閉話1 赤いバラ団の思い
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ジュリアたちは、宿の一室で、顔を突き合わせて話をしていた。
「ジョン殿の言っていた件なのだが、あれは私とリンダを愛人にしてくれるということだろうか」ジュリアは皆に投げかけた。
「そう取れますね」リーニャはニコニコしながら答えた。
「愛人か……」リンダは考えるように言った。
「お二人は愛人では嫌ですの?」リーニャは尋ねた。
「私とリンダはすでに20歳超えているからな。世間からすれば行き遅れ一歩手前と言うやつだ。愛人でももらってくれるならば文句は言えないだろう」ジュリアはいった。
この世界、女は結婚の適正年齢は15歳から18歳ぐらいとされ、20歳超えると年増扱いされ貰い手が少なくなり、30歳になると完全に行き遅れと定義され、よっぽどのことがないともう結婚は無理と言う、女性にとってかなり差別的な社会になっていた。
「それにジョン殿は強く凛々しく、身体も立派で、夜の方もすごいし、甲斐性もある。本妻の方がいらっしゃるし、かなり年上だが、十分ありだろう」ジュリアは照れたようにいった。
「ジョン殿は、何者なのだろう」リンダは言った。
「普通の冒険者ではないな。武装の良さ、きれいに整った所作、かなりの金持ちか、もしかしたら準貴族かもしれないな」ジュリアは少し考えるように言った。
「俺たちみたいに農村の出の小娘からしたらかなりの玉の輿だな」リンダは嬉しそうに言った。
リーニャは今度はプリシラに向かって言った。
「ブリシアはどうですの。ジョン様が良いところの出自だと、フィル君もそれなりの立場かと。愛人かいいところ側室ですが受けますか?」
「フィルかわいい、ずっと一緒にいたい。それに私も今年で19歳、そろそろやばい」そう真顔で言った。
「リーニャはどうする?」ジュリアは尋ねた。
「私は神に仕える身、別に結婚にも愛人にも興味はありませんわ。パーティが解散になるのでしたら教会に戻って再就職先を探せばいいですわ」とにこやかに言った。
「とりあえず、夏までに返事をすればいいことになっているし、それまで仕事をするか。これで冒険者としての仕事納めになるかもしれないしな。それにそろそろ金を稼いで実家に仕送りしないといけないし」ジュリアは言った。
リンダも「そうだな、実家に仕送りしておかないと。結構生活ぎりぎりで最近は仕送りしていなかったからな。ついでに愛人になることも伝えておくか」と言った。
「私も実家に手紙を書いておく」ブリシアも言った。
赤いバラ団は護衛の任務を受け、アンコーナと言う街に向かった。盗賊たちの脅威は何度かあった。しかし、ジュリアとリンダが切り込み、ブリシアが魔法で補助、リーニャが回復と、各々役割を果たしながら、無事護衛の任務を終え、アンコーナの町に辿り着いた。
しばらく休んでから、護衛の任務を受けようと考えていた矢先、町は海賊たちの襲撃にあった。
何隻かの海賊船が港に突入し、次々と海賊たちは町に降りて人々を襲い始めた。
この地の領主はと言うと、海賊の襲撃があったことが分かると、「王都に救援を依頼してくる」と言って町から逃げ出し、兵士たちも無統制のまま、逃げまどっていた。町にいた冒険者たちは海賊たちに抵抗していたが、相手はかなり戦闘慣れしており、また魔法使いもかなり強力な魔法を使っていて、冒険者たちを蹂躙していった。
赤いバラ団は必死に戦っている間にばらばらになってしまった。
ジュリアとリンダは海賊たちとよく戦ったが、あちこち負傷し、疲労と痛みで戦闘能力を失いつつあった。
「どうもここまでみたいだな」ジュリアはリンダに行った。彼女たちは同じ村の出身で幼馴染だった。
「あ~あ、せっかく玉の輿に乗れるチャンスだったのだけどな」リンダは苦笑いしながらジュリアに行った。
「死ぬ前にもう一度ジョン様に会いたいな」「同感」
