プロローグ
一つだけ、世界で一つだけ願いが叶うなら。君は、何を思う?よく使われる麻薬。
死に際にどこからか聞こえてくる。希望。叶わない願いだったとしても僕はその囁きへ願う。
どうぞ、どうぞ。僕から希望を捧げる。だから、だから、夢を下さい。
どうか、どうか。彼女には秘密でお願いします。誰だって死ぬのは怖い。怖いけれど、それ以上に君を守りたい。と、約束をしたから。だから、どうぞお願いします。必ず。
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「うわ!夢か・・・」
そこにはいつもの天井が目に入る。嫌な夢だった。ユルシは額の汗をぬぐいベッドから起き上がる。爽やかに、鳥が気持ちよさそうに、歌を唄っている。その歌声を聴いているうちに彼はいつの間にか夢のことを忘れていた。よいっしょ。と、掛け声を上げ起き上がる。のっしりと両肩が重い。そう言えば、昨日、精霊流しの練習だったな。少しだけ痛々しく、誇らしげな笑みを浮かべる。念願の・・・
「痛い!!」
脳天直下。ユルシの頭にとんでも衝撃。頭をさすりながら後ろへ視線を向ける。と、そこには幼馴染である日御碕ライアが両手にハンマーを持ち立っている。
「何をしてらっしゃるの?そんな馬鹿みたいに大きなハンマーで人の頭を叩いたら死んじゃうよ?」
そりゃあそうでしょうね。なんて鼻でため息をつきながらライアは肩を下す。
「アンタが遅いからでしょ。いつまで私を待たせるのよ」
時計に目をやる。彼女が怒るには当然の時間になっている。今日はユルシにとって初めてのギルドミッションを受ける大切な日であった。そんな日にベッドで悠長に微笑んでいたらそれは流石に彼女も怒るってもんだ。
「早くしなさいよ。流石に私でもマスターに謝罪するのは緊張するんだから」
「ごめんごめん。おじさんは優しそうだけど」
「マスターね。私、下で待ってるから早くしなさいよ」
そういうと彼女は颯爽と部屋を出ていく。再度、視線を外へと向ける。平和そうな世界。空。深呼吸をしてみる。
「よし!今日も僕は生きてる。」