プロローグ
転生とは。肉体が死んだ後に、魂や精神が別の形態や肉体を得て生まれ変わるという、宗教的・哲学的な概念である。
かの有名な「小説◯にな◯う」や「アル◯ァポリス」などの小説サイトによく出てくるそのワード。
皆さんはそれを信じるだろうか。いや、信じざるおえないだろう。だって、この私こそが生きた証拠なのだから。
そう私は転生者である。
私の今世の名前は九条紫苑。えらくご立派な名前だね。しかし、この九条紫苑という人物、なかなか問題の多い人物なのだ。その問題の多い人物はお前だろうって?まあ、聞いてくれたまえ。
私は転生者だから当然前世の記憶がある。前世の私は友人と起業した会社の社長というポジションに就いていた。しかし、この会社、それなりに成功してまあまあ大きくなってきたものの、経営者の私まで苦しめるとんでもないブラック企業だったのだ。24時間労働なんてザラで、休み暇なんかなかった私に待ちうけていたのは過労死だった。こうして前世を終えた私は転生し、また新たな問題に今、頭を悩ませているわけだ。
私が転生した九条紫苑は私が前世でプレイした乙女ゲーム『君と遥かなる恋の中で』のラスボス令嬢という役のキャラクターだったのだ。
とりあえず『君と遥かなる恋の中で』というゲームのストーリーについて話そう。
ゲームの舞台である永慶学院で、高等部からの編入生であるヒロインである大山琴葉がそれぞれ魅力のある御曹司たちに出会い、彼らといろいろな事件や琴葉へのいじめに立ち向かいながら恋をしていくというストーリーである。
このゲームに紫苑ははラスボス令嬢という黒幕として登場する。容姿端麗、頭脳明晰と才色兼備で誰にでも優しい彼女は全生徒の憧れの存在であり、ゲームのストーリー1では事件に巻き込まれたりいじめにあったりしていた琴葉を助けていた。綺麗で優しい紫苑は人気キャラクターだった。しかし、ストーリー2からは彼女の人気は怪しくなってくる。なぜなら、彼女がいつも開くお茶会にて、見逃してしまうような事件についての情報をさらっとつぶやくのだ。コイツ黒幕じゃね?説が浮上する。ストーリー3でそれは事実と判明する。紫苑は琴葉が巻き込まれた事件の主犯であり、琴葉と親しい御曹司たちの婚約者たちの彼女へのいじめを隠蔽していたのだ。
それらを知った琴葉と御曹司たちは紫苑を断罪しようとするがストーリー3のメインストーリーである。
結末はどうにかして紫音と婚約者たちを断罪した御曹司たちと琴葉は卒業旅行(学院主催)に行き、その旅行でどの御曹司かと琴葉が結ばれる、となる。
御曹司をゲーム開始時にどのルートにするか選ぶのだが、基本的に琴葉は御曹司たちグループと一緒にいるため、どのルートを選んだのか自分でも分からなくなるような優柔不断なヒロインが私は苦手だった。
そりゃ、婚約者たちにも妬まれるわなと思いもした。
とまぁ、ヒロインへの個人的な感想はここらとして、私がこのゲームの悪役令嬢に転生したという話に戻そう。断罪後、紫苑は家になぜか勘当され、追い出されることになる。家柄を誇りに思っていた彼女は今までいた護衛もなしにフラフラと歩いていたところを誰かに刺されて死ぬ。刺した犯人は九条家に恨みを持っていた人だったそうだ。あんなに誇りに思っていた九条家のとばっちりに会うとは、何とも憐れ。
その憐れな九条紫苑に転生したのが私!
断罪されないためにはヒロインいじめに片棒担いだりしなきゃいいだけだが、刺殺にはそんなのほぼ関係ないじゃないか。少し護衛なしで歩いてただけなのに。いちいち護衛なしでは外出出来ないなど、堅苦しくてならん!てかめんどくさい!それに九条家の令嬢ていう肩書もわずらわしい。もっと穏やかなキャラ?に転生したかった・・・。
今世こそは楽に、何も気にかけることなく、生きたいのだ。だって、前世過労死だもん。ゆっくり休みながら生きるというのが今の私のモットー。
なのに、こんなめんどくさいキャラに転生するなんて、神様は私に恨みでもあるのか。
ということ?で、私、決めました。
九条家の令嬢としてヤバくない、怒られない範囲で手抜きして、めんどくさいことには関わらず(ヒロインとか御曹司たちとか)、自分に正直に生きると!
なるべく、低燃費で!