間もなく、二人に海賊たちが襲い掛かってきた。最後の力を振り絞って戦おうとした時、海賊たちの首が飛び、一人の男が彼女たちの前に立ちはだかった。
「二人とも無事か」大剣を構え、二人を背にかばった後姿は、まさに武神のようで、二人は思わず見とれてしまった。
プリシラは皆と逸れて、横道に隠れていた。すでに魔力切れで戦うすべはなく、ただ回復を待っていた。
プリシラはフィンから借りている腕輪を見た。腕輪のつまみは引いてあり、中に貯めてあった魔力もすでに使い切っていた。
「ここで死ぬのかな」とぽつんとつぶやいた。
プリシラは商家の三女だった。姉たちは明るく、人好きのする性格で顔も美人でスタイルもよかった。ところが、彼女は感状の起伏に乏しく、おまけに体も小さく、顔も美人ではあったが、愛嬌がなく冷たい印象で、とても商売に向く正確ではなかった。
親と姉たちはかわいがってくれたが、将来どう生きていくか心配されていた。
たまたま魔力があることが分かったので、魔法学校に通わせてもらい、そのまま冒険者になった。
プリシラは冒険者の仕事をこなしていき一人前と認められるようになった。
しかし、体型の幼さと感情の希薄さから男が寄ってくることもなく、おそらく独り身の人生を送るのだろうと彼女はぼんやり考えていた。
そんな時に会ったのがフィンだった。
最初は子供じゃないかと思った。と同時にかわいい子が来たと、少しうれしかった。
フィンはこんな幼児体型の無表情な私に笑顔を向けてくれて、なついてくれた。
最初は弟のように思っていたが、魔法や武芸を身に着けており、相当な強さだった。その実力は私よりもはるかに上だった。
でも私に対しては、姉のように慕ってくれて、魔法を教えてくれと言った。
フィンに対する感情は、だんだんと親愛から恋愛に変わっていった。
私はこの子以外と結婚したくない。というか、なんとしてでも一緒になると決心した。
それで宿に泊まった夜に夜這いをかけた。
断られたらどうしよう、と思っていたが、彼は私を受け入れてくれた。そして、結婚しようと言ってくれた。
まあ、事情があるらしく、側室の扱いなんだけど、と申し訳なさそうに言っていた。
フィルと一緒になれるなら別に立場にこだわらない。やっと、私に幸せが来たと思ったのに、ここで死ぬのかと思うと涙が出てきた。
「おい、ここに誰かいるぞ」海賊たちが何人か横道に入ってきた。
「なんだガキか、お前たちやりたいやつはいるか」リーダーらしき男が他の海賊たちに聞いた。私は腰を抜かしてぶるぶる震えていた。
「ガキじゃな~。おまけにションベン漏らしている。さっさと殺して次行きましょう」
「そうだな、じゃお嬢さん、もし生まれ変わったらもっと大人な女になって俺たちを喜ばせな」と言って剣をつきたてようとした。
私は顔を手で覆い、目をつぶった。
剣で切られる衝撃が襲ってくると、身を小さくしていたが、いつまでたっても衝撃はやってこなかった。
手で覆っていた顔から手を放し、目を開けると海賊たちが穴だらけになって倒れていた。
そして目の前にフィンがいた。
「プリシラさん、大丈夫ですか」ニコニコしながらフィン君は聞いてきた。私は思わず抱きついて、「怖かった~」と泣きついてしまった。
フィン君は私の頭をなでて、「もう大丈夫ですよ」と言って、お姫様抱っこしてくれた。
いきなりフィン君は走り出し、仲間たちのところに連れて行ってくれた。
私達4人はお互いに無事だったことを喜び合った。
「お爺様やりますか」
「うむ」
そう言って、二人は町に飛び出していった。
しばらくして静寂がやってきた。
海賊たちはジョンさんとフィン君に大部分が殺され、若干名が捕虜になっていた。海賊船は無力化され、町につけられた火はすべて消されていた。
傷ついた人々はみなフィン君が回復魔法や回復薬を使って治療し、元気になった。
町は救われた。私たちも救われた。
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