのだ。


 目のない頭部——あの環状の巨口と、口辺で狂ったように蠢く触鬚を「頭」と呼べるなら——がこちらへ向いた。


 触鬚は一本一本が小指ほどの太さで、人を気持ち悪くさせる周期で蠢き、雨幕の中で空気中のあらゆる温度の揺らぎを探っていた。


 あたしを捕捉した。


 わかった。なぜなら、あたしの体温は三人の中で最も高いからだ——獣人の基礎体温は人間より半度高い。豪雨に冷やし尽くされたこの高原で、あたしは燃える松明も同然だった。


「直線で走るな!」亜倫の声が風雨の中で断続的に届いた。


「触鬚が方向を再捕捉するには時間がかかる——向きを変えるたびに二秒ある!」


 二秒。


 その数字を疑っている暇はなかった。巨口がもうあたしへと向けて開いていた——中は体より広い環状の咽喉管で、内壁が蠢き、返し鉤のある角質の歯板が生えていた。鉄頭の血がまだあの歯板に光っており、雨水に洗われて薄ピンクの流れになっていた。


 飛びかかってきた。


 あたしは左へ跳んだ。


 体全体がバネで弾かれたように——爪を泥に深く食い込ませ、その微かな踏ん張りを借りて最後の瞬間に元の位置の左へと弾き飛んだ。


ザバァ!


 巨口があたしの足元の地面を叩いた。岩が瞬時に砕け、泥と石塊が飲み込まれてから吐き出され、尻尾の先が巻き上がった気流に掠り、焼けた鉗で挟まれたような激痛が走った。


 二秒。亜倫が言った。


 一——


 巨蛇の頭が泥の中でギシギシと音を立てながら回転する。触鬚が狂った蚯蚓のように伸びてくる。


 二——


 あたしはまた右へ弾き飛んだ。


 今度の着地は濡れた岩の面で、前爪が滑って体ごと前へ倒れた——それがちょうど第二撃を躱した形になった。巨口があたしの三歩後ろで閉じ、歯の根が疼くような「カチン」という音がした。


「コラ!こっちへ走れ!」


 ザカの声だった。いつの間にか起き上がっており、右腕はまだ垂れているが、左手で長槍をしっかりと握り、突き出た岩の尾根の上であたしに向かって叫んでいた。


 あたしは四肢で地を蹴り、必死に彼の方向へ走った。


 泥が顔中に飛び散る。髭には泥の塊と砕石が鈴なりになり、耳の中まで入り込んでいた。転げまわりながら這いずるあたしは、溺れかけた猫そのものだった。


 背後から巨蛇が追ってくる音がした。速さの感覚ではない——重さの感覚だ。あの胴体が地面を引きずるたびに、足元から鈍い震動が伝わってくる。


 *あれは泥の中を滑行している。*


 その考えがあたしの毛をもう一段逆立てた。あの忌々しい豪雨が高原全体を泥の鍋に変えており、それはまさに摩擦の制約のない巨蛇にとっての理想の滑走路だった。


 前足が突然ずっぷりと沈んだ。接着剤の穴に踏み込んだような感覚だ。引き抜くには普段の二倍の力が要る——爪が泥の中でねじれ、筋肉が悲鳴を上げていた。背後の生ぐさい圧力はどんどん重くなる。


「この泥にはまった!」


「頭を下げろ!」


 ザカの声だった。


 あたしは顔を泥に埋めた。顔全体が冷たい、苦みのある泥漿に押し込まれた。


 強風が頭上を掠めた——巨蛇の胴体が巨大な鞭のように上から払われた。気流があたしの耳を引き裂き、髭が数本もぎ取られた。痛い。だが死と比べれば、髭の何本くらい安いものだ。


「まだ回転中だ!」ザカがあたしの後ろ衿を掴み、子猫を拎げるように泥から引き抜いた。


 右腕は確かに傷ついていた——骨が擦れる刺鼻なカルシウムの匂いがした——だが左手一本であたしを持ち上げる力は、目が眩むほど大きかった。


「亜倫!」ザカが豪雨の奥へ向かって怒鳴った。


「どこにいやがる!こいつの皮は城壁みてえだ!フラッシュストーンはどうした!粉はどうした!ぶっ飛ばせ!」


「節約しろ!」亜倫の声が意外な方向から届いた——ずっと近い。


 あたしとザカが同時に振り返った。


 二十歩と離れていない場所にいた。ぽつんと突き出た岩の上に立っていた。


 豪雨が彼を水鬼のように濡らし、外套が体に貼りつき、髪が額に張りついていた。だが彼の表情は——あたしは罵りたくなった——冷静だった。作り物の冷静ではない。全局面を見渡した上で、何かを高速で計算している冷静さだった。


 手には褐色の布袋を握っていた。


「あいつをこっちへ引きつけろ」彼は言った。


 大声ではなかった。普段の返答と同じ口調だったが、豪雨の中で不思議なほどはっきりと、一字一字あたしの耳に届いた。


「正気か!」あたしは本当に引っ掻きたかった。


「後ろは崖だぞ!」


「信じろ」


 彼の目——雨水に洗い清められた目——が灰白色の雨幕の中で、人間が持つべきでないような光を放っていた。


「来い」


 あたしとザカは目を合わせた。


 ザカの口の端が引き攣った。とてつもなく複雑な表情だった——怒り、不信、しかし同時にもっと深いところにある何か。それは絶体絶命の中で戦士がもう一人の人間を値踏みする時の目だった。


 背後で巨蛇が再び頭を持ち上げ始めているのを見た。触鬚がまた狂ったように蠢き出した。


 それからザカはまだ動く方の腕であたしを叩いた。


「毛抜け、死ぬなら死ぬか」


 あたしたちは同時に向きを変え、亜倫の方向へと飛び出した。

お読みいただきありがとうございます。


……鉄頭が、逝きました。


皆さんは、この場面を読みながら、頭の中に鮮明な映像が浮かびましたか?

あの泥だらけの高原、降り注ぐ豪雨、地面から突き上げてくる灰白色の巨体——。


もしそれが少しでも見えたなら、それがあたしにとって最大の励みです。


また、もし何か感想や改善のご提案があれば、ぜひコメントで教えてください。どんな意見でも、本当に参考になります。皆さんの声が、この物語をより良くしてくれます。


——次回、第四節「雨幕後の余燼」

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