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第6話 調査報告


 街に戻り、冒険者ギルドに向かえば、受付嬢が大慌てでギルドマスターの部屋へと案内していった。眼福ではあったが、私は勢いについていけず、案内されるがままギルドマスターの部屋へと押し込まれた。


「音沙汰なしでひと月だぞ、流石に死んだと思ったわ」

「怪我なくしっかり生きてますが」


 ひと月音信不通となった事で、どうやら死んだと勘違いされてしまっていたらしい。どうにも時間の感覚が鈍くなってしまっているから、もう少し気を付けないといけない。

 ため息をひとつ吐くと、森での事を説明する。もちろんフェンリル達のことは言わない。とりあえず魔物を狩っていたら、逸れたワイバーンを見つけ、偶然雷に打たれたところを仕留めた事にした。ワイバーンなんて軽々しく倒して良い魔物じゃない。


「と、こんな感じだ。しばらくすれば、森も元に戻ると思うから、多分大丈夫だろう。倒した魔物は持ち帰ってきたから、買取を頼む」

「ワイバーンか、それなら森に魔物が溢れたのも納得だな。よし、ひと月も魔の森にいたんだ、魔物の量もかなり多いだろう。裏に来い」


 冒険者ギルドの裏にある倉庫のような場所に案内されると、そこにいたのは刃物を持った大男だった。誰だこいつ。


「誰だこの人」

「もっと言い方はないのか」


 口に出ていたらしい。大男の名前はドラン、主に魔物の解体をしているらしい。解体はできなくもないが、正直面倒だし数も多い。多少金がかかっても専門に頼んだ方が良いだろう。

 アイテムボックスから次々に魔物を取り出して積み上げていく。広い倉庫のほとんどが魔物で埋め尽くされていくが、気にせず魔物を積み上げる。最後にワイバーンを一体ドンと積み上げた。


「これで最後だ」

「おいおい、一体どこでこんな魔物狩ってきたんだ?」

「魔の森の調査を頼んだんだ。お前、まさかとは思うが森の魔物を狩り尽くした訳じゃないよな?」

「狩れるだけ狩ったから、大体は狩ったんじゃないか?」


 呆れ顔のギルドマスターに、何やってんだと言わんばかりにジト目で見てくるドラン。狩らなきゃ意味ないだろ、元は低ランク冒険者の狩場だぞ。フェンリルの件がなくても、狩れるだけ狩っておいた方が良いに決まってる。


「流石に全部は買い取れんし、解体にも時間がかかるぞ」

「どんくらいだ? 早めに出発したい」

「一週間ってところだな」

「どこに向かうつもりだ?」

「イルレシアだ」


 国境沿いの村近くとは聞いたものの、どこの国境かは行かないと分からない。こちらでもできる限り情報収集はするつもりだが、できれば人の手が入る前に一刻も早く向かいたい。

 一週間はギリギリだ。けれどこのままアイテムボックスに入れっぱなしで旅に出るのは嫌だ。わざわざ食事の都度昔の魔物を取り出して解体しなければならないのか。しかも素材はアイテムボックスに残る事になるのか。


「分かった、一週間後また来る。報酬だけ先に貰いたい。宿に泊まるにも所持金じゃ一週間持たない」

「なら、成功報酬だけ払おう」

「解体はできるだけ早く終わるようにしといてやるよ」


 ありがたい。買取はできる分だけと言われ、その分解体費用を安くしてくれるそうだ。倉庫を出て再びギルドマスターの部屋へと戻りしばらくすると、受付嬢が重そうな袋を持ってきた。中からジャラジャラと音が聞こえるが、できれば考えたくない。報酬は金貨十枚にほんの少し上乗せのはずだ。


「成功報酬だ。魔物の買取は後回しで、金貨五十枚だ」

「おかしいだろ多過ぎる!!」

「おかしくない、受け取っとけ。どうせ一週間後に魔物の買取費用が入るんだ、このくらい目じゃないぞ」

「そんなに持ってても使わないんだよ」


 しばらく依頼を受けなくて済むとは思ったが、無駄になるほど持っていたいとは思わない。使えなくなって無駄に余った通貨がどれだけアイテムボックスに貯まってると思っているんだ。全部使えるなら国がひとつ余裕で買えるぞ。

 しかも魔物の素材買取でもっと増えるのか。何をするにも金はいるが、使い切れずにたまりっぱなしだと本当に困る。前に偽の通貨と間違えられて衛兵を呼ばれた事があるんだぞ。しかも昔の通貨だって気づいた人が出たのは牢に入れられた後で、五年も意味不明に拘束されてしまったんだ。二度とあんな体験したくない。


「この際報酬は良いが、魔物の買取料だけでもどうにかできないか? 大金持ってたって使わないんだよ」

「知るか。孤児院か教会にでも寄付すりゃ良いだろ。ギルドじゃどうにもできん」

「寄付どころか、丸々建てられるだろ」


 仕方ない。隣国に行くまでに使い道を考えよう。それより遺跡に関する情報を手に入れる方が先だが、最悪孤児院か教会に丸投げしよう。向こうだって困ることはないだろう。

 

「ところで、隣国で古代遺跡が見つかったって話を聞いたんだが、本当か?」

「なんだお前さん、それでイルレシアに行くつもりだったのか。確証はないが、それらしいものを見つけらしいぞ。隣国じゃ今学者が冒険者を雇って遺跡までの護衛依頼を出してるらしいからな」


 遺跡までの護衛依頼。それなら遺跡まで行けるかもしれない。冒険者が立ち入っても怪しまれる事はないはずだ。


「どこの村だ?」

「ここからまっすぐ国境に向かった先のルイニ村だ」

「ありがとう、魔物の買取が終わったら向かう事にする」


 それが遺跡でない事を願って、人が立ち入らない事を願って。

 

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