第1話 3のヒット
初めて書くのでいろんなタグつけたんですけど間違ってたら教えてください。
疲れた。
あのハゲデブの鞭を受け、やっと終わらせた牢屋の掃除。血や排泄物、ありとあらゆる人の臭いが混じり合ったこの部屋を、きれいにするためだけに存在している。だが、それが何を意味するのか、今となってはわからない。ただひたすら、目の前の仕事をこなすことが僕の全てになっている。
地球で部屋に籠っていた頃より、はるかに酷い状況だ。
最初は泣き散らしていた。死んだように感じたし、希望を失っていたから。でも、いつからかそれすらも無意味に思えてきた。泣いても、痛みを感じても、何も変わらない。だから、痛みを避けることだけを考え、奴隷として生きることに慣れてしまった。僕がここに来た意味なんて、もう思い出せない。
気がついたら、あの箱庭に来た時のことを思い出す。
あの日、突然目の前が真っ白になった。世界が消えて、気がつけば見知らぬ場所に立っていた。周りの景色はまるで異世界のようで、地球とはまるで別世界だった。記憶が霞んで、ただ立ち尽くし、呆然と「ここはどこだ?」と呟いていた。目の前の異様な光景に、ただ圧倒されるだけだった。
すぐに現れたのは、あの商人だった。冷徹な目をした男が、僕を無理やり拘束し、抵抗する暇も与えず、数日後には僕を売りに出した。
「こんな奴隷、誰が買うんだろう」と心の中で思った。普通の男で、目立った容姿も体格もない僕には、誰も興味を持たないだろうと。だが、間違っていた。商人に売られた先は、さらに厳しい管理下で、僕はただただ働かされる毎日が始まった。
最初は何度も暴れようとしたが、すぐに気づいた。抵抗しても意味がないことを。そして、すぐに掃除や雑用を任され、毎日血と排泄物、ありとあらゆる臭いに囲まれて働かされる日々が続いた。最初は涙が止まらなかったけど、だんだんそれすらも無駄に思えてきた。泣いても、叫んでも、痛みを避けることだけが重要だと。
「あれから数ヶ月、いや、数年かもしれない」と自分に言い聞かせる日々。記憶は曖昧で、ただ目の前の仕事をこなすだけが僕の全てだった。
でも、ある日ふと心の中で何かが変わった。
「このままでいいのか?」
それがきっかけだった。自分でも気づかなかったが、その問いが僕を動かす力を生み出した。何も考えずに痛みを避け、従順に過ごすだけでは、何も変わらない。どこかで何かを変えなければならない、そんな衝動が湧いてきた。
そして、その日が来た。
「新しい奴隷を見せてやる!」
男に無理やり引きずられる先には、豪華な屋敷が広がっていた。僕はその場所の空気に圧倒され、足がすくんだ。だが、次に現れたのは、僕の予想を裏切るような存在だった。僕は知る由もなかったが、そこに立っていたのは、若い女性――王女、エリザベス・ド・ラ・ルネだった。
彼女は堂々とした姿勢で立ち、まるで周りの空気を支配するかのように、その目を僕に向けた。その目には、冷徹な光が宿っていた。高貴な雰囲気に包まれた彼女が、僕に向ける視線には、どこか試すような冷ややかなものがあった。
「ドルトネ、また奴隷を買ったの?」
「これが新しい奴隷か。ふーん、期待外れね。」
その言葉に、内心で反発が生まれる。期待外れ? 何を言っているのか、理解できない。でも、すぐにその思いを押し込めた。僕はただの男、何も持たないただの人間。期待も何もあったものじゃない。
「新しいものが好きだから、試してみるだけよ。」
その一言が、何か心の中で弾けた。新しいもの好き? そうか。王女はただの「道具」として僕を使うつもりなのだろう。それに、なぜかその考え方が、僕に不思議な刺激を与えた。新しいもの――それがこの世界で意味を持つ何かだと思うようになった。
「あなた、名前は?」
「天城陽翔です。」
「ふーん、アマギね。いい名前だけど、どうでもいいわ。要は私の新しい“おもちゃ”として、あなたを使いたいだけ。」
その冷徹な言葉に、胸がしめつけられた。こんなにも自分を物として扱う王女が、目の前に立っている。それが、どこか不思議な感情を呼び起こした。
「金を稼ぐ方法とか、新しい商品を持ってきてくれるとか、私が試してみたいものがあるの。あなたにはその手伝いをしてもらうわ。」
僕は一瞬、思考が止まった。金を稼ぐ方法? 新しい商品? それを持ってくるためには、どうすればいいのか。だが、すぐに冷静になった。今の僕には、王女の命令をこなすことが最も重要だ。お金を稼ぐ方法、それを探し出すことが、今の僕の仕事なのだと心の中で決意した。
「分かりました、王女様。あなたのためにお金を稼ぐ方法を見つけます。」
「ふふ、いい返事ね。期待してるわ。」
その瞬間、胸の奥に熱いものが込み上げてきた。王女のために何かを成し遂げる、それが今の僕の目標になった。そして、今後彼女が本当に求めるものが何かを探っていく必要があると感じた。彼女の本当の意図を知り、僕がどう動くべきかを決める時が必ず来るだろう。
でも、今はまだ何もわからない。
その問いに答えを出すには、まず何かを起こさなければならない。きっと、その答えは今ここに、まだ見ぬ可能性が眠っているのだと信じて。